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第22話 相方と転校生


 無事にバスが星蘭高校に着く前に、有栖川にパンツをかせる事には成功した。


 だが。有栖川はバスの中で、いきなりぐったりしてしまい、寝落ちしてしまった。


 そして、星蘭高校に着いた後は、有栖川をおんぶし、バスから降りた。



(また喧嘩? 本当に仲が良いな。あいつ等)

(……夫婦喧嘩か? 今日の勝利は秋崎か)

(お似合いよね。羨ましいわ)


 遠巻きから眺めて、俺達の噂話をしている様だけど。なんか生暖なまあたたかい眼差しで見られてる気がするな。


《星蘭高校 庭園》


 有栖川を庭園のベンチに座らせてた。バスに乗っていた頃よりも元気そうだ。


「………もう秋崎を許してなんかあげないんだから」


 両頬をプクッと、可愛くらませた有栖川が、俺を涙目で見てくる。


「いや。悪かったって。つうか俺も、有栖川にパンツをかせるのに必死だったから仕方な……いや。バスのあれは俺が完全に悪かったなな。すまん」


「……ちゃんと反省してる?」


「ちゃんと反省してるよ……」


「そう。だったらちゃんと私にした事の責任は、秋崎がちゃんと全部取ってくれるのよね?」


 怒ってても可愛いとか反則かよ。有栖川は……いや。そうじゃないな。ちゃんと返事をしないと駄目だ。


「あ、ああ。ちゃんと取るよ。有栖川とはエロ動画鑑賞仲間だし。ちゃんと取ってやる」


「そ、それを学校の中で言っちゃ駄目よ。秋崎は本当ににデリカシーがないわね。もう!」


「ああ、すまん」


 ………あれ? どうしたんだ俺? 何で、いつもみたいに有栖川に強く言い返さないんだ? なんか……有栖川に顔を近付けられただけで、ドキドキしてんだよな。


「……何よ。元気が無いわね……ごめん。強く言い過ぎちゃった?」


 有栖川はそう言うと、俺の右手を優しく握った。


「は! 俺は何で有栖川に、無防備な姿をさらしてんだ! ええい! 離せ、エロ有栖川」


「なんですって?! 人が心配してあげたのに、何がエロ有栖川よ。あんただってエロ秋崎じゃない。もう! せっかく気にしてあげたのに、やっぱり秋崎は本当にデリカシーが無いわね。もう!」


 ……そう、これだ。やっぱり有栖川と俺の関係は、罵倒ばとうの言い合いが合っているんだ。さっきみたいな、雰囲気は絶対にあり得ん。うん。ない!……俺が有栖川に惚れるなど───


「……何よ? 秋崎」


「いや! 絶対に無い! これだけ無い! だって俺には凛が居るんだぞ」


「……凛って誰?」


「は! まさか聞いてたのか?」


「凛って誰よ」


「いや……凛か? 凛は……有栖川に紹介しようと思ってた。超絶美形のハイスペックの男の子の事だ。うん! 多分、有栖川も凛にあったら一発で気に入ると思うぞ。間違いない」


 俺が苦し紛れの言い訳にそう告げると。


「ふ~ん! 超絶美形のハイスペックの男の子ねぇ……別に良いわよ。そんな人。そういう男の子には、もう会って親しくなってるもの」


「は?……嘘だろう? マジ?」


「…………うん」


 俺は有栖川のその返事を聞いて、何故か頭が真っ白になってしまった。そして、無意識に右手を顔に当て、有栖川に今の表情を見られないように隠した。すると


「………(グスンッ)」


「ちょっと! 何、私にあんな事した右手の臭いをかいいでいるのよ。お仕置きするわよ! 秋崎~!」


ピチンッ!ペチンッ!


「ぶふぅ?!」


 何故か有栖川が赤面しながら、俺のほほをペチペチと優しく叩いていた。


「嗅いじゃ駄目よ~! 秋崎」


《教室 ホームルーム》


 おのれ。有栖川め。可愛い顔でペチペチペチペチと……可愛いが過ぎるかよ。全く。


「え~! 突然の発表だが。今日からこのクラスに新しい仲間が加わる事になった!」


 担任の木村先生が、朝から死にそうな顔でそう告げる。


 社会人ってなんで、皆が皆精魂疲れきった顔してんだろうな。俺、まだまだ大人になりたくないんだが、ずっと学生でいたい。


「木村先生。男の子ですか? 女の子ですか? それとも美少女転校生ですか?」

「男の子ですよね? イケメン君?」

「うちのクラスにはイケメン成分が足りないからりイケメンでお願いします」


 クラスの自称ムードメーカーである白滝しらたきが、手を上げながら木村先生に質問した。

 それにつられて、自称カースト一軍女子達が、イケメンの降臨を願う。


「………イケメンなら秋崎が居るでしょう」

「そうだね。あの娘達は後で絞めようね。結女ゆめ

「じゃあかんおけ。用意しとかないどねぇ」

「はわわ。そんな物騒な事言っちゃ駄目だよ。結女ちゃん、六花ちゃん~」


 そして、うちのクラスのカーストトップの有栖川達の機嫌がすこぶる悪くなっていた。


「お~い! 転校生が珍しいのが分かるが静かにしろ~! それと男子共に喜べ……転校生は可愛い女子生徒だ。え~! では入って来てくれ。東雲しののめ


「はい!失礼致します」


「「「うおおおぁお!!」」」

「「「いゃあぁぁあ!!」」」


 喜ぶ男子共と悲しみの叫び声を上げる女子達……つうか転校生ってもしかして。あいつの事か?


「今日からこのクラスでお世話になります。東雲しののめりんです。以前は月海高校に通っていました……そして、このクラスに要る。秋崎疾風君の婚約者です。よろしくお願いします」


「「「は? はぁぁああ?! 婚約者あああ?!」」」


「ハニャアア?! 秋崎の婚約者?!」

「………凛が転校生?」

「誰? 誰なのぉ?」

「り、凛ちゃん?」


 驚くクラスメイト達。そして、驚くヒロインズ。その騒ぎの中、俺の元へと近付いて来る。恋愛ゲー〖私を好きなだけ追い詰めてダーリン。余所見はNoneNone〗の隠しヒロインの1人、凛。


「………凛。お前、何言ってんだ?」


「久しぶりですね。はー君、ずっとずっと。会いたかったですよ」


「…………ニャニャ? あ、秋崎に婚約者?」


 俺の隣の席でフリーズする有栖川。俺の目の前の空席に座り、俺へと振り返り、ニコッと笑う凛。


 どうやら、今日の凛の登場でまた、一波乱起こりそうだなと俺は確信した。


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