Filing2-2 おスキですか…
彼だけが私と対等な関係だった。誰も関わろうとしてこなかったのに同期で彼だけが…。
ーーー
「おぉ~い潮田、次の訓練射撃場に集合らしいから行こうぜ。」
なんだアイツ、言われなくても判ってるっての。
私は日記を閉じ、机へしまう。
「わかったよキョウスケ、今行くから。」
日陰の廊下には蝉の音色がこだまし、私達の足音を消していく。
「言い忘れてたけど、日暮さん。日暮さんは今回気をつけることは職務中に"のっぺらぼう"の力を表に出さないこと…です。」
その力がなんなのか分かんないから、どうしようもないでしょ。もしかして、ノゾミさんたちも詳しく知らないのか?
「あ、今コイツら力について知らないんじゃね?みたいな顔したね。」
ジト目でレイを見つめるノゾミは、胸に指をあて静かに告げる。
レイは目を大きくし、ノゾミの察知能力に驚く。
「今話さないのは、複雑な操作を要さない力しか使えないあなたに詳細を説明して不安にさせたくないから!今の容姿のまま職務を終えるように…って伝えた方が分かりやすかったですか?」
くそ、明らか俺より年下なのに言うこと成すこと全て大人びてる。
「はい、じゃあ後部座席に乗って。」
上野さんが運転席に座り、俺とノゾミさんは後部座席に乗り込み現場へと向かう。
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ここか、近くにあったけど俺来たことなかったな。カナはよく寄ってるのみたことあるけど…。
街の中心地にある大きな国立図書館。ここには国内全ての書籍や文献が納められていると言わしめるほどの大規模な図書館である。
車を立体駐車場に停め、3人は施設入り口へと足を運ぶ。
「失礼します。こちらに警察官2名いらっしゃいますか?私たちこういうものなんですが…書類の記入が必要なら応じます。」
受付の職員のお姉さんは少し席を外して確認をしにいった。
「はい、確認がとれました。こちらに、お名前の記入をお願いします。」
上野さんが書類を記入していると、受付のお姉さんがこちらを見て話しかける。
「あれ?久しぶりじゃん、最近見なかったけど、なにかあったの?」
誰に話しかけてるんだ?ノゾミさん?
「ん?、どうしたの?いつも、幼馴染みの彼の話をしてくれたじゃない。」
ん?俺に話しかけてる?いつも?彼って?
突然の出来事で俺は戸惑う。視界が歪み、どう声をかければいいかわからない。
「あ、あのu…。」
「お~い、お姉さん!!書類書き終わりましたよぉ~。」
ノゾミがレイに割って入り書類の記入が済んだことを伝える。
あの人の目を俺は見ることが出来ずにその場を後にした。もうあの人が知っている彼女はここには居ないから…。
ーーーー
「いや~、まさか彼女と面識がある人だったとは思わなかったよ。」
ノゾミはそういうと俺の方に顔を向ける。
「勘違いしないで欲しいのは、彼女は生きてるってこと。あなたと入れ替わったから死んだ!!…とかはないから安心して。今は木造タケの肉体にいるけど、人格は彼女だからね。」
なぜか、心のなかの蟠りが溶けてくような温かい感覚に包まれる。
「わかりました。ぁりがとうございます。なんか、安心しました。」
「そうか、そうか、じゃあ特捜係と合流しt…。」
「だ~れだ?潮田久しぶり!!」
突然、間に割り込みノゾミの視界を両手で覆う男が現れた。
ヘットバンドをつけた男はニヤニヤしながらこちらも覗き込む。
「へぇ~君、可愛いね。所属、潮田と一緒?まじ気をつけなよ、何やらされるか分かったもんじゃないよ。」
そうヘラヘラ笑う彼にノゾミは振り向き様にエルボーを食らわせようとする。が、華麗な身のこなしで避けられる。
「キョウスケ、まだそんなキャラなんだ…。少しは大人になってると思ってたけど、あの時と何一つ変わってなくて、失望よりも安心が勝ったよ!!」
突然きてだれ?この人が特捜係の上條キョウスケなのか?
ノゾミは前傾姿勢になり、今にもキョウスケに飛びかかろうとする。
「はいはい、そこまでそこまで。図書館の司書さんたちに怒られたよ…騒がないでくれぇ~って。久しぶりの再会が嬉しいのは分かるけど、ここは図書館なんだからね。おっ上野君、やっほぉ。横の君は初めましてかな?僕は新井レン、宜しく。」
この人、めっちゃカッコいいじゃん。まじか…。男でも惚れるレベルだぞ。
顔立ちが整っているレンに思わずレイは目を奪われる。
と間髪なくノゾミが間にはいり話を進める。
「はい、みんな揃ったね。日暮さん、こちらが『特殊事件特別捜査係』の2人。ヘットバンドをつけてるこの餓鬼が上條キョウスケ、この残念イケメンが新井レン、今はその片鱗は見えないけど気をつけてね。」
なんか、ノゾミさんの後ろで静かに殺気を洩らしてる2人がいるのは気のせいかな…。
「よし、本題に入るとするか。」
新井はみんなを視聴覚室に移動させる。
テーブルには地図や書類が広げられていた。数多くの書き込みが見られる。
「今回、事案はこの図書館の利用者のご家族から通報があって動くことになった。」
↓
被害者① 長根ガクト(32) 男性
職業:大学職員
現住所:日之都コウジ町字中の沢1番地2
利用回数(週):週3通い、決まった曜日に利用はしていない。夕方から夜の閉館まで利用することが多い。
被害者② 秋森シオン(14) 女性
職業:中学生
現住所:日之都コウジ町字大沢通り5番地1
利用回数(週):週4通い、月曜日と水曜日には必ず通うがそれ以外は決まった曜日に利用していない。放課後に利用する。19:30には必ず退館している。
被害者③ 河西ユイ(23) 女性
職業:専門学生
現住所:日之都蔵石区 字石澤9番地7
利用回数(週):週7通い、昼間から利用することが多い。
被害者④ 中嶋タツヤ(33) 男性
職業:シンガーソングライター
現住所:日之都コウジ町字音坂5番地1
利用回数(週):週5通い、土曜日と日曜日は蒼葉公園での路上ライブをするため利用しない。開館時間から閉館時間までいることが多い。
…以上が本事案の被害者だ。」
続けて新井は俺たちが予想していないことを告げる。
「この被害者たちがこの図書館を利用したあと…いや、利用中に視力を失った。その原因解明と対処が本件の目標だ。」
「薬物で目をやられたにしては外傷が見当たらないんだよな。」
「見落としてるだけじゃない?キョウスケ。」
キョウスケの顔が曇り、ノゾミを睨み付ける。
「あん時と違うんだよ!!新井さんにも見てもらって確認したんだよ。ちゃんと…。とにかく、ここからの捜査の分担するぞ。」
上野が新井の腕を掴み、視聴覚室から出ようとする。
「ちょいちょい上野、新井さんをどこに連れてくの?えっ、あんたと新井さんで被害者の人たちに聞き込み!?私たちは…ここに残って現場検証…。…了解です班長。」
明らかにノゾミさん、新井さんと行きたかったでしょ。
ノゾミは、床にへたり込み魂が抜けたように虚空を見つめる。
「しょうがねぇな、潮田、日暮さん館内の現場検証にいくぞ。」
ノゾミの腕を引くキョウスケの姿を見て、少なくとも両者の関係は最悪ではないと俺は少し安堵した。
檜葉の香りが鼻腔を満たし、暖かい日が館内に降り注ぐ。
ご高覧ありがとうございました。
初登場の上條キョウスケ、新井レン。過去に何かがあったような発言を匂われるノゾミとキョウスケ…、今後はこの2人の動向にも要注目です。
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