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第9話 幕間 有栖川は悶々する

〖有栖川結女 視点〗


 昨日から私なんだか可笑しいわ。失恋したばっかりなのに秋崎に対して何でグングン迫ってるのよ?


 これじゃあ発情中の猫ちゃんじゃない。このままじゃあ駄目よ、私。


 秋崎とは昨日、関係改善したばっかりなのに、何でドギマギしているのよ~!


 失恋したんだから新しい恋を秋崎と一緒に見つけて幸せにならなくちゃいけないのに~!


「………結女ゆめ。なんか体調悪そうだけど大丈夫? もしかしてハヤテの奴にまた何か悪い事されたのかい? それなら僕にいつもみたいに話して…」


 近くの席の太一が話しかけて来たわね。今は授業中なんだけど。


(へ? べ、別に秋崎には何もされてないわよ。むしろその逆よ)


「逆?……どういう事かな?」


(別に太一にはもう関係ない事よ。だから授業中にもう話しかけないで? お互い授業に集中しましょう。ごめんね)


 私は小声でそう伝えると黒板へと目を向けようとしたんだけど。


「はぁ? 何さその言い方は! 僕はただ君の事が心配してあげているだけなんだど!」


 何故か太一が声を荒げて椅子から立ち上がったの。


「……えっと。太一君?!」

「なんだい? 藤本ふじもと太一たいち君と結女が口論してるのかい?」

「…………眠……ん? どうした?」


 不味いは愛花梨あかり、六花、秋崎。いえクラスの皆が私達方を注目して見てる。


(太一。ちょっと落ち着きなさいよ。何でいきなり怒っているのよ?)


「うるさいな! 僕はただ心配で……」


「お~い! うるさい藤本。何の心配をしているのか知らないが。丁度良いこの問題解いてみろ。これを答えられたら騒いだ事はチャラにしてやる」


 数学の木村先生が黒板に書かれた数学の問題を指差して、太一に解く様に言ってきたわ。


「えっと……すみません。分かりません」


「おいおい。1週間前に教えたばっかりの所だぞ。ちゃんと復習しておけよ……じゃあその近くの眠そうな顔の秋崎。答えられなかった藤本の代わりに答えてみろ」


「へ? はい……BD:DC=5:6ですかね 」


 眠そうな顔で直ぐに答えたわね。やるじゃない。秋崎の奴。


「ほう。最初の方で優しい問題とはいえ良く答えられたな。藤本も秋崎にならって直ぐに答えられる様に勉強しろよ」


「くっ! はい……すみません」


「……任務完了。ふぁ~眠」


 問題に答えたら速攻で眠そうにしてんじゃないわよ。アホ秋崎~!


「藤本はもう座って良いぞ……それと眠そうな秋崎には復習用のプリントを出してやるから覚悟しておけ」


「……ふぁ?! 何でだよ。木村先生」


「そりゃあ、授業中に眠そうにしてるからだろう」「目立たない様にやりなよ。秋崎君」「可愛い顔が台無しだよ」


「いや~! 木村先生の授業つまんなくてさ~!」


「なんだと? 秋崎~! 追加で復習プリントもう1枚追加してやる」


「はぁ? そりゃあ、ないですよ。ハゲ先生」


「ハゲ先生だと? 俺はまだハゲとらんわ」


「「「ハハハ!!」」」


 秋崎と木村先生のやり取りでクラスの子達は皆笑ってるわね。アイツ、ああ見えてクラスの中心の1人だから人気なのよね。アホだけど。


「………ちっまたハヤテばっかり。ちやほやされて…くそっ!」


 ……太一が何か言ってるけど。ほっときましょう。近くに愛花梨あかりが居るのに、太一に失恋した私が気安く話しかけたら空気を悪くしちゃうもん。


 それにしても太一の奴。何で朝からあんなに不機嫌なのかしら? まるで昨日とは別人みたいね。

 

 まぁ、私にはもう関係ないし。考えても仕方ないわよね。


(ゆ、結女。今日の放課後さ。六花や七瀬ちゃん達を連れてカラオケでも行かない? 勿論、愛花梨あかりも連れてさ。あ! でもハヤテは駄目だよ。アイツが居ると空気がいつもみたいな悪くなって……)


(何、お馬鹿な事を行っているのよ。放課後は皆忙しいし、太一には愛花梨って言う彼女がいるんでしょう? 大切にしてあげなさいよ。昨日とは違うんだから)


(な?……そ、そうだね。ご、ごめん。僕が間違ってたよ。でも結女だけでも一緒に行かない? 少し話したい事もあってさ)


(ごめん無理。私、放課後は秋崎と用事でカラオケに行くから……もういい? 私、授業に集中したいからこれ以上話しかけて来ないでね)


 私はそう言って、太一との会話を終わらせた。


「……(は? なんだよ。それ! そんな約束僕は把握していないぞ。何で僕にちゃんと報告しないんだよ。昨日までは皆あんなに僕に付きまとってたのにさ……くそ!)」



 

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