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ゼロレクイエム発動編 第1話 始まりの声



ニュースが駆け巡った。

「椎名カイ――ゼロレクイエムの旗手。」


暴動の中で一人立ち、

AI制御に逆らい、人々を救おうとした医師。

その名前と理想は、たちまち世間の注目を集めた。


「椎名先生、外に記者が……!」


病院の控室で、後輩医師が慌てて駆け込んでくる。


「分かった。」

カイは白衣の裾を正した。


鏡の中の自分は、

疲れ切った顔をしていた。


(俺が何者だって言うんだ。

ただの一介の医者だろ。)


けれど、立たなければならなかった。


病院玄関の前。

マイクが突き出され、

フラッシュが焚かれる。


「椎名先生、ゼロレクイエムとは具体的に何を指すのですか?」


「ランク撤廃の後、医療体制をどう維持するおつもりですか?」


「AI統治側は反発していますが……!」


次々と浴びせられる質問。


だが、その背後で、

ふと声がした。


「カイ。」


振り向くと、そこに天城レイが立っていた。


「話そう。

君の理想を。」


病院屋上。


夜風が二人の衣装を揺らす。


「君が進むなら、

俺が支える。」


レイは言った。


「……。」


「だが分かっているだろう。

これから相手にするのはAI制御の秩序だ。」


「分かってる。」


カイは拳を握った。


「それでも、

今のままじゃ助からない命が多すぎる。」


「……ならば。」


レイはかすかに笑った。


「榊に会う必要がある。」


その頃、議会作戦室。


榊マコトは背を向け、

窓の外の夜景を見ていた。


「ゼロレクイエムか……。」


通信が入る。


『榊さん、どうします?』


「決まっている。」


榊はゆっくり振り向き、

冷たい瞳を見せた。


「盤上を、最後まで支配する。」


議会の奥、

風見惣一郎は一人、

懐中時計を転がして笑った。


「面白い。

さて、誰が王になるか。」


その瞳は、

すべての駒を見下ろしていた。


夜の街。

カイはレイと並び歩き、

強く息を吸い込んだ。


(ここからだ。)


(ここから、

ゼロレクイエムを始める。)

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