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第6話 姫夏六花は物申す


 中性的なキリッとした顔立ち、ショートボブ、青髪、高身長、巨乳、体操着、俺と幼馴染みな属性盛り盛りの姫夏ひめなつ六花りっかは、クールビューティーだ。


 星蘭高校では男子よりもカッコいい女王様と言われ、男女共に人気のある美少女で、女子生徒からの告白が絶えないとか噂もある。


 そんな姫夏ひめなつ六花りっかが、俺にボールを投げて勝負を仕掛けて来た───俺はモンスターじゃないんだがな。


「痛……」


 姫夏ひめなつの奴、俺の額にテニスボールを当てて来た。何の恨みがあるっていうんだ?


「ちょっと! いきなり秋崎にボール当ててんじゃないわよ。六花りっか。もう……大丈夫? 秋崎」


 そんな光景を見た有栖川は俺の額をさすってくれた………なんか有栖川が昨日からあった俺への憎悪が消えて、どんどん俺に優しくなっている気がするのは気のせいだろうか?


「なんだい? 結女ゆめ、君は散々秋崎君の事を嫌っていたのに、もう関係が改善したのかい?」


「改善なんて全然してないわよ。今も犬猿の仲よ……秋崎。おでこ大丈夫? 見せてみなさい」


 言葉とは裏腹に、有栖川は俺の額に顔を近付け、傷がないか確めてくれた……有栖川の綺麗な顔がこんな近くに。なんかドキドキするな。


「……あれだけ秋崎あきざき君との恋路を邪魔されたのに、失恋したら尽くす相手直ぐに変えられるなんて、とんだビッチだね。結女ゆいは、そんな妨害男子のどこが良いのかな?」


「どこがって…………どこが良いのかしらね?」


「いや、それを私は聞いているんだけどね……まぁ、たしかに他の女子生徒には一定の需要はあるだろうけど。秋崎君は私達の共通の敵の筈だったよね? それがなんでそんなに甘々に優しくしてるのかな?」


 姫夏ひめなつ六花りっかの奴、酷い言い方しやがるな。いや、たしかに太一と愛花梨あかりが結ばれる様に色々と裏工作はしたけどさ。


(ちょっと! そこを退きなさいよ。太一が行っちゃうじゃない! 張り倒すわよ!)

(ギャアアア!)


(秋崎……邪魔。スタンガンで沈め)

(グアャアアア!)


(君はいつもいつもいつも、私と藤本ふじもと君の仲を進展させてくれないよね。退いてくれるかな? 秋崎君)

(ギィヤアアア!)


(良し! 今だアタックしてこい、愛花梨あかり。ものにしてこい)

(うん。ありがとう、ハヤテ君。私、頑張って来るね)


(アハハハ! 君、本当にいつも邪魔してくるよね~! 成敗)

(ゴギャアアア!)


(喰らいなさい)(ゴギャアアア) (何で邪魔するのかな?)(クゲエェェ!) (静かに逝って下さい)(ゴベェェエ!)


 ……今考えたら、俺、愛花梨あかり意外のヒロイン達に嫌われる行動しかしてこなかったな。それなら姫夏ひめなつ六花りっかのこの態度も納得だわな。


しかし、1人の主人公に対して、8人も同じ奴に同時にアタックするって凄いよな。実際は太一は愛花梨あかりしか見えていなかったみたいだけど。そして、結論からいって俺は彼女達からみてクズに見えたに違いない……謝るか。


「姫夏……」

「秋崎? どうしたのよ?」


 俺はゆっくりと立ち上がると姫夏の方へとゆっくりと歩き出した。


「ん? なんだい? やっと自分が行って来たあやまちを認めてくれるのかい?」


「あぁ、認めて俺は姫夏に謝罪するよ」


「ふ~ん。そうかいそうかい。でもそんなんで私が君を許すと思っているのかい? 私のこの傷ついた失恋の心……」


 俺は姫夏の真っ正面に立つと先ずは姫夏の両肩を両手でガシッと掴んだ。


「……ああ! ちゃんと責任を取ってやる。俺がお前を必ず幸せにしてやる。姫夏」


「…………は? 私を幸せにするだって?……へ///」


「ちょっと! 秋崎。あんた突然何を馬鹿な事を言ってるのよ?」


 何故か姫夏は顔を赤くし、有栖川は驚きの表情を浮かべていた。


「あぁ、俺に任せろ。俺は姫夏ひめなつ六花りっかを必ず幸せにしてやる! いや、その前にちゃんと謝らないといけなかったな。ずっと太一へのアプローチを邪魔していて悪かった。許してくれとはいわない。俺のこの思いだけ、姫夏に届いてくれれば良いんだ。済まなかった」


「秋崎君の……私に思ってる想い…だけ届いてくれれば良いの?」


 あれ? 何だ? 姫夏の態度がさっきよりも軟化した様な……良し、もっと謝って日常会話くらいまでできる様に関係改善をはかってやる。


「ちょっ! この展開、昨日の私と全く同じじゃない。秋崎、アンタ。六花までろう籠絡ろうらくする気?」


 有栖川の奴がさっきからうるさいが、ここまで来たら勢いに任せてガンガン行くしかない。


「おう! 任せろ。姫夏! 俺は姫夏にちゃんと報いて幸せにしてやる」


 そうして、俺は勢い余って、姫夏を抱き締めてしまった。


「シャアアア/// 秋崎君! 何して………キュウゥゥ」


「あれ? 姫夏。大丈夫か? 何でいきなり気絶して……痛い」


 勢いで抱き締めてしまった姫夏が気絶してしまった。大丈夫だろうか? そして、何故か有栖川に脳天をチョップされた。


「当たり前でしょう。六花は攻めるのは好きだけど、攻められるのは苦手なのよ……あぁ、目を回しているじゃない。秋崎の馬鹿。これじゃあ、六花は多分……」


 有栖川がお口を鯉の様にパクパクさせて、その後の台詞を言えないでいた。


「多分……何?」


「……何でもないわよ。それよりもさっさと六花から離れなさいよ。ド変態~!」


 有栖川の叫び声が朝の学校に響き渡った。その後、俺達は姫夏を保健室へと連れていった。


《庭園通路》


「…………何あれ?」


「え? 何がかな? 太一君」


「いや、何で結衣と六花がハヤテと一緒に居るのかなと思ってさ。昨日まであんなに仲が悪そうにだったのにさ」


「それは多分、仲が悪くなっていた原因が無くなったからじゃないかな?」


「原因?……意味分かんない。2人共、昨日の昼頃まではあんなに僕に夢中だったのにさ。何で今日の朝になったら挨拶もしてくれなくなったんだよ。結衣なんてせっかく迎えに行ってあげたのに、嫌な顔してたしさ」


「……えっと。だからそれはね。太一君……」


「ちぇ! せっかく疑似ハーレムを楽しんでたのにさ……これなら愛花梨あかりなんかと」


「私なかんとって……何かな?」


「………いや、何でも無いよ。それよりも愛花梨あかり、僕のリクエスト通りに登校してくれたんだね」


「う、うん……凄く恥ずかしいけど。太一君が喜んでくれるなら何でもするよ……だから私の事捨てないで」


「うん。分かってるって、愛花梨あかりは僕にとって大切な大切な彼女なんだからさ。僕、嬉しいよ。ありがとう」


「……うん……(凄いスゥースゥーするし、恥ずかしいよ。オマケにハヤテ君には見られちゃったかもだし……恥ずかしさ2倍だよ~)」


 俺はその時は知らなかったんだ。恋人同士になったあの2人のいびつな関係性と。太一の隠された本性を……

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