第3話 ランカーの性
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朝起きると既に村長は、外で待っていた。
(あの夢は何だったんだ?)
「……………」
(違和感を覚えるほどの感覚…本当に夢だったのか?)
「……………聞い……」
(駄目だ……覚え出せない)
「フェイ!?」
フェイの肩を強く揺らす。
「どうしたんだ?具合でも悪いのか?」
心配そうにこちらを見る。
「いえ…少し考え事を…」
夢の話をするほど今は余裕がない。
「ならいいんだが…」
「あまり追い込み過ぎるなよ」
村長は、僕に何を求めてるんだろう?無理難題を押し付けながら優しさも出している。
村長は水晶玉をフェイに渡す。
「これは魔力量測定装置だ」
「魔力量は多くあればあるほど、長時間の魔法の使用、魔法の最大出力上昇、魔法の複数同時展開など、あるに越したことないものだ。」
青白く輝く水晶玉を見つめる。
「百を超えれば、岩を変え、千を超えれば、山を変え、万を超えれば、地図を変えれる」
「でも心配しなくてもいい、鍛錬を積めば魔力量は伸びる」
魔力量、どれほどあれば通用するのだろう、学園に、世界に、そしてあの隕石に…。
あの時、僕の魔法で隕石を壊せたら、全ては変わっていたのかもしれない。
「さぁ、触ってみてくれ」
その言葉に前押しされ水晶玉に触る。
青白い水晶玉に、ヒビが入り出す。やがてそのヒビは全体へと広がりついには……
「………血は争えないな」
水晶玉は粉々に砕け散り、残った破片を村長は拾う。
「大丈夫ですか!?やり方を間違えたみたいです!」
明らかな不作動、やり方を間違えたか、水晶玉に問題があったか、はたまたフェイが問題か。
「あぁ、大丈夫だ」
「測定はまた今度にしよう」
話を逸らすように修行が始まった。
「魔法には組み合わせがある」
「例えば…一度氷魔法を出してくれ」
返答より先に腕が動いた。
「いい大きさだ、少し離れていなさい」
村長は、手のひらサイズの氷に手を伸ばす。
「E級光魔法、ライトニング」
光速ともいえるその魔法が氷に当たると。
「光の数が増えた!?」
一本だったはずの光線が数十本の光線へと変わっていた。
「これは氷の反射を利用した、合体魔法」
「C級合体魔法、ライトレイン」
「この合体魔法はメジャーだが、魔法は無限の組み合わせがある、まだ知らぬ合体魔法がこの世界にはある」
魔法の合体、心の何処かでワクワクしている自分がいた。
「ただ合体魔法には、注意点がある」
「合体する魔法は同じ等級じゃないといけない」
「試しにフェイ、もう一回氷を出してみてくれ」
言われるがままに氷を出す。
「おそらく、その氷はE級魔法だろう」
「そこに強い光魔法を当てる」
さっきより少し太い光線が氷に当たると、氷は光を反射せずに砕け散った。
「なるほど、片方が強いともう片方は負荷に耐えられないんですね」
「そうだ、つまり高系統だけを学ぶより二つ以上向上させたほうがいいんだ」
その言葉を終にまた魔法の修行を始める。
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一ヶ月後
「中々上達したんじゃないか?」
岩同等の氷を宙に浮かせている僕に話しかけてくる。
「氷すら出せなかった僕がこんなにも成長するなんて思いませんでした」
「フェイの努力の賜物だ、魔法に慣れてきたんじゃないか」
以前よりも身体から魔力というものが感じれるようになっていた。
「これが魔法ですか……もし修行せずに旅に出ていたら今頃……」
「挫折か死んでいただろうな!」
笑顔で放つその言葉に苦笑いしかできなかった。
「まぁ冗談はこれほどにして…」
「今フェイに圧倒的に足りないのは経験だ」
「そこで、あの森で魔物を10体倒してこい」
村長が指をさす方向には村を囲っていた森が広がっていた。
「魔物?本当にいるんですか?」
「あぁ魔物は、最弱の種族と言われているが好戦的で極めて危険だ」
村長は肩に下げるカバンを渡す。
「この中にある程度の生活用具は入っている、魔物を倒すまで帰ってくることは許さない」
カバンの中には食料や水、形見の剣、ランカー証が入っていた。
「自分、魔物を判別できませんよ」
この世界には多種多様な生物が生息しているため魔物を判別できないと一緒森にいることになる。
「そこでランカー証を使うんだ」
「ランカー証?」
ランカー証を手に持つ。
「ランカー証の右上を触ってみてくれ」
右上には少しの出っ張りがあった。
その出っ張りを押した、次の瞬間。
「!!!」
視界が薄青色に染まる。
「その状態で向こうにいる青色の牛をじっと見つめろ」
言われるがままに見ると。
個体名 精霊牛
種族 精霊
ランク E
高貴な草を食べて、育った青白い牛、神聖な存在であるため信仰している宗教も存在する。
「これはいったい!?」
今、自分の視覚で起きている摩訶不思議な現象に戸惑う。
「これがランカーだけの特権、鑑定だ」
「ランカーたる者、ランクを確認できないとだめだろ?」
「だからそのランカー証に搭載されている、鑑定機能が存在するんだ!」
やけにテンションが高い村長をじっと見つめる。
こっそり村長を鑑定しようか…
個体名 ボルド
種族 人間
ランク
「ん?」
ランク?故障でもしたのか?
「もしかして、俺のランクを見たのか?」
ギクゥ!!
まさか心を読む能力でもあるのか…
「どうだ?感想は?」
「不具合で……」
村長は指を振り答える。
「それは不具合なんかじゃなくて、俺はランクを測れない体質なだけだ」
「ランクを測れない体質?」
村長は空を見上げながら話し出す。
「ああ、正式名はランク阻害体質、世界に数十人しか居ない、ランクを測ることも測られることも出来ない病みたいなもんだ」
たしかに、よく考えたらいつも村長はおおよそでしか、魔法の等級を言っていなかった。
「この体質のせいでランカーにはなれなかった、元々お前のお父さんと旅に出る予定だっただがな」
「僕のお父さんですか!?」
「おっと、言っちゃいけない約束だったっけ」
わざとらしく喋る村長は少し笑顔を浮かべていた。
「話がズレたな、さぁ森に…」
「待ってください、もっと話を!」
「帰ってからのお楽しみだ」
手をこちらに向ける。
「そうだ、俺が飛ばしてやる!」
「えっ!ちょまt …」
「B級光魔法、ワープ」
目の前が光りに包まれその眩しさから目を閉じる。
次に目を開けたとき、そこは。
「森の中………」
草木が生い茂った、森の中、気がつくと虎のような生物に囲まれていた。
「魔獣!?」
「鑑定!」
個体名 サンダータイガー
種族 魔獣
ランク E
群れを成し、自身より弱者を狩る、雷模様の金毛が特徴。
「見たところ3体か……」
心拍数が上がり、全身から熱を感じる、弱肉強食、もう己は生態系の一部なのだ。
興奮冷めぬまま、右手には剣を取り、左手には氷を纏う。
Eランク…されど死は隣り合わせ、これがランカー!。
「やろうか!」
少しの笑みと汗が溢れ出る、生死をかけた戦いが始まった。