第15話 Yシャンは好きでしょう?
俺の部屋は今、夜中だというのに騒がしい。明日が土曜日で休みというのも理由の1つかもしれないが。今日、俺の家で泊まる女の子達のテンションが異様に高い。
女子達は単純にお泊まり会の様な気分で楽しいんだろうが。俺はそのテンションに着いていけない。なんせ俺秘蔵のエロ動画を俺の目の前で鑑賞されているのだから。
『だ、駄目………』
『好きだよ』
「す、凄いわ。あんなに大きいなんて……男の子って皆ああなの?」
「あれ? 結女さん。知らないの? 遅れてるー」
「な? そういうよもぎは詳しく知っているって事?」
「いや、全然。よもぎはまだ未経験だからね〜」
「な、何よそれ〜……このパスタ物凄い辛いわね。(モグモグ)」
………エロ動画見ながら。何通会話してんだ。アイツ等。つうか有栖川の奴。良くエロ動画見ながら激辛パスタ食えるな。
「美少女達が君のYシャンを着て、エッチな動画を見ながらご飯を食べてるのが気になるなんて、相変わらず。秋﨑君は変態さんだね」
「姫夏。からかうなよ。こんな展開になる様に仕組んだのはお前だろう? 分かってんだぞ」
有栖川達同様。Yシャン姿の姫夏が俺が座るベッドへと腰を下ろし、俺の隣に座って来た。
「だから。こんな際どくてエッチな私達を見ても襲う気になれないの?」
「お前達の格好は魅力的だし、興奮もするが襲いたいとは思わないよ。皆……大切な人達だからな」
そう俺はこの世界に転生した存在で、生前に彼女達が活躍するゲームをプレイし、彼女達の辛い過去や楽しい思い出を知っている。
だから俺はこの娘達に興奮したとしても手を出すわけないんだよな。
「………なんか変な事を考えてない?」
姫夏が俺の膝に手を乗せてながら、ジーッと目を見詰めて来る。
「変とは?」
「私達とは違う何かを見ているみたいな感じかな」
……流石、秋﨑疾風の幼馴染みだな。俺の小さい変化にも敏感だ。
「なんか。こんな2人きりで時間を作って話すの久しぶりだなと思ってさ」
「高校に入ってから全然話してなかったからね……太一君に振り回されちゃったね」
「振り回されたって……皆。太一に夢中になってたろう。姫夏だってあんなに夏の頃は激しくアピールしてたんだし」
夏。そう夏休みの時は色々とイベントがあったな。俺は毎日の様に有栖川や南雲なんかにお仕置きされていたな。
「また私とは違う事を考えている。下着Yシャンの私はそんなに魅力的じゃないのかな?」
「何でそんな事を聞くんだよ。それに姫夏……むぐ!」
姫夏が右手の人差し指指で俺の唇を塞いできた。
「……今は六花て呼んで……私もハヤテって呼ぶから……ね?」
普段はクールなくせに俺と2人きりの時は甘えて来る。太一にもうアタックしている時も、何故か俺に甘えながら太一をどう落とせるか質問され。なんとも複雑な気分になった時もあったな。
「本当に六花は甘えたがりだよな。普段はあんなにクールぶってるのに」
「だね~……ハヤテと居ると安心するからかな。学校とかだと頼られる事が多いしね。藤本君とかとくに」
太一は事ある事に攻略キャラである女の子達に甘えていたと有栖川や姫夏に聞いて初めて知った。
勉強を教えてくれ。
あれが食べたいから弁当を作って来て。
教室の掃除を代わりにやっといて。
代わりに食事代を払っといてだのと。
俺が居ない所では平気な顔でヒロイン達に強要していたらしい。そして、そういう事が俺に伝わらない様にヒロイン達には口止めしていたとか。
「……それももう終わったんだろう?」
「ん~? どうだろうね。今日の帰りもカラオケにつむぎや栞とか誘って皆で行こうとかのたまってけど……多分。彼は駄目だね。昨日までの環境になれちゃってもの。ハーレムってやつかな?」
「ハーレムって、アイツは俺に愛花梨。の事が真剣に好きだから、付き合いたいから色々と手伝ってとか言ってたぞ」
「愛花梨の事も好きなんでしょう。彼は欲深いからね。ほら今日も彼から私のスマホに鬼伝来てるし、結女やよもぎのにも来てる……藤本君はハーレムが好きなんだろうね」
「太一の奴。何考えたんだか……」
「愛花梨とは直ぐに別れちゃうかもしれないね。案外早くさ」
六花はフフフと笑いながら俺の手をにぎにぎし始めた。これは俺とは会話が弾んでいる時に行う昔からの六花の癖だ。
「それだと俺の努力がパーになるんだがな」
「……良いんじゃないかな。パーになって……人の感情を利用して自分だけ幸せになろうとしようとしている人と一緒に居るより……ね」
「なんだよ。その含みがある言い方は?」
「さあ……今は内緒かな……今はね」




