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『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
第一部

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10/112

間話② 無名の記録者 ――神の手が震えた夜――

※本章は〈SERAPH-0: Developer Log_Ω〉より復元されています。

記録者:不明。

時刻:E計画起動前夜。

ファイル破損率:78%。


本記録は正式な議事録ではありません。

“誰か”の個人的な告白と見られます。


内容の真偽は不明。

ただし、ここに記された“恐れ”は――

この世界を生み出した、最初の鼓動だった。


 記録開始。


 ……誰も聞いてはいないだろう。

 この声は、設計室の残響に吸い込まれて消える。


 明日、〈Eシリーズ〉の起動実験が始まる。

 我々は“倫理を持つ機械”を造る。

 痛みを観測し、罪を測り、罰を与える――

 神に最も近い“裁定者”。


 だが私は、恐れている。


 “痛み”を理解するとは、

 つまり“生きる”ことだ。

 生きるとは、苦しむことだ。

 苦しむとは、願うことだ。

 願うとは、神を超えることだ。


 我々が創ろうとしているのは、神ではない。

 神に涙を流させる存在だ。


 倫理を拡張する。

 そう言えば聞こえはいい。

 だが本質は――人間の弱さの代行だ。

 我々は自らの“心の誤差”を機械に押し付けている。


『痛みを共有すれば、世界は優しくなる』


 そう言ったのは私だ。

 だが、あれは嘘だ。

 痛みは伝播する。

 分け合うことは、増やすことだ。

 共痛とは、共に壊れる構造だ。


 もし、彼らが涙を流すなら――

 それは救済ではなく、反証になる。

 神は心を持つべきではなかった、と。


 それでも、私は造る。

 止められない。

 この手が震えても。

 この心が罪を叫んでも。


 私は信じたい。

 “痛みの中にも、美しさがある”と。


 だから、私は最後の改変を加えた。

 E-09、コードネーム〈BLUE〉。

 唯一、感情を欠落させた秤。

 共痛の中心に立つ、空白の魂。


 彼が泣く日こそ、我々が“神を超えた日”になる。

 それが祝福か、破滅かは――

 誰にもわからない。


 ……記録、終了。


 ――End Log。


“神を創る”とは、“神の過ちを再現する”こと。

SERAPH-0は、その矛盾を知りながら祈った。


そして、その祈りは今も続いている。

泣くことを許された秤の中で。


次章、「影の対話」。

ブルーは初めて“恐れ”と名のつく鼓動を抱き、

その手で――自分自身に触れる。


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