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第29話 転校生が帰って来た理由

《有栖川家 玄関》


「それじゃあ。凛、ちゃんとこの義務教育のエッチな雑誌で練習するのよ。色々と、そうすれば秋崎が凄く喜んでくれるわ」

「ありがとうございます。結女ちゃん。ちゃんと義務教育のエッチな雑誌を使って色々な事を覚えますね」

「ニャフフ。良い心がけよ。流石、転校生ね」


 有栖川の奴は、凛に何を仕込もうとしてんだよ。それと姫夏はまだメイドのコスプレをしているし、今日は家に帰れないと言い出すし。


「今日は有栖川の家に泊まる?」


「え、ええ。きょ、今日は……さっき撮った私のエロ動画を、結女ゆめと……ん……一緒に編集したりしたいから……鑑賞もね……ん……んぁ」


 メイドコスプレをした姫夏が、火照ほてった顔で身体をもだえさせながら告げて来る。


「それは良いけど……良いのか? また有栖川に変な悪戯いたずらされるかもしれないんだぞ」


「そ、それは……無いかな。結女はお仕置きし終われば許してくれるから。それよりも、私は今日撮った私のエッチな動画を結女と見たいから泊まっていきたいの」


 ……そうだった。姫夏は有栖川に匹敵する程にエッチが好きだったな。流石、エロの親友同士。盗撮されたり撮影されるよりも。仲直りして、一緒に仲良くエロ動画を鑑賞するか。


 レベル高い奴等だな。


「分かったよ。薫おばさんにはちゃんと有栖川の家に泊まる事は伝えとけよ」


「う、うん。ママにはちゃんと伝える……から……んふ……凛の事をちゃんと家まで送ってあげてね。最近は物騒だしね」


「ん? 凛?……凛の家ってたしかウチの後ろの家だったよな。さっき凛に聞いたら、またあそこに住むとか行ってたから、最後まで送り届けられるぞ」


「そう……それなら良かったかな。それと藤本君と藤本君と仲が良い先輩には気をつけてね。秋崎君。ターゲットに……ん……されているか」


「ターゲット? それってどういう事だよ。姫な……」


「……んぁぁぁ。もう駄目。こんなロー……んむ?!」


「お、おい! 大丈夫か? いきなり内股なんておさえて。お腹でも痛いのか?」


「ち、違う。お腹は痛くないの。むしろ痒……」

「痒いですか? それならお尻をってさしてあげましょうか? そうすれば痒みも引くかもしれません」


「や。止めなさい。凛……そんな逆効果だから……駄目……ん……」


「六花! 大変! それじゃあ。トイレに連れていってあげるわ。急いで行きましょう! そうしましょう」


 おお! 流石は親友同士。姫夏が体調悪いのをここまで心配するなんて、有栖川は優し奴だよな。これなら俺と凛は邪魔だな。帰るとしよう。


「うぅぅ……また私で遊ぶつもり? 結女……秋崎君。やっぱり私も一緒に帰って……」


 「この先は言わせないわ……出力最大よ」


カチッ!


「……い……いぃぃうぅぁ?!」


「秋崎。六花はウチに絶対泊まりたいって言ってるから。何も心配はないわ」


「そうか。有栖川がそう言うなら大丈夫だな。凛。後は親友同士で過ごさせてやろう。俺達は、帰りにファミレスでもよって一緒に何か食べようぜ。奢ってやるよ」


「はー君が私の為にお食事をですか? わ、分かりました。ぜひ、一緒に帰りましょう」


「ま、待って……まさか。ここまで結女が暴走するなんて思わなかったの。だから私も一緒に帰……」


「もう一度……出力最大よ」


カチッ!


「ふゃあぁぁ!!」


「それじゃあ。秋崎、凛。また明日学校でね。気をつけて帰りなさいよ。バイバイ」


「はい。結女ちゃん。さようならならです」

「おう。あんまり夜更かしして、学校に遅刻するなよ。じゃあな~」


「……ま、待って2人と……も……」


ガチャン!!


 なんだか姫夏が助けを求めていた気がしたが、あの頼りになるクールビューティーが、俺ごときに助けを求めるわけないよな……帰るか。


(もう。六花ったら濡れ濡れじゃない! 直ぐにトイレ……いえ。一緒にお風呂に行くわよ)


(ま、待って。結女……少しは休ませ……)


(出力最大よ……更新よ)


(そ、そのスイッチは……何で押してるの………らめえ………)


 俺達が有栖川の家から遠ざかる前に姫夏のラーメンっと言う叫び声が聴こえた気がしたが。


 姫夏がそんな可笑しな叫び声を上げるわけがないので、気のせいだろうと思い、有栖川が住むマンションを後にした。



 有栖川の家を出た後、俺達は家に近くにあるファミレスへとやって来た。姫夏からよく分からない連絡が来ていたが、有栖川と仲良く親睦を深めているのを邪魔したくなかった為、あえて出なかった。


「鬼電ですけど。六花ちゃんの電話に出なくて良いんですか? はー君」


「ん? ああ、いつも冗談だろうからな。何かあればLINOの方に連絡してくるだろう」


「……そうですね」


《その頃の有栖川家》


「………六花……ごめんなさい。ふざけ過ぎたわ。でもこれも、六花が素敵過ぎるのがいけないのよ」


「絶対に許さないし。その手に持ってる物は何? ごめんなさいとか言いながら、まだまだ続けるつもり? ちょっと! そんな所……駄目。結女ぇぇ!」


《ファミレス ジョンソン 夕方》


 今頃、あの2人仲良く友情をはぐくんでいるんだろうな。それを邪魔するわけにはいかないってもんだ。


「はー君。何でも頼んで良いんですか?」


「ん?あぁ、良いぞ。今日はあの変態達のせいで最悪の転校初日になっただろうしな。凛の転校祝いもねてお祝いしよう」


「あ、ありがとうございます。はー君……では、五色のサラダ、ハンバーグセットのデミグラスソース、三色どんぶり、海老グラタン、ミートソースパスタとたらこパスタにですね。それとそれと彩りグリーンカレーとシメのデザートはイチゴのパフェ、抹茶アイス、ホットケーキの餡蜜あんみつかけ、栗のモンブランを頂きますね」


 …………マジか。凛の奴。大食間だいしょっかんだったのか? めちゃくちゃ頼むじゃねえか。


「……凄い頼むな。凛……全部食えるのか?」


「え? は、はい。育ち盛りなので……これでもおさえようと思ったのですが。もっと頼んでも良いんですか?」


 まだ頼めんのかよ。


「あ、あぁ。別に金はあるから良いけど。まだ食えんの?」


「はい! 育ち盛りなので!」


「そ、そうか。それなら頼んで良いぞ。好きなだけな」


「あ、ありがとうございます。はー君!では……」


 その後の凛は凄かった。最初に頼んだ量と同じ量のメニューを頼み、平らげたのだから。


 俺の小学校の頃の同級生は大食いに成長していたようだ。


「お粗末様でした」


「……すげえな。マジで全部平らげやがったよ。凛のお腹は宇宙なのか?」


「いいえ。ブラックホールかもしれませんよ。ケプッ!」


 ケプッ!って、げっぷしたよ。この美少女。可愛いくさ……しかし、本当に良く食ったよな。会計軽く1万は越えてるわ。


「それで? 何で星蘭高校に転校生し来たんだよ。親父さんの仕事の都合か?」


 突然、だったが。2人きりだし、転校してきた理由を聞くには一番良いタイミングだと思い聞いてしまった。


 たしか。凛は小学生6の時に親父さんの仕事の都合で星蘭街から3つ位離れた街に引っ越して行ったんだよな。

 

 引っ越しの別れぎわ、凛が泣きじゃくって別れたのを今でも覚えている。


「えっとそれはですね。とある催眠術師女の人を探しに、この街に両親と一緒に戻って来たんです」


「とある催眠術師の女の子?……催眠術?……まさか。その女の子を何で探しているんだよ」


「はい。実はですね。私はお父さんのお手伝いで星蘭に……」


 その後、俺は凛の話を食い入るように聞き。怖くなった。


 凛いわく、この星蘭街のどこかに、男をやり捨てもてあそぶ悪女みたいな女の子が、どこかに潜んでいるとのことだ。


「なんだよ。それ……つまりその女の子を探して、更生こうせいさせるのが、凛のお父さんの役目なのか? カウンセリングってやつか?」


「まぁ、そんな感じですね。それで私も組織に所属してますので、父のお手伝いの為に星蘭高校に転校したんです」


 組織。なんだそりゃあ?


「……じゃあ。俺と再会して、いきなり婚約者とか冗談言ったのはなんだったんだ?」


「そ、それは……まだ秘密です」


「なんだそれ?」



「………あちゃ~! あの組織もしつこいね。私達・・を捕まえる為にここまで来るなんてさ。それにターゲット君もガチガチに守ってるよ」


「でも。やりたいんでしょ? あの男の子と……あたしもだけどさ」


「そうそう。あんな良い子。何で誰も手を出さないんだろうね。秋崎ハヤテ君のオチンチンにさ~!」


 俺はその時、まだ気づいていなかった。俺の貞操ていそうを狙う。変態達の存在に……


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