第16話 夜は快適に過ごしたい
「何で私が布団に簀巻きにされて別部屋で寝ないといけないの〜? 六花さん!」
「よもぎが危険人物だからかな。私達が寝ている最中に催眠術なんてお馬鹿事をされても厄介だしね」
「いや、あれは先輩に借りたアプリを借りてただけで……あっこれ喋っちゃいけないの事だった」
「先輩〜?……その話。詳しく教えてもらえる? お馬鹿なよもぎ」
「六花さん! 転がさないで! 簀巻きの私を転がしながら、部屋を出ないで〜!」
そんなコントをしながら、よもぎと六花が俺の部屋から出ていった。
「何やってんだアイツ等?」
「さぁ? 分からないわ。それよりもそろそろ早く寝ましょうよ。夜更かしはお肌に悪いもの」
『あ! 駄目……そこは!』
『可愛がってやるよ……』
有栖川が枕を両手に持ち、俺の前に立っている。Yシャンの下は何も履いていない為か。下着が微かに見えてイヤらし格好に見えてしまう。ちなみに目線はパソコンに釘付けだ。
純愛ねっとりエロ動画を再生している奴が何か宣ってるぞ。
「エロ動画再生しながら言う台詞じゃねえ」
ペチン!っと有栖川のお尻を軽く叩く。
「いしゃい! ちょ、ちょっと! セクハラよ。女の子のお尻を叩くなんて、セクハラだわ」
「……下にズボンやスカートを身に付けてない奴に言われても、説得力はゼロだろう。それよりも聞いたか? さっきの六花とよもぎの会話」
「何の事よ? 動画に集中していて周りの声なんて入って来なかったわ」
このムッツリスケベ娘め……エロ動画を見るのに集中するなっつうの。でもまあ有栖川の家は厳しくて、激しいコンテンツに飢えてるからな。エロ動画を見たくなるのも頷ける。
「まぁ、それはしかないな。俺もよく愛花梨や六花が俺の部屋に勝手に入って来て、興奮している所を見られてるからな。エロ動画を見るのに集中するのはしかない」
ちなみに愛花梨は迎え側の家、六花はお隣の家に住んでいる。昔から家が近い為、2人共俺の部屋に無遠慮に侵入して来るんだ。
「……アンタ。愛花梨や六花に何を見せてるのよ? 最低ね」
有栖川がゴミを見る様な目で俺を見て罵声を浴びせて来た。
『だ、駄目……駄目えぇ』
『もっと我慢しろよ……』
人ん家のパソコンでエロ動画を堪能している奴に言われたくない言葉だな。おい……
「有栖川もそうしたら同罪だろう。俺の秘蔵コレクションを見ながら興奮してたんだからな」
「か、可愛い女の子は別に良いのよ。エッチな動画を再生しても絵になるだもの」
「涎を滴しながら何の絵になるんだよ? レオナルド・ダヴィンチやゴッホに謝れ! 絵の文化を有栖川の色欲で汚すなよ」
「な、なんですってえ〜! お、怒るわよ〜!」
有栖川が手に持っていた枕を俺の脳天へと振り下ろす。そして、俺はそれを華麗に避けた。
「ひぁっぷ?!」
すると有栖川は俺が座っていたベッドへとダイブし、顔を埋めた。Yシャンは捲れ、風呂上がりに身に付けた下着が露になった。
「何で避けるのよ〜!」
「悪い……ほら。Yシャンが乱れてパンツ丸見えだぞ。さっさと直せよ」
「……イヤ。秋﨑が直しなさい」
「なんでだよ。セクハラになるからやだね」
「なら今から大声を出すわ。それで六花達が戻って来たら秋﨑にエッチな事をされそうになったって言っちゃうわよ。良いの?」
「……それはやだな」
「じゃあ。秋﨑が私のYシャンの乱れを直しなさい。これはお願いよ」
お願いか。なら仕方ないな……
「はいはい。分かりましたよ。お嬢様」
「フフフ。それで良いのよ」
何で嬉しそうなんだか。俺は有栖川に近付き、Yシャンを下ろしてやった。そして、有栖川に近付いて分かったのだが。よもぎがコンビニで買った下着……なんか湿っ……いや。これ以上の詮索は駄目だ。破滅する。
「秋﨑〜! どうしたの?何かあったかしら?」
「……い、いや。何もない。何の変化もないぞ」
「嘘?……そ、そう。それなら良かったわ……うぅ……ここまで手を出して来ないなんて、紳士じゃない」
何だ? 小声で何を言ったんだ? 有栖川の奴。
「それよりも……今後の事だけど」
「私の恋人候補探しね。それなら私はね……えい!」
「うわ! いきなり何するんだ。有栖川!」
有栖川は俺の右手を掴むと、おもいっきりベッドへと俺の身体を引き寄せた。その勢いで有栖川と隣に身体を倒してしまった。
「……今日は色々な事があったわね。秋﨑」
甘えた声で俺の顔に手を触れ、優しく撫でる有栖川。目がうつらうつらして眠たそうだ。
「エロ動画を見すぎて疲れたんだろう。今夜はもう寝ろ……俺も寝るからさ」
「うん……また起きたらエッチな動画一緒に見ましょうね……おやすみなさい。秋……﨑……」
「ああ、おやすみ。俺が一番好きなヒロインさん」




