第26話 趣味の部屋
《有栖川家マンション 午後15時》
「着いたわ。ここが私が今、1人暮らしをしている場所よ」
「大きいですね。セキュリティも確りしてますし。良い場所にお住まいですね。結女ちゃんは。素敵です」
「そ、そう? なんだか褒められると照れるわね」
「はい。別に結女さんは褒めていません」
「なんですってぇ?! 凛~!」
……コイツ等。会って間もないのに息ピッタリだな。良い親友同士になるかもな。
「しかし、高いマンションだな。流石が有栖川。お金持ちだな」
「………ん!」
「おっと! 静かにしてないと姫夏が起きちゃうな」
俺、有栖川、凛は現在、有栖川が1人暮らしをしているマンションへと来ている。そして、俺の背中には理科準備室で盗撮を行った、姫夏六花が意識を失い俺におんぶされている。
「六花は元々、美少女の盗撮癖はあったけど。今回の件は流石に許さないわ。お仕置きしてあげるんだから。」
「いや。美少女の盗撮癖があるのはヤバい女だぞ……いや。姫夏はヤバい女だったな。色々と」
「私の毒……言い間違いました。睡眠薬効きすぎてピクリとも動きませんね。結女ちゃん家で介抱してあげるんですね。お優しい」
「そうそう。そうね~! 色々と六花を解放してあげなくちゃ、私の気が収まらないわ……どんな悪戯をしてあげようかしら? ニャフフ」
有栖川の奴。悪い顔してんな~……悪戯って何すんだろうな? 足裏こちょこちょとかか?
「まぁ、良いわ。部屋に入りましょう。六花覚悟しなさい。私のエッチな動画を撮った事を後悔させてあげるんだら、それに今日はテスト期間前で学校が半日で終わったし、お仕置き時間はたっぷりあるのよ」
「………んんん」
有栖川が乙女ゲーの悪役令嬢みたいな顔をしながら、寝ている姫夏の顔を指先でなぞった。姫夏。美人に育ったな。胸も。
あっ! 俺今回、有栖川が辿る未来が分かったぞ。姫夏に返り討ちにあって、有栖川が姫夏に全裸土下座する羽目になるんだろう。きっとな。
◇
生前。恋愛ゲー〖私を好きなだけ追い詰めてダーリン。余所見はNoneNone〗を何度も何度も周回していた俺にとって、ヒロイン達の家や部屋は勝手知ったる自分の部屋と変わらない程に熟知している。
特に俺の1番の推しキャラだった。有栖川結女の部屋は女の子らしい部屋にコーディネートされ、部屋もちゃんと綺麗な筈なんだが───
「フフフ。どう? 秋崎。私の部屋。結構広くてオシャレでしょう?」
「なんで段ボールやコンビニ袋ばっかりが部屋に山積みになってんだよ! 後、下着や洋服もあんなでかいソファーに山積みだし……あの大量のエロ雑誌は何だ? 有栖川」
「な、何怒ってるのよ。このくらい普通でしょう? 最近は、私専属のメイドさんが長期休暇してるから、部屋も片付けられないのよ。私1人で掃除なんてしたらマンションが火事になるから。勝手に掃除しちゃいけませんって言われてるの」
コイツ。専属のメイドさんなんか居るのかよ。流石が良い所のお嬢様だな。気性は荒いけど……いや。今はそんな事を考える時じゃない。有栖川の部屋の掃除をしなければ。落ち着かない。
「……そうだったのか。なら俺が有栖川の部屋の掃除をして良いか?」
「へ? 秋崎が私の部屋の掃除をしてくれるの? ならこれからは一緒に住む?」
「なんでそうなる? 住まんわ。俺はこう見えてもキレイ好きなんだよ。だからこんな汚部屋を見たら掃除したくなるんだ」
「お、汚部屋とは私の専属のメイドさんに失礼よ。秋崎」
「いや。メイドさんは何も悪くない。悪いのはお前の家での生活の仕方だ」
「……む、むむうぅ~ぅ!」
なんだその怒り方は、めちゃくちゃ可愛いんだが。つうかさっきから凛の奴は静かだし、どこにも見当たらないがどこに居るんだ?
「……お~い! 凛。どこに居るんだ? こんな危険地帯で1人になったら遭難するぞ!」
「しないわよ。フシャアア! はみゅ?!」
「はいはい。しないな~、大人しくしてような。猫有栖川。姫夏はソファーに座らせとくからな。ちゃんと暴れない様に拘束しとけよ」
「ニャ、分かったニャ」
カチャカチャ……ピッピッ……パキンッ!パキンッ!
……コイツ。案外こういうノリ良いよな。仕草は可愛いし。
「は、ハレンチです……こんなのハレンチです」
後ろから姫夏を拘束する為の音が響いているが、姫夏だからまぁ良いか。
それよりも凛だ。あいつの声が隣の部屋から聴こえて来たんだが……何してんだ?
「さぁ、六花。先ずは服を脱がせてあげるわ。覚悟しなさい! エヘヘ」
有栖川が嬉しそうな顔で姫夏の服を脱がし始めてるのを見届けつつ、俺は凛を探すべく、隣の部屋へと移動した。
◇
《結女の趣味部屋》
「ハ、ハレンチ……」
「あ! 居た。凛、人の家の部屋に勝手に入るなよ。失礼だ………何だこりゃあ?」
「は、はー君。この部屋。凄く凄くハレンチです。裸の女の子のポスターがいっぱいいっぱい貼られてます」
「貼られてるな……無修正のポスター、それとすげえ量のエロ雑誌とエロ本だな」
………そういえば。有栖川の家は結構厳しくて、スマホやパソコンでエロコンテンツを鑑賞できないとか言っていたな。
「あの段ボール……ネットじゃあ、購入履歴が残るが。コンビニや本屋でエロ雑誌を買って、見終わったら段ボールに詰めてリサイクル収集に出してのか? そうすれば厳しい親にはバレないもんな」
「ハ、ハレンチです。はー君。こんなのハレンチ過ぎます」
凛が顔を真っ赤にして、口をパクパクさせている。魚の物真似か?
「………まぁ、これが有栖川のストレス発散する為の趣味なんだろう」
「このハレンチが結女ちゃんのストレス発散…なんですか?」
「軽蔑したか?」
「い、いえ。そんな事は絶対にあり得ません。人の趣味は人それぞれです。どんな趣味を持っていても軽蔑なんてしませんよ」
「そうか……凛は昔と本当変わってないんだな。優しいな」
「へぅ! あ、ありがとうございます」
凛は俺に褒められると赤面しながらニマニマし始めた……それにしても、有栖川の奴。普段どんなエロ雑誌を読んでいるんだ? 少し見て見るか────
〖黒髪イケメンに調教されちゃうの♡〗
〖犬猿のアイツといけない夜の関係〗
〖お仕置きしてよ。私のダーリン。夜はラメラメ〗
〖高スペックでドSな彼に毎日ドッキドッキ! ラメラメなの~!〗
〖アナ●●●●●●●●ピー〗
ソフトなエロ雑誌から超マニアックなエロ本までより取り見取りだった。ようこれだけの量を買って消費してるな。有栖川……やはりエロい女の子だな。
「………凛。少しだけさっきの発言撤回するわ」
「はい?」
「有栖川は結構なハレンチ娘だ。覚えておけ」
「結女ちゃんはドスケベでエロい女の子ですね。覚えました」
「なんか違うが概ねあってるな……部屋の掃除始めるかな」
「分かりました。それで私もお手伝いしますね。はー君」
「おう! サンキュー、凛」
俺と凛は変態の部屋の掃除をやり始めた。そして、その頃の有栖川と姫夏サイドでは……
◇
「六花……あんたのここってそうなってるのね。エッチだわ」
パシャパシャパシャパシャ!!
「………フー……フーフー……結女。覚えていてよ。私をこんな姿にしたこと後悔させてあげるからね……フーフー……」
姫夏六花の撮影会が始まっていた。




