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第2部 第11話 革命の前夜
議会ビルを出たカイは、
冷たい風に頬を叩かれた。
(王を倒す、か。)
風見惣一郎の言葉が、
脳裏にこびりついて離れない。
(そんな大それたこと、
俺ができるのか。)
だが、歩き出す足は止まらなかった。
その夜。
「動き出したな。」
屋上に佇む榊マコトは、
議会ビルの明かりを見下ろしていた。
背後から声がかかる。
「兄さん。」
天城レイだった。
「君が裏で支えていることくらい、
分かっている。」
「俺が支えるのは、
カイじゃない。」
榊は短く答えた。
「……。」
「俺が守りたいのは秩序だ。」
そう言い残し、榊は去っていった。
レイは一人立ち尽くし、
そっと夜空を見上げた。
(兄さん……。)
その頃、病院の医局。
「カイ先生、低ランク地区の患者が……!」
後輩医師が駆け込んでくる。
「今夜、街で暴動が起きるかもしれないって……。」
カイは立ち上がった。
(命が、間に合わない。)
彼は決意を胸に、白衣を翻した。
議会の奥。
風見惣一郎は、指先で懐中時計を転がしていた。
「さあ、盤上の駒たちよ。
ゼロレクイエムの影が、
ようやく世界を覆い始めた。」
老紳士の瞳に、かすかな興奮が宿った。




