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第9話 生臭い血の香り

〜〜〜


「最終試験開始」


「作戦開始♡」


………



 身体から光がなくなり、次に目を開いたとき。


「幸い周りに、人は居ないみたいだ」


「ここが、今日中戦うフィールドか」


 どこか懐かしい気持ちになった。


「サンダリアとあった森と少し似ている」


 森というものは何処でも変わらないのだな。


「呼んだか?小僧」


「サンダリアも懐かしい気持ちにならない?」


 共感を求めるように盗賊。


「これだから、経験の浅い人間は困る」


「我がいた森と比べて随分、質の低い森だ」


 身体を掻きながら喋る。


「森なんて何処でも一緒でしょ」


 静かに言ったつもりがサンダリアには聞こえていたらしい。


「こんな小僧に従うなんて、生涯の恥だ」


「言ってくれるね?」


 今にも喧嘩が起きそうなとき。


「キッショ…何一人で喋ってんだ?」


 森の奥から3人組が出てきた。


「おい、小僧」


「わかってる」


 身体の向きを3人に向ける。


「Bランクが3人で何をしてるんだ」


 付けている紋章は3人とも、銀色のBランクだった。


「何って、見て分からないか?」

「効率良く人を減らしてるんだよ」


 2つの紋章を手で弄びながら近づいてくる。


「ただ、ビビって3人で行動してるだけじゃないか」


 その言葉に、キレる3人組。


「賄賂でイキってんじゃねぇーぞ」

「八百長なんてしやがって」


 フェイに一気に飛びかかってくる。


「D級炎魔法、ファイアーボール」

「D級風魔法、風斬り」

「D級土魔法、岩石」


 3つ同時に魔法が放たれた。


「B級光魔法、マジックミラー」


 フェイの前に鏡のようなものが現れ。


「なぁ!!!!」


 3人の魔法を反射した。


「D級でも鏡にヒビが入ってる…まだまだ甘いな」


 その場で気を失った3人から紋章を奪い、自身のも含め合計6つ保持。


「ロティ達はうまくやってるだろうか?」


〜〜〜


 とある森の中


「なんだ……こいつは!」


 一人の少年が必死に走っていた。


「化け物だ!!!」


 木の根に引っかかり転ぶ。


「早く!!逃げな…い………と」


 彼の目の前には化け物と称した人物が立っていた。


「やだなぁ♡逃げないでよ…」


「手加減できなくなる♡♡」


 次の瞬間、グチャ、という音ともに少年は肉片へと化した。


「あぁ〜あ、もったいない♡」


〜〜〜


 砂浜周辺


「あのSランク様でも20人に囲まれたらどうしょうもないだろ?」


 一人を20人取り囲んでいた。


「ほ、本当に勝てるのか?」


 弱気な少年が足を震わしている。


「当たり前だろ?ここにいるのは平均Bランクだ、基本5倍以上差があるとまともに戦えない」


 5倍の人数がいれば魔法の数も5倍、ごく当たり前の摂理だ。


「やっちまぇ!」


 一人が掛け声をだすと皆が真ん中へ走る。


「…………」


 もちろん、真ん中にいる一人は絶体絶命の………はずだった。


 グシャ!という音ともに、数人が姿を消す。


「え?……おい!」


 透明化などと、言う能力を持っている情報は

入っていない。


 音源の場所は、砂が抉れていた。


「何をした!」


 グシャ!また同じ音がした。


「お、おい!」


 グシャ!その音ともに数人が消える。


「何が…起きてるんだ…」


 グシャ!周囲の砂が抉れる。


 あんなにいた仲間は、気づいた時には一人になっていた。


 コツコツ…


「…………」


 威圧のある足音、聞くだけで死を間近に感じる。


「た…助けてくれないか?」


 声が震えている…情けない、そう言われても良いただこの場から離れたい、その一心だ。


「な…なぁ!」


 グシャ!


 その場に立っていたのはただ一人。


 Sランクオーバー、エンロード。


〜〜〜


 1時間後


「随分と歩いたなぁ…あれ以来、人っ子一人みてないぞ?」


 変わらずフェイは、紋章を6つ持っていた。


「なんだが本当に前の森みたいだ」


 そんな事を話していたとき。


「やぁ〜♡」


 ♡の仮面を被った、全身黒色のローブに包まれた謎の人物が突然現れた。


「誰だ…?」


 こんな格好、嫌でも目立つはずなのに記憶にない。


「おっと…自己紹介がまだかな♡」


「…血の在り処…これで分かるかな♡?」


 聞き覚えのない名前に困惑する。


「小僧!!今すぐに逃げろ!!」


 突然のことであたふたしていると。


「早く!!何をボケっとしている!!」


 あまりの気迫に全力で走る。


「おい!サンダリア、様子が変だぞ!」


「サンダリア?」


 返事がないサンダリア、そっとポケットの中を見ると。


「震えているの?」


 ポケットの中で蹲ったサンダリアがいた。


「やつ…やつだけは絶対に駄目だ!!」


「奴の格好、奴の仮面、そして名前、全てが、合致した!!」


「あれは、【処】だ!」


 聞いたこと無い言葉に聞き返す。


「なんだよ!処って!」


 そんな事を叫んだとき。


「教えてあげようか♡?」


 気づいたときには、目の前にいた。


「少しは名を馳せたと思ったのに♡、まだまだダネ♡」


 何故か少し残念そうにする目の前の人物。


「そうか!あれがあった…」


 不意にランカー証を取り出し相手を見る。


個体名 ??? 別称【血の在り処】

種族  不明

ランク ✕


世界最重要指名手配組織【処】脅威度S級


情報不足


「脅威度Sランク!?」


※脅威度


脅威度、E〜S級に分けられた世界にとってどれだけの脅威かを表す犯罪者・グループの指標。


E級 犯罪者予備 要警戒


D級 一般犯罪者 見つけ次第、捕縛


C級 極悪犯罪者 見つけ次第、殺害


B級 指名手配犯 

その国を危機にさらす人物・組織

見つけ次第、当事国は全勢力を使い、排除。


A級 最重要指名手配犯

世界を危険にさらす可能性がある人物・組織

見つけ次第、当事国、隣接国は、全勢力を使い、排除。


S級 処

現在進行形で世界を危機にさらしている組織。 

見つけ次第、世界全勢力を使い排除、抹消を世界義務としてされている。


「脅威度?そんなのもあったねぇ…」


 仮面をしていて表情が読めない…


「あまり、やつを刺激するな…」


 サンダリアのビビり様からどれだけ危険かが分かる。


「何が目的だ、今はサミット学園の試験中だ」


「あぁもちろん、知ってるよ?」


「だから来たんだよ♡」


 何故か、震えが止まらない全身の血液が、勝手に震えている。


「今、処は本格的に動き出してる!」


「だから、大量に人がいるんだ!それも強いね♡」


 なんとなく話の全貌が読めてきた。


「サミット学園の子供を拐えば、確実に強い人材が手に入るということか…」


 血の在り処は、僕に指をさす。


「そういう事♡物わかりが良いねぇ♡」


 となると、僕も例外じゃない。


「ならもう分かってるよね?ここで処の仲間になるか、ここで死ぬか♡」


 これは、命令だ、こちら側に選択権はない。


「犯罪者になれって言ってるのか…」


「やだなぁ、犯罪者なんて♡」


「ただこの世界が気に食わないだけだよ」


 声色が明らかに変わる。


「おかしいな、この世界は君ほど強ければ不自由が無いはずだけどね?」


 明らかに目の前にいるやつは、強者側、淘汰する側だ。


「君は、この世界を不思議に思ったことはないかい?」


 血の在り処は、問いかけてくる。


「誰が決めたランク?誰が決めた基準?誰が決めた格差?そんなこと皆考えず、ただの一般常識として扱ってる…」


 確かに、言われてみれば不思議だ。


「そもそもランクとは何かな?何故Sは、凄いとされて、Gは弱者として虐げられているんだ?」


 ランク……あまりにも常識すぎて考えたこともなかった。


「処はねぇ♡そんな弱者が虐げられる世界を平等にするために活動してるんだ♡」


 頭が痛い、こいつと話していると常識を疑いたくなる。


「何が平等だ、お前も弱者を今淘汰している!」


 奴の言ってることは、矛盾している。


「弱者?君は本当の弱者を知らないみたいだネ♡」


 ぐっと、顔を近づけてくる。


「ここにいる時点で君は弱者を知らない♡」


 なんだこいつは、話していると頭がおかしくなりそうだ。


「それで君の答えをまだ聞いてないね♡」


「今の話を聞いて、少しでも不思議に思ったこたがあるなら、処へ来ないかい♡?」


 どれだけこの世界が不思議でも犯罪者は、明白に悪だと分かる。


 そしてそんな悪になるつもりはない。


「お断りだ…」


 その刹那、血の在り処の後ろから赤色の靄が出る。


 身体が反射的に逃げようとする。


「おかしいな♡?」


「断るなんて選択肢に入れてないよ♡?」


 その靄はそっと僕の頬をなぞる。


「ねぇ…もう一度聞くよ?」


「処へ来ないかい♡?」


 全身の血液を、実感するほどの心拍数。


「いやだ!」


 血の在り処は、そっと僕から離れる。


「ふぅ〜ん、君が始めてたこんなにも意思が硬いなんて♡」


「逆に興味が湧いてきたねぇ♡君は何が何でも処へ入ってもらう♡」


「それにそれも♡」


 そう言って僕のポケットを指さす。


「君は少し反抗期みたいだね♡」


「体で分かってもらわないと♡」


 そう言い、血の在り処の右手から赤色の液体が集まる。


「B級血魔法、血弾♡」


 赤色の鉄臭い液体が高速で飛んでくる。


「B級氷魔法、氷壁!」


 氷の壁を生成するが……。


「くっ!」


 その血は、氷を貫通し、間一髪避ける。


「これで分かった♡?君は僕に勝てない♡」


 同じB級でも質が違う…。


「まだだ!」


 右手に氷を纏う。


「良いねぇ♡」


「C級氷魔法、凍傷Ⅱ!」


 血の在り処の手が凍り始める。


「う〜ん♡いい感じだぁ♡」


 満面の笑みを浮かべる血の在り処。


「C級光魔法、光線」


 その凍傷の中から光を出す。


「おぉ♡眩しい♡」


 その光エネルギーはやがて高熱となり、血の在り処の腕を、引きちぎる。


「あぁ……♡」


 右手がなくなったのに余裕そうな血の在り処に、不気味さを感じる。


「もう終わり♡?」


 次の瞬間、腕の形をした血が現れ、再生する。


「なんだそれは!?」


 まさに神業、なくなったはずの腕がもとに戻った。


「うっ……」


 何故か立ち眩みがフェイを襲う。


「大丈夫かい♡しっかり寝ないと♡」


「B級血魔法、血流」


 大量の血液が、フェイを襲う。


「B級氷魔法、冬至」


 すぐさま凍らせ対応する。


「やるねぇ♡」


 立ち眩みがひどくなる。


「な、何をした…」


 明らかに、やつの仕業だり


「何って、君が貧血を起こしてるだけダヨ♡」


 まさか…


「僕の血を使ってるのか?」


 血の在り処は、ぺろっと血を舐める


「大正解♡」


 なんだそれは…どうしょうもないじゃないか。


「だけど使ったのは、この腕♡」


 再生に使った血液は、僕のだったのか。


 貧血を起こし、その場で座り込む。


「あぁ〜あ…可哀想♡」


 駄目だ…勝てるわけ無い。


「ねぇ…最後のチャンス」


「処へ来ない?」


 本当に命の危機を感じる。


「…………」


 悩んでる暇はあるのか…本当に殺されてしまう。


「ねぇ…僕、気が短いんだけど?」


 冷や汗が止まらない。


「っ……だ…」


「なんて♡?」


「っや……だ……」


「もっと大きな声で!」


「いやだ!!!!」


 その瞬間空気が変わる。


「あぁそう…もういいや」


 そう言い腕を、僕に向ける。


「しつこいと萎えるんだよね、バイバイ」


 血の在り処の手に血が、たまっていく。


 このまま死ぬのか?


 何もできずに?

 

 皆の無念は?誰が晴らすんだ?


 無性に腹が立つ。


 何でこんな目に遭ってるんだ?


 故郷が消え、周りからは悪く言われ、今となっては理不尽を押し付けられている。


 こんな世界に腹が立つ。


 理不尽だ…何もかも…。


 目の前の血も、目の前の人物も、この世界も。


 全部、僕の言うことを聞け。


…………


「じゃあね♡」


 血がフェイをめがけ飛んでくる。


 が、その血は止まる。


「ん?どうしたんだぁ♡」


「…………っ…」


「なんて♡?」


 そう耳を傾けた瞬間。


 その血は血の在り処の首を貫通した。


「え?嘘……」


 頭が転げ落ちる。


「ねぇ?君の仕業?」


 だがまた、再生する。


「………っ……」


 勝手に血の在り処の首が360°回る。


「あれ?何でだ?」


 また再生する。


「………っ……」


 周囲に赤色のノイズが現れる。


「あっはは♡!!面白くなってきた!」


「A級血魔法、血剣!」


 血の在り処の周囲から赤色の剣が大量に、出てくる。


「発射♡!」


 高速で飛んでくるが、ノイズに阻まれる。


 そして、血剣が血の在り処をめがけ串刺しにする。


「凄い♡!!凄い♡!!!」


 大量の剣が刺さり血を吐きながら叫ぶ。


「こんなの見たこと無い♡!!」


 初めての感覚に興奮を覚える。


「不平等だ……」


 フェイは、俯きながら声を発する。


「君♡…いいねぇ…」


「次はどんなのを見せてくれるのか!!」


 その刹那、血の在り処の身体が破裂する。


 が、また再生する。


「あは〜♡初めての死に方!」


「でもわかったよ?君の力♡」


「君の力は、ズバリ支配♡」


「僕の魔法がまるで操られたようになってた♡」


 淡々と分析する血の在り処。


「全てが、理不尽だ…」


 フェイが頭を上げたときその違和感に気付く。


「君の瞳…そんな色だったかなぁ♡?」


「まるで僕の血みたく赤色だぁ♡!!」


 その刹那また、破裂する。


 また再生する。


「これは…空気を支配して完全な真空状態を作ってるのかな?」


 何度も死んでるはずが、全く動じていない。


「どうせ…意味ない…」


 フェイの表情は暗いままだ。


「ただ、もう対策は考えてる♡」


 そう言い接近してくる。


 すぐさま、破裂する


 また再生する。


 これの繰り返しだ。


 だが一歩ずつ着実と近づいてくる。


「ほらぁ…もうここだ♡」


 約20回ほど死んだ後、フェイの目の前まで来ていた。


「もう…どうでもいい」


 その掛け声と同時に周囲が赤色のノイズに、包まれる。


「おっと…♡」


 次の瞬間、周囲全ての物質が破裂し、砂埃が立つ。


「派手だねぇ…♡」


 まだ血の在り処は、生きている。


 が、フェイはその場で倒れ込んでいた。


「力を使い果たしたか…血を吸いすぎか♡?」


 血の在り処は、ゆっくり近づく。


「ここで殺すには惜しいけど…生かすのは相当危険だ♡ごめんねぇ♡」


「僕が強くて♡」


 その手でフェイに触れようとしたとき。


 とてつもない衝撃が血の在り処を襲う。


「まだ…隠していたなんて♡」


 血の在り処は、遠くに引き剥がされた。


 すると、フェイ?は立ちあがる。


「その薄汚い手でフェイ様を触れようとしましたね?」


 その雰囲気の違いで血の在り処の口調が変わる。


「君…だれだい?あいにく、君は全く興味がそそられない」


 声のトーンが低くなる。


「そんな事を言わないで、さぁ」


「踊りましょう、安心してください」


「私が引率しましょう……」


「強引は嫌いダネ」


 黒色の瞳が、紋章とともに輝く。

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