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第25話 ギルティ 転校生の断罪

《ホームルーム終了後 空き教室》


「姫夏~! なんだよ。用事って?……(ガクッ)」

「六花~! 今日、部活も無いのなら、私達と一緒に作戦会議……(ガクッ)」


「シューコー、シューコー、凛が調合した睡眠薬。相変わらず凄いね。2人とも少しいだだけで眠っちゃうなんて」

「シューコー、シューコー、ええ。私独自の毒……言い間違えました。睡眠薬ですか」


 放課後。姫夏に呼び出された俺と有栖川は、こうして捕まったんだよな。



「秋崎。この娘、何なのよ~!」


 俺の隣で両手を拘束された有栖川が、身体をばたつかせている。スカートがヒラヒラして、パンツが見えそうだから暴れないでほしいな。


 目のやり場に困る。


「はー君と私の間柄は、婚約者同士ですよ」

「違う。凛は俺の小学校の時の同級生だ」


「………はー君。なんの冗談ですか?」

「凛こそ。なんの冗談だ? お馬鹿が過ぎるぞ」


「私は馬鹿じゃありません。はー君の婚約者です。将来のお嫁さんです」

「………違うは同級生な。数年振りに会った小学校の同級生だ」


「そんなのどっちでも良いわよ! その恥ずかしい動画を削除して、私達を早く解放しなさいよ!」


 止めろ有栖川。その動画は俺が後で凛から譲り受けるんだから静かにしてくれ。


「ええ、良いですよ。どうせ貴女とはー君の前で見せる為に、六花ちゃんから送られてきただけですからね。この動画は役目を終えました」


 凛はスマホをこちら側に向けて操作し始めると、ストレージ画面を開き、有栖川の恥ずかしい動画を消そうとし始めた。


ピッ!


「あぁ! 待て! 凛、その動画を俺にくれれば、お前のお願いを俺ができる範囲の中で叶えてやる。だから消すな! そのエロ動……有栖川の恥ずかしい動画を消さないでくれ!!」


「ちょっ! 何、転校生に土下座してるのよ。スケベ秋崎ー!」


 俺は床に頭を付けて、凛に懇願こんがんした。だって超絶可愛い有栖川のお誘いエロ動画だぞ。


 有栖川結女ありすがわゆめファンなら、絶対に欲しいエロ動画に決まってるよな!!


「はー君。そんなにこのエロ動画に執着心があるんですか? それに私と結婚してくるれるなんて嬉しいです。はー君」


「ああ! ある!! 有栖川のエロ動画を消さないでくれ!」


「黙りなさい! お馬鹿2人! エロ動画エロ動画連呼してるんじゃないわよ!! ペチペチペチペチするわよ!」


 凛と結婚してやるなんて言ってねえよ。俺ができる範囲で1つだけ願いを叶えてやるって言ったんだ。

 そして、両手が縛られているんだから、それは無理だろ。有栖川。


『もぉおおおお!! 秋崎のお馬鹿~!…………』


「楽しいそうに何も履いてないお尻を、秋崎君に向けてフリフリと……この2人の位置。全部見られているんじゃない? 結女」


 有栖川用監視カメラを設置した張本人の姫夏が、凛のスマホから流れるエロ動画を見ながら苦笑いした。


「そ、そんな事ないわよ。秋崎は私のお尻をちゃんと見ちゃいけない所は絶対に見てないってさっき言ってくれたのよ。ねえ? 秋崎」


 俺を疑いもしない綺麗な目をしている……あれ? 俺ってもしかして、有栖川に凄く信頼されてるのか? 

 今日の昼休み終わり、教室に戻る際、お尻をガン見したか聞かれて、見てないとかつい誤魔化したのに。まさか信じてくれていたとは……正直に言って謝るしかないな。


「すまん有栖川。有栖川のお尻がキュート過ぎて、有栖川の全部を見てしまった。だが有栖川だったらちゃんと許してくれると思って……」

「記憶を失いなさい! このエロ男!」


ペチペチペチペチ!!


「ブホォ?! や、止めろ! お、往復ビンタは止めろって。痛い……俺が悪かった。悪かったって!」

「許さない。許さないわよ。ど変態~!」


 有栖川の往復ペチペチペチペチが地味に痛い。


「結女と秋崎君。楽しそうね」

「……有栖川さんと。随分と仲が良いんですね。はー君は」

「そうそう。凄く仲が良いよ。これで諦めはついたでしょう? 凛」

「……いいえ。諦めません。はー君は私の婚約者ですから」

「それって小学生の時の約束でしょう? 忘れた方が良いと思うかな」


 姫夏と凛は何をひそひそ話をしたんだ? 気になるな。


(秋崎。ペチペチしている間に私の話を聞きなさい)


 ん? 有栖川が、俺に小声で俺に話しかけて来た?


(……マ……お尻の全部を見たこと怒ってるんじゃないのか? 有栖川)

(は、恥ずかしいけど。怒ってはないわよ。あんたは私の為に朝から色々と助けてくれたしね。このペチペチも演技だから……秋崎なら特別に許してあげる)


 この超絶可愛い美少女は天使か? いや有栖川だった。普通、嫌いな男にお尻の全部を見られたらブチギレもんだぞ。


 本当に良い娘だな。有栖川は。


(ありがとう……それで? なんだよ。小声でさ? 話を聞けって何するんだ?)

(この縄をほどいて、私達を拉致監禁している。お馬鹿2人を倒すのよ。私とあんたの放課後をこれ以上邪魔されたくないもの)


 お馬鹿2人を倒すね……凛はボーッとしている様で隙が無いし、六花は用意周到で、もしもし今回倒したとしても。その後に何百倍にしてやり返されるのが落ちだろうに。


 それに比べて、俺達は……ただのエロ動画鑑賞が趣味の隙だらけのコンビだな。


(無理だな。諦めろ、有栖川)

(なんでよ。ペチペチペチペチ!)

(俺達とアイツ等じゃあ人間レベルが違う。俺達エロコンビとあのエロコンビじゃな)

(どっちもエロコンビじゃない! いいからやるわよ。六花達を倒して、捕まえてお仕置きしてあげなくちゃ、気がすまないわ)


 この頑固モード。これになった有栖川は、俺の言うことを全然聞かないんだよな。いったいどうしたら良いんだ……ん!


(何? どうしたのよ? 秋崎)

(いや。六花と凛を簡単に倒す方法を浮かんだぞ。有栖川)

(嘘? そんな策があるの? 教えない。秋崎)

(ああ、それはな……)


 俺は有栖川の耳元で、とある作戦を伝えた。


「凛は相変わらず。頑固者だね。あれは私達さんが……? どうしたの? いきなり静かになって」

「あわ! あわわわ! 六花ちゃん……あれを、あれを見て下さい!」

「何? 凛がこんなにビックリするなんて? 秋崎君達が何かしてるの?」


 突然、慌て始めた凛が指差す方へと、目を向ける姫夏。するとその方向には……


「ハヤテ。キスするわね……良い?」

「ああ、優しく頼む。結女」


 俺と有栖川がキスを交わそうとする光景だった。


「あわわわ!! だ、駄目です。はー君の初めては全部私の物です」

「……結女と秋崎君がキス? こんなの……嘘でしょう? 私だってまだなのに」


 俺が予想した通り。突然始まったあり得ない光景にわたわたし始める六花と凛。


 そして、俺はこの時を待っていた。


「凛! 六花を拘束して、俺達を自由にしてくれれば、今週の土曜日家に遊びに来て良いぞ。あ~! 因みにうちの両親居ないからよろしく」


「……はー君の家にお泊まり」


 凛の身体が一瞬だけ硬直し。


「は? これは秋崎君の罠? り、凛。秋崎君の話を聞いちゃ駄目だよ……てっ! 凛何をしているの?」

「六花ちゃん。これも私とはー君が幸せになる為の犠牲です。さようなら」

「な? 裏切る気? 凛。そんなの許さ……へなぁ?!……(ガクッ)」


 す、すげえ。一瞬しか見えなかったが、何かを口に当てて気を失わせるなんて、あの女帝姫夏を倒しちまった。やるな凛。


「何なの? この転校生。六花を相手に一瞬で仕留めるなんて……怖いんだけど」


 有栖川は俺の後ろに隠れて、出荷される子羊の様に震えていた。


「ハァハァ……はー君。これではー君のお家に住めるんですね?」


「ん? あぁ……とりあえず。今回の件の黒幕を家に運ぶか。手伝ってくれ。2人とも」


「は、はい! はー君」

「……あんた。今、とんでもない事を了承しなかった?」


  有栖川がジト目で見てくるが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。最優先事項は姫夏をしょす事だ。


 姫夏め……監視カメラでエロ動画の撮影とは、やってくれたな。家に帰ったら存分にやり返してやるから覚悟してもらうからな。

 

「私と秋崎はただのクラスメイトよ。転校生」

「転校生じゃありません。凛て呼んで下さい。変態さん」

「へ、変態じゃないわよ。私の事は結女て呼びなさいを凛」

「……分かりました。結女、これからよろしくお願いします」

「な、何よ。話してみたら意外と良い娘じゃない。よろしくね。凛」


 そして、俺が姫夏の事で色々と考えている間に、有栖川と凛が仲良く握手を交わし、仲良くなっていた。


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