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第4話 残念な王子


 リースティアヌ王国の第一王女ティアナの兄でもあり、第一王子であるサクヤは、容姿が整っていながらも、ロリコン好きであるという、とても残念な王子として知られていた。


 そんなサクヤのことを思い出し、容姿の無駄遣いという言葉がお似合いであるなとアリーシェは、ふと心の中で思いながら、ティアナが居るであろう執務室へと向かっていた。


「1日に1回は、サクヤ王子殿と城内の何処かで顔を合わせるのは、とても偶然だとは思えないのよね」


 そう呟きながら、本当に偶然なのかとアリーシェは疑いたくなったが、今更、考えても仕方ないと自身に言い聞かせる。



 ティアナが居るであろう執務室に着き、部屋の中に入れば、ティアナは優しい微笑みをアリーシェに向けて、口を開く。


「アリーシェ、一昨日は王都までありがとう」

「いえいえ。あ、あの、殿下、ちょっとお聞きしたいことがあるんですが」


 アリーシェがティアナにそう問えば、ティアナはなにかしら?と言い、机を挟んで目の前に立つ、アリーシェの顔を見据えた。


「サクヤ王子のことなんですけど、最近、やたらと顔を合わせることが多くて、偶然とは思えない程、1日に何度もすれ違うんです」

「そう、本当にサクヤ王子殿下は、アリーシェ。貴方のことが好きなのね」

「えっ……?」


 ティアナの言葉にアリーシェは耳を疑う。


(サクヤ王子が、私のことを好き……?)


 アリーシェはないないと心の中で否定し、ティアナに聞き返す。


「好きっていうのは、挨拶みたいな物ではないでしょうか? サクヤ王子殿下は私に良く好きと言いますが」

「あらあら、そうなのね。よかったじゃない」

「いや、良くはないんですが。殿下から見て、私はサクヤ王子に気に入られてしまったのでしょうか?」


 変態王子という異名を持ち、あまり良い噂を聞かないサクヤのことをアリーシェは良くは思っていなかった。

 正直、関わりたくないと思っていたのだ。


「そうね、気に入られてはいるような気がするわね。けれど、サクヤ王子殿下の好きは深い意味はないかもしれないし。まあ、わからないけれど、そこまで気にしなくてもいいんじゃないかしら?」

「なるほど。わかりました」


 その後、アリーシェは本来のティアナへの用事を済ませ、執務室を後にした。


 城の通路をコツコツと歩く足音と蝉の声が重なり合い心地良くアリーシェの耳に届く。

 アリーシェはふと足を止めて、青白く澄み渡る雲一つない晴れた空を見上げた。


 眩しい陽の光に目を細め、手を翳せば、夏の風が吹き、アリーシェの身体に当たる。


「関わりたくないと思っていたはずだったんだけどな」


 そう独り言のように呟いたアリーシェの声は夏の空気に溶け込むように消えていった。

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