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第10話 よもぎさんは企みたい

「太一にキレられた? 有栖川がか?」


「う、うん。授業中に六花とか誘ってカラオケに行こうって言われたから。アンタには愛花梨あかりが居るでしょう。授業静かにしなさいって伝えたらいきなりね」


「あの温厚な太一がか? 信じられないな」


「温厚って……言っとくけど。太一って昔から私や家族には当たりが強いのよ。親しい相手には容赦なくなるっていうかね。結構傲慢なのよ。アイツ」


 容赦がなくなる? ゲームだとそんな事は無かったがな。どんなルートでもヒロイン達が抱える問題を解決する為に奔走しヒロインと共に成長していった。


 代わりに主人公の親友ポジションの俺が嫉妬し、最後には酷い目にあっていたな。各ヒロインにも嫌われ散々な扱いだった。まぁ、こっちの世界リアルでもヒロインへの妨害行為で嫌われてわいるだろうが。


「アイツ。せっかく愛花梨あかりと付き合い始めたのになにやってんだか。あんなに協力してやったのにさ」


「それで私は失恋したんですけど? 秋崎君」


 不味い、やらかした。両頬を膨らませた有栖川が俺を睨んでいる。話題、話題を変えなくてわ。


「それは済まないと思ってるって。えっと……ほら! 作戦会議。新しい有栖川の恋人候補を探す作戦会議するんだろう。早くカラオケ行こう。カラオケ……レッゴー」


 このままでは気まずいと思った俺は、有栖川の右手を掴み歩き始めた。


「ちょ、ちょっと! 手、手を握ってる! 私の手握ってるってば! 他の人達に見られているでしょう」


「何を恥ずかしがってんだよ。大丈夫だって! 周りには俺達は天敵同士って事になってんだから気にするなって!」


「も、もう。天敵同士でもないわよ! アンタと私の関係は……」


「ん? 何か言ったか? 有栖川」


「な、何でもないわよ!」


 なに顔赤くして恥ずかしがってんだか。だがこの反応……可愛いんだよな。


《星蘭高校 教室》


 ……おっと。作戦通り一緒に帰ってくれたみたいだね。良かった良かった。ニヒヒ。


「だからさ! 今日もいつもみたいに放課どこか行こうよ。六花ちゃん。よもぎちゃん」


「ごめんね。テニス部の部活があるんだ。藤本君」


「そうそう。私もこの後用事があるからね~! それに太一さんはもう彼女持ちなんだから。彼女さんを大切にしてあげないといけないよ~」


「た、太一君。2人とも困ってるからカラオケは私達だけで行こうよ」


「なんでだよ。昨日まで皆、あんなに僕に夢中だったじゃないか。なのに今日になったらてのひらを返したみたいに冷たくしちゃってさ。何なんだよ」


 そりゃあ貴方に彼女ができて、皆気を遣っているからだってばぁ。なんで気づかないのかなあ。


 昨日、太一さんに失恋して一晩悶々しながら考えたけど。どうして今までウチ達はこんな人に夢中だったのかねえ?


 見た目も普通。勉強も運動も普通。性格も案外わがままだしねえ。昨日までのキラキラしていたオーラみたいなものも無いし。今日あってみたら覚めちゃってたんだよねえ。


「ほらほら。愛花梨あかりも待っているんだし早く帰ってあげないと駄目だよ」


「いや。でも、六花ちゃん。前みたいに部活を早く切り上げれば良いじゃん。そうすればカラオケの1時間位行けるんじゃ……」


「……それを彼女の愛花梨あかりで言わないでくれるかい? 愛花梨は私の大切な幼馴染みなんだから、悲しませたら許さないよ」


「そうそう~! ラブラブカップルなんだからお幸せにしてないとね~! じゃあ。私達はこれでバイバイ~!」


「……じゃあね。藤本君。愛花梨」


「う、うん。バイバイ。六花ちゃん。よもぎちゃん」


「………じゃあね。2人とも」


 ────あの嫌そうな顔。そんなに昨日までのハーレム状態が良かったのかな? 普通に良く考えれば、昨日、彼女ができた相手と遊ばないでしょうに。相変わらずアホの子だね。太一さんは。


《星蘭高校 庭園》


「………さっきの藤本君の態度どう思ったかな? よもぎ」


 あ~! やっぱり六花ちゃんも太一さんの態度気にくわなかったみたいかぁ。まあ、そりゃあそうだよね~。


「最悪でしょう~! 普通。付き合い始めた彼女前で失恋した女の子達を口説くかね?」


「……口説かない」


「だよね~! じゃあ部活頑張ってね。六花ちゃ……」


ガシッ!


「今日は部活はないんだ。よもぎ……だからこれから一緒にカラオケに行こう。秋崎君と結女の監視にね」


「え? いや……何のことかね?」


 バレてる? 私の企みバレてね?


「うんうん。バレてるバレてるよ。だから行こうね。カラオケ。今度は秋崎君のお邪魔する為にね」


《カラオケ店 インマーケ》


 私、有栖川結女は何故か今、凄くドキドキしているわ。何でかって? そりゃあ……秋崎と2人きりだからに決まっているかよ。


 お昼の時もそうだったけど。なんで秋崎の事がこんなに気になるのかしら?


「有栖川。作戦会議の前に飲み物頼むか? どうする?」


「へ? そ、そうね。アンタとの赤ちゃんはせめて2人は欲しいわね」


「……赤ちゃん? お前は何を言っているんだ? 有栖川」


 ……わ、私の馬鹿~! 本当に何を言っているのよ~! 全くもう!


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