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第7話 決闘

〜〜〜


 フェイの結果に真っ先に反応を示したのはアンデリオだった。


「田舎者は、魔力すら無いのか!?」


 その言葉に合わせるように、笑い声が飛び交う。


「まさか最初の試験すら突破出来ないとは…」

「記念受験おめでとう」


 アンデリオは、ニコニコしながら煽る。


 フェイは、静かにもといた場所に戻る。


「そ…その大丈夫だよ、何か間違いがあったんだ!」


 ロディがフォローするが、フェイには聞こえてない。


「だ、大丈夫?」


 あまりにも無口なフェイに、不安を積もらせる。


「…………」


 僕は、ランカーになれなかったのか?僕は、なる資格がないのか?


 村長への謝罪と、自分の不甲斐なさで自暴自棄になっていた。


 試験会場の隅でSランクの二人が静かに話している。


「ねぇ…気づいてる?」


 フーリアは、狐の仮面を被っているジンに話しかける。


 ジンはコクリと頷く。


「魔力量、✕なんて見たこと無い」

「もちろん、0なら数え切れないほど見てきたけどね」


〜〜〜


学園室


「今回の1次試験、合格者一覧です」


 学園長の秘書らしき女性が書類を出しながら話す。


「おや……少し訂正があるな」


 秘書は首をかしげる。


「訂正?間違いはないはずですが?」


 そう言って資料を遡ろうとしたとき。


「さて時間だ、期待の子供たちとご対面しよう」


〜〜〜


 会場の明かりが消え、また舞台に照明が集まる。


 そこには、風格のある男が立っていた。


「まずは、ご苦労…良い結果が出た者も、出なかった者も」


「私の名前は、バビロン=イゴール」

「学園長という者だ」


 周りの生徒の姿勢が正しくなる。


「早速だが、魔力量が規定より少ない、つまりランク無しに判定された者は、あっちの扉から退出願おう」


 すると、重い扉が開かれた。


「もちろん、合格者は、こちら側で確認済みだ不正は出来ない」


 その言葉と同時に、不合格者達は扉へ進み始める。


「フェイさん………」


 ロディが鼻水を垂らしながら泣いている。


 フェイも、不合格者の一人だ、直ちに退出しなければならない。


「ぼ、僕はこんな結果認めません!!」


 震える声で叫ぶロディの肩をフェイは叩く。


「応援してるよ…」


 本当は、悔しくてたまらないそんな感情を押し殺している。


 フェイが扉の方へ向かおうとしたとき。


「おや?君は不合格じゃないだろ?」


 学園長は、フェイに向かって話す。


「私は、ランク無しが不合格だと言ったんだ」

「君はランク✕だろう?」


 その言葉に驚いたのはフェイではなく、アンデリオだった。


「学園長!そいつは魔力量が無いんだ!」

「そんなやつ次の試験を受ける価値がない!」


 周りが便乗し、そうだ!そうだ!と言う。


 一人でも多くライバルを落としたい、彼らからしたら得しか無いのだ。


「誰が何と言おうとも、試験内容はランク無しのみ、不合格というものだ」

「彼は不合格じゃない、だか合格でもない」

「だから彼をランク不明と判定する」


 周りがざわつく。


「学園長!」


 アンデリオが抗議しようとしたとき。


「私の言う事が気に入らないのか?」


 学園長が放つ威圧に誰も喋らなくなる。


「誰も文句がないみたいだから、話を続けようか」


 フェイは、もといた場所に戻される。


「フェイさぁん……」


 ロディが抱きついてきた。


「よかったぁ〜」


 服がロディの鼻水と、涙で汚れる。


「ひとまずは、助かった……」


 ほっとして少し気が緩む。


「さぁ…次の試験の話をしよう」


 バビロンは、話を切り替える。


「2次試験は、一対一のタイマンをしてもらう」

「ルールはシンプル、対戦に勝ち一定の点数を稼いだ者が合格だ」


 そう言って、巨大な黄色い魔石が舞台に現れる。


「この魔石は痛みの身代わりだ、本人の魔力量を元に強度が上がり割れにくくなる、原則割れた者の負けだ」

「対戦は申請式にしてもらう、申請された者は拒否不可、申請できる回数は3回だ」

「戦う相手は、好きに決めてもらっても良いのだか…」

「戦う相手によって点数が決まる」


 そう言って表をスクリーンに映す。


Gランク 1点 Fランク 2点 Eランク 3点


Dランク 4点 Cランク 6点 Bランク 8点


Aランク 10点 Sランク 20点


「以下のとおりだ、そして規定の点数とは、自分のランクの点数のことだ」

「つまり、Eランクは、3点、Aランクは、10点獲得すれば合格だ」

「また、自分の点数以上、点数を獲得した場合ランクの昇格が発生する」


 自分のランクに納得いっていなかった周りの生徒が鼓舞される。


「学園長!奴はどうするんだ」


 アンデリオがフェイを指さす。


「奴は、ランク不明なんだろ?」


 少し皮肉交じりに発言する。


 すると、学園長は口を開く。


「彼は………」

「50点だ」


 周りの生徒がざわつき、アンデリオは笑みを浮かべる。


 学園長が指を鳴らすと、100カ所程、決闘場が出ると同時に胸の紋章にランクが表示された。


「制限時間は3時間」


「それでは2次試験、開始」


〜〜〜


「フ、フェイさん!どうするですか!?」


 フェイ以上にロディが焦っていた。


「僕はGランクだから1点でいいけど」

「フェイさんは、50点も……」


 確かに、50点集めるのも大変だが、自分が畏怖しているのは、そこじゃない。


「やぁ……フェイ君だっけ?私と戦わない?」


 彼女は、Sランクのフリーアだ、そしてこれが懸念していたことだ。


「私達からした貴方は絶世の鴨」


 彼女の後ろを見ると、僕と戦いたい人で溢れていた。


「流石にこの量戦うのは骨が折れるでしょ?」

「だからSランクである、私に勝って戦意喪失させるべき……そうじゃない?」


 彼女の言っていることは至って合理的なことだ、Sランクの彼女に勝つこと以外は。


「さぁ…拒否は出来ないはずよね?、さっさとやりましょう」


「手加減してくれると助かる……」


 そう言い決闘場に立つ。


 周りには対戦を申し込みたい、生徒が観戦している。


「あいつ、自殺行為か?」

「相手はSランクだろ?無理無理!」

「殺すなよ…俺達が困るからな…」


 決戦場から黄色の魔石が出てきた。


「これが割れると負けか…」


 審判らしき人が現れる腕を上げる。


「実戦試験…開始」


 審判が腕を下ろした瞬間。


「よそ見してる場合かしら?」


「B級炎魔法、ファイアーアロー」


 炎の形をした矢が飛んでくる。


「ん?」


 違和感を感じる。


 容易く、その矢を避ける。


「やっぱり…私の予想は間違ってなかった!」


 攻撃を避けられたのに、笑みを浮かべるフリーア。


「これはどう?」

「B級風魔法、風斬」


 8つほどの風の刃がフェイを襲う。


「氷壁」


 フェイは氷の壁を出し守る。


「あいつ、魔力がないんじゃ?」

「あの大きさ、B級じゃないか?」


 観戦している生徒が異変に気づく。


「守ってばっかじゃない!」

 

 フリーアは、笑みを浮かべ風斬を連発する。


「…………」


 こいつ、僕のことを舐めているのか?

 明らかに手を抜いている彼女に嫌悪感を抱く。


「こっちは全力で行かせてもらう…」


「B級氷魔法、氷塊」


 決戦場を覆い隠すような氷が、真上に顕現する。


「なんだ!あれ!」

「フリーアの魔法か?」


 観戦者が盛り上がっていると、対照的にフリーアは、唖然としていた。


「ほぉ〜」

「……これは予想外」


 彼女の笑みが、少しずつなくなっていく。


「B級光魔法、光線」


 追い打ちをかけるように、フェイは魔法を出す。


「まさか……」


 フェイが光を貯めた瞬間。


「降参よ!」


 フリーアは、両手を挙げた。


 観戦側がどよめいている。


「なんでだ?」

「なんでフリーアが降参するんだ!」

「八百長だ!」


 戸惑いが苛立ちに変わり罵詈雑言が発せられる。


 ここにいる、生徒たちは9割が貴族だ、決闘場での観戦に慣れているみたいだ。


「…………」


 不完全燃焼だ、まるで相手にされてない。


 審判が中央に立つ。


「勝者、フェイ=アリアス」


〜〜〜


 一応Sランクから勝利したからか、対戦を申し込む連中は一時的に去っていた。


「やりましたね!おめでとうございます!」


 ロディは純粋に喜んでいるみたいだ。


「ありがとう…素直に受け取っておくよ」


 ロディが胸の紋章を見る。


「すごい技術ですよね……これ」


 紋章を見ると、20点と記されていた。


「これは魔法じゃないのか?」


「いえ、これは歴とした技術ですよ」


 魔法と技術の違いがわからないのも、田舎者だからか………いや周りに流されるな。


「いや〜負けたよ!」


 決闘場の反対側から帽子を押さえてフリーアが走ってきた。


「何が目的だ?」


 低い声色で、問いただす。


「怖いなぁ、目的も何も普通に点数が欲しかっただけだよ」


 彼女の表情からは、何も読み取れない。


「何故降参したんだ?」


「今、周りからは八百長、裏金だと、悪い噂が広まりつつある」


「僕には元々汚名がついていたが、君は本当によかったのか?」


 フリーアは、少し頭を傾ける。


「奴らの評価なんてどうでもよくない?」


 驚くようなことを言う。


 奴らは腐っても貴族だ、印象が悪くなると今後に悪影響なはず。


「それに、私も……ね?」


 彼女の紋章は黒色だった。


「Sランクで、隠れていたけど私も田舎者」


「貴方が目立ってくれているおかげで、助かっている人もいるんだよ?」


 その言葉で少し救われた気がした。


「次は私の番だよね、質問していいかな?」


「あなた、その魔法どこで覚えたの?」


 明らかに彼女の目つきが変わる。


「どこで?故郷の村長に教わったんだ」


 彼女は、帽子を押さえ考え込む。


「故郷……あなた、故郷の名前は?」


「…………っ」


 会話している間を割る、聞き慣れた声がした。


「おいおい!!」


「田舎者の次は、八百長野郎ってか?」


 一見笑っているように見えるが、目の奥は笑っていない。


「俺はなぁ、悪目立ちでも俺より目立ってんのは許せねぇんだわ」


「この試験の主役は俺だ、お前みたいなやつに邪魔されちゃ困るんだよ」


「(空気ぐらい読めよな……)」


 すると、フリーアからボソッと呟く声がした。


「なんか言ったか?」


「いやいや!滅相もない!」


 アンデリオは、フリーアの紋章を見る。


「へっ!田舎者同士、仲良く戦いごっこしてたみたいだな」


「田舎者同士にも、賄賂を渡す側の貧乏人と渡されるド貧乏人がいるんだなぁ、勉強になったよ」


 彼女に対して豹変する。


「Sランクだからって調子のんなよ」


 彼女は、顔色一つ変えない。


「何か言ったらどうなんだ?貧乏人はお金を入れないと喋らない玩具と一緒なのか!?」


 その会話を聞いていた、生徒が吹き出す。


「コイン入れはどこにあるんだ!?ここか?」


 そう言って胸元を触ろうとする。


「おい……いい加減にしないか」


 アンデリオの腕を掴み、上に挙げる。


「その手ぇ離せよ…………なぁ!」


 力ずくで振りほどく。


「殴り合いはここじゃなくてあそこでやろうぜ?」


 アンデリオが指す方には、決闘場があった。


「お前たちが恥を晒してる間、俺は2試合終わらしてんだ」


 彼の金の紋章には、20点の表記がされていた。


「逃げんなよ?周りも見てんだからよ」


 気がつくと周りには、コソコソ話をする生徒に囲まれていた。


「あの2人なに?」

「田舎者同士、意気投合かしら?」

「貧乏が移るわよ!」


 見たところB、Aランクのほとんどが上級貴族のようだ。


「逃げても、負けても、お前は詰んでんだよ」


 アンデリオが先に決闘場に向かった。


「なんだよ!あいつ!」


 顔を燃やされたトラウマか、後ろに隠れていたロディが怒る。


「ごめんね、私のせいで…」


 フリーアは、申し訳なさそうにしている。


「いいよ、あいつとはいつか戦うはずだったから」


 そう言い、アンデリオが向かった決闘場に、身体を向ける。


「応援してるよ!」

「頑張ってください、フェイさん!」


 彼らの言葉に、手を挙げ返事する。


〜〜〜


 フリーアが壁にもたれかかるとジンが近づいてきた。


「ん?なんだい?」


 ジンは、首をかしげる。


「何で、高系統の魔法を使わなかったのかって?」


 ジンは、大きく首を振る。


「そら、ダイヤの原石を最初から全力で削る人なんて居ないでしょ?」


「傷がつかないように、ゆっくり…ゆっくり、周りの石を削るんだよ、じゃないと」


「ダイヤの価値が下がっちゃう」


 彼女の、顔にジンは怖気づく。


「おい!そこの女!」


 銀の紋章、Aランクの男が威圧してきた。


「お前、あの八百長野郎の女だろ?」


「俺と勝負しろよ、鴨が!」


 さっきの試合を観ていただろう男が喧嘩を売る。


「はぁ〜面倒だなぁ、まぁ合格点も稼ぎたいし」


 そっと壁から離れる。


「周りの石は不要だからね」


 彼女の右手には氷が纏わりついていた。


〜〜〜


 決闘場


 フェイとアンデリオが決闘場に立っていた。


 一方はニヤつき、もう一方は無表情だった。


 審判が中央に立つ、周りの観戦者がわいわいと騒いでいた。


「両者、準備はいいか?」


 アンデリオは、審判を睨む。


「早くしろよ、無能審判が!」


 フェイは黙って頷く。


「実戦試験、開始」


 今後の運命を左右する、火蓋が切られた。

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