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第11話 放課後はカラオケではめるの?

《カラオケルーム》

 

私の赤ちゃん欲しい発言が原因なのか分からないけど。秋崎が私の隣に座って心配そうな顔で私のひたいに手を当てているわ。恥ずかし過ぎるんですけど。


「……何で私のおでこに手を当てているのよ? 秋崎」


「いや。熱があるんじゃないかと思ってな。理科準備室の時みたいにさ」


「ね、熱なんてないわよ。私の事を心配し過ぎよ。秋崎は……」


 昨日までは事あるごとに私の恋路を邪魔してきた宿敵みたいな奴なのよ。妨害とか言って、しょっちゅう私の身体を触っていた変態でもあるのに。何でこんなにドキドキしているのよ。私~!


「いや。心配はするだろう。有栖川は誰かに催眠術をかけられてる可能性があるんだからな」


 冗談みたいな話を真面目な顔で言ってくるわね。私はそんなに単細胞じゃないのよ。


「有栖川は単純でフシャアアな性格だろう? だからアイツの催眠には簡単に引っ掛かると思うんだよな」


「フ、フシャアア! 誰が単純な性格よ。頬っぺた引っ張りまくるわよ」


 私は秋崎の頬っぺたをミョ~ンって伸ばしいてやったわ。優しくね。


「全然痛くないな……まぁ、有栖川じゅなくても、普通の奴でも引っ掛かるか。この世界なら女の子に好きな事を命令できる様な催眠アプリとかも普通にありそうだし」


 ……コイツ。さらっととんでもないこと言ってない? 何? 催眠アプリって? そんな物を使って私に何をする気なの? 秋崎は~!


「何、百面相ひゃくめんそうしてんだよ……いいか。今日、ここに来た本当の目的を思い出してみろ」


「え?……カラオケしながら、秋崎が私の恋人になるだったかしら?」


「はい! 洗脳確定な!」


「ニャアアア!! いしゃあい?! 何で私の頭を脳天チョップするのよ?」


「とんでもないことをさらっと言うからだ。赤ちゃん発言といい、やっぱり昨日から変だぞ。有栖川は……」


「べ、別に変じゃないわよ。正常運転よ」


 そう。これが私の正常運転……たぶん。


「……変態行動が正常運転? やはり失恋させてしまったせいで脳に異常が表れているんだな。可哀想に。アホな有栖川」


「誰がアホな有栖川よ。さっきから私をなしすぎよ。お馬鹿秋崎」


パコンッ!


『ぎゃああああああ!!』



『ぎゃああああああ!!』


《カラオケルーム 別室》


 私は姫夏六花ひめなつりっか。ハヤテ君の幼馴染みで、今日は彼の頼みで、友達のよもぎと一緒にカラオケにやって来ている。


「ほほう。盗聴機からハヤテさんの断末魔の叫び声が聴こえて来てるねぇ。良い気味良い気味~」


 学校の外だというのに、理科の実験の時に羽織るであろう白衣を着用して、緑髪をポニーテールにしている女の子がイヤホン片手によだれを垂らして喜んでいる。


「よもぎ。きみは本当に結女に催眠術をかけたのかい? 秋崎君に失恋の恨みを晴らす為にさ」


「ん~? そうそう。私の初恋を失敗させたお邪魔さんだからね~! お仕置きしてあげなくちゃね。あ~、でも結女さんにかけた催眠はもう今日の昼休みで解いてあるから安心してね」


「催眠はもう解いてあるって……そういう問題じゃないんだよ。よもぎ。君は恋のライバルだったからって、何で友達の結女にそんな事をしてんだい? 一歩間違えればれっきとした犯罪に……」


「私がハヤテ君にやり返そうとしたら。先に結女さんが行動してたからだよ~……私の方がハヤテ君への恨みは海よりも深いのにね」


「恨み?……よもぎ。君の場合は恨みというよりもむしろ……」


『だ、駄目よ。秋崎……ここカラオケ……お店の中なのよ? それなのに私の制服をそんな風にしたら……だ、駄目。恥ずかしいよ。秋崎……』


『有栖川。優しくするから安心してくれ……有栖川は本当に可愛いしスタイルも良いな。好みだぜ』


『ば、馬鹿……そんな事言っちゃ駄目。本気になっちゃうでしょう……こんな個室で2人きりなのに……ちょっと……そこスカートの中…手入れちゃ駄目……』


『じゃあ。この手はなんだよ? 有栖川……有栖川の手俺のここに……』


『んぁ?!……だから。これはぁ!!』


 よもぎが結女の鞄に仕掛けた盗聴機からとんでもないこと会話が聴こえてきた。


「な、な、何これはぁ?! こんなの計算外。私はただ結女さんにハヤテ君が近くに居る時に発汗はっかんする様に催眠をかけただけなのに……何でそんな展開になるの?」


ピッ!


「……よもぎ。これ不味くないかい? ここは公共のカラオケ店だし、もし店員に見つかって、あの2人の現在進行形の状態を星蘭高校側に知られる事になりかねないよ」


「あわわわ! そしたら、近くに居た私達も巻き込まれて、反省文? いやいや下手したら停学もしやに……」


 よもぎは昔から自己保身の塊。そして、頭が良すぎるせいか。考え過ぎて行動が暴走しやすくなる。


「なら。止めに行った方が良いね。よもぎは星蘭高校に特待生として招かれたんだからさ」


「そ、そうだよ。直ぐに止めに行かなきゃあ! 学校側に私が結女さんに催眠術をかけた事を知られる前に2人をと、と、止めないと~!」


『……秋崎……優しくしてね。私、初めてだから』

『……あぁ、優しく可愛がってやるぜ。有栖川』


「………秒読みだね」


「止めに行くよぉ! ハヤテ君の貞操と自由は私の物なんだあぁ!!」


 よもぎはカラオケルームの扉を勢い良く開けると。秋崎君と結女が居るカラオケルームに突撃していった。


「秋崎君。これで1つ貸しだからね。 今度の休みどこか連れてってよ」


《カラオケルーム 秋崎&有栖川サイド》


ガチャガチャッ……バターンッ!!


「こら~! ハヤテ君。結女さん。公共の場での不純異性行為は駄目に決まってるでしょうがあぁ!」


『だ、駄目よ。秋崎。恥ずかしいわ……』

『可愛がってやるぜ。有栖川……』


「あ、あれ? 音声?……しかも誰も居な……」


「確保!! いけえぇ! 捕まえろ。種族値たぶん600族の有栖川」

「フシャアア!! 私を洗脳した対価。しっかり払ってもらうわよ! よもぎ!!」


「へ? 結女さんとハヤテ君? 何で私の見えない場所に隠れて……てっ! 何で私を拘束しているぅ? や、止めて……いやあぁ!!」


 こうして私達は全ての諸悪の根源であるよもぎをゲットする事ができたのだわ。


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