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第2話 魔法と能力

〜〜〜


 村長が何かを決心した様子でこちらを見る。


「私が鍛えよう……」

「君の今の実力だとまだ外の世界へと旅出させる勇気がない」

「これ以上大切な人を失うわけにはいかない…」


 その顔からは悲壮感が伝わってきた。


「僕は、守られてばかりの人生を変えたいです」 


 村長は椅子から立ち上がり扉の方へと向かった。


「早速、始めようか…優しくはできんぞ…」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


サクチュン周辺野原


「まず魔法を理解しているか?」


 当たり前の事を聞く村長に不思議そうに答える。


「ええ、こういうものですよね」


 そう言い右手から炎をだす、唯一使える炎魔法だ。


「私が言いたいのは魔法の理解だ」

「魔法は、人類に進化と発展をもたらした物」


 その刹那、村長の右手から氷柱が顔面をめがけて飛び、当たる直前で停止した。


「っ………」


 あまりの出来事に尻もちをついてしまう。


「だが、それと同時にあまりにも簡易で脅威になる武器ともなる」

「S級ランカーから放たれる魔法の数々は国を更地にするほどの影響力を与える」

「実際に魔法による被害が原因で破滅を迎えた国は星の数ほど存在する」


 やがてその氷柱は溶けて無くなり、水滴だけが足元を濡らした。


「君はこれを正しく扱えるか?」


 少なくとも、見せびらかすように炎を出した今の僕では扱えるものではない。


 でも、たとえこの魔法が誰かを不幸にすることになっても、それが最短の道ならば…


「正しく扱えるかは、わかりません」

「ただ、僕は良と悪を間違えるほど愚かではない」

「僕の考える良は、きっと正しいと誓えます」


 村長はその答えに満足したのか、次の話を言い始める。


「そうか…」

「魔法は、基本的に7系統に分かれている」


 炎、水、土、風、光、氷、その他


「産まれたときから、高系統は決まっている」


※高系統

他の系統より生まれつき、成長が早く、限界が見えない得意な系統のこと。


「まずは高系統の発見からだ」


 村長はポケットから白色の指輪を取り出した。


「これはつけた者の高系統が色にしてでる魔導具だ」


 そう言って僕に指輪を渡す。


「さぁ、つけてみてくれ」


 指輪を指にはめる、その瞬時、指輪から光が放たれた。


「こ……これは…」


 フェイがはめた指輪は、虹色に輝きその光線は野原の緑を鮮やかに色付けた。


「虹色か…虹色は全ての系統が高系統」

「だが、全てを使えるということは器用貧乏になりやすい」


 少し顔を引きずっている村長を心配する。


「虹色は良いんですか?」

「良いとも言えるが、悪いとも言える」


 あまり状況を理解できないまま指輪を戻された。


「次は能力について話そう」


 村長は右手に氷柱を出す。


「魔法は誰にでも共通に使える物だか、能力は個々が持っている基本的には1つだけの強大な力だ」

「私の能力は、魔法分解」


 氷柱が光の粉へと変化する。


「魔法の実質的な無効化それが私の能力、能力は完全に生まれつきだ」

「何の能力を身に着けているかを判別する魔導具は今は発明されていない」


 村長は次のことを断定する。


「能力は周りに知られてはいけない、そして自分自身の能力を知らないのはそれ以前の問題」

「フェイ、君は能力を見つけることが今後の修行の目標だ」


 自分自身の能力、今まで生きてきて感じたこともない力、本当にあるかどうかすら疑ってしまう。


「フェイ、1つ約束しないか?」

「約束ですか?」


 村長は、ゆっくりとその場に座り話す。


「後半年後、フェイには学園に行ってもらう」


 予想外の内容に戸惑う。


「学園!?どうして?僕はランカーにならないと!」


 すると、氷で作られた椅子が後ろに出来ていた。


「落ち着いて聞いてくれ」


 大人しく椅子に座ると、何故か氷なのに暖かかった。


「もちろん、ランカーになるための学園だ」

「それも最高峰の学園【サミット学園】」


 外の世界について無知な僕でも知っている、最高峰の設備、最高峰の教授、最高峰の人材、その全てが合わさってできた最高峰の学園だ。


「本当に僕がサミット学園に?」

「それは、君の頑張り次第だ」

「結局その約束は?」


 氷の椅子に水滴が付き始める。


「学園は入学試験がある、もし不合格だったら、ランカーへの道は諦めてくれないか」


 怒りがこみ上げてくる、村長が何を言っているのか理解に苦しむ。


「どういうことですか!?村長は応援してくれて無いんですか?」

「それに半年なんて時間がありませんよ!!」


 村長の言っていることは理不尽で無茶苦茶だ、世界一の学園に半年で受からないとランカーになれない、そう言っているのだ。


「そうだな…その通りだ、だが」

「そこにすら受からないのなら、君の目標は達成できるのか?」


 僕の目標、それはランキング1位になり村の皆をもとに戻す。


 実際、村長の言っていることは的を得ている、ここで挫けるぐらいなら1位にはなれない、ランキング1位とはそれほど険しい道だ。


「約束してくれるか?」


 氷の椅子が溶け始めた。


 これは決断の時かもしれない、落ちて別の道を探すか、受かりこの道を突き進むか。


 こんな約束すらできないのなら、きっと僕の夢は叶わない、第一の壁を乗り越えるときだ。


 数分の沈黙の後、言葉を発する。


「約束しましょう…ただ受かったときもう二度と止めないでください」


「あぁ約束する、これは私のケジメでもある」


 その言葉を最後にまた修行の話へと戻る。


 立ち上がったとき、氷の椅子はもう溶け切っていた。


「フェイには、私の高系統でもある氷魔法を習得してもらう」

「魔法にもG〜Sまでの等級があり、それに応じた威力、範囲、影響力が変わる」

「私が扱える最高級の魔法はこれだ」


 村長は岩に向かって手を広げる。


「B級氷魔法、大氷弾」


 その刹那、巨大な氷が高速で岩に当たり、岩は粉々に砕け散った。


「おそらく、サミット学園と言えど、B級魔法を使える者はそう居ない」

「この半年でB級魔法を覚えるんだ」


 正直、B級魔法が目の前で放たれたときビビってしまった、これは使えるのか、正しく扱えるのか。


「わかりました、早速教えてください」


 村長は話しながら近づいてくる。


「魔法はイメージと理解だ、まずは目を閉じてみろ」


 目を閉じると、暗黒の世界が広がっている。


「氷とは、水を冷却した物だ……熱いものを食べるとき冷まそうと風をおくるだろう、その動作を想像しろ」


 今、僕の目の前にはスープがある。


「ゆっくりと冷ますんだ」


 そのスープに息を吐く。


「そのまま指に意識をむけるんだ」


 スープに吐いた冷気は指先に伝わり、身体が冷えるのを感じる。


「そのまま力を入れろ」


 手に力を入れた瞬間、手の先からジャガイモほどの氷の玉が高速で飛ぶ。


「これが、氷魔法……」


 自分が氷を出したことに戸惑う。


「なかなか良い筋をしている、今のでE級ぐらいだ」


 辺りはオレンジ色の光に包まれて、優しい光が暖かさを与えてくれるを


 気づいたら日が暮れて夕方になっていた。


「今日はここまでだ、修行のやり過ぎは魔力に影響を及ぼす」

「さぁ、家へ帰ろう」


 家に帰り、夕食を食べ、寝室に戻る。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


寝室


「後半年で合格……」


 改めて、高すぎる目標を認識する。


「今日は色々あったな…疲れた」


 気絶するように眠りにつく。


………………


「………ん」


 知らない場所で目が覚める。


「………ここは夢?」


 一面真っ白な先が見えない世界が広がっていた。


 コツ…コツ…コツ…コツ…


 足音が聞こえ、そちらの方を向く。


「!?」


 まさかの人物に驚愕と共に困惑する。


「僕?」


 まさに瓜二つ、自分を他人視点から見ている気分だった。


「はじめまして、私…」


 瓜二つの自分が話しかけてくる。


「君は何者だ?」

「私はあなたです」

「君は僕!?」


 意味のわからないことを言うその人物をただ見つめる。


「私の名前はアレフ、いわゆる貴方様の別人格とでも言うのでしょうか」


 自己紹介をするアレフを見つめるとある違和感に気づく。


「瞳の色が違う?」


 僕の瞳は、白色のはずだが、目の前のアレフは黒色だった。


「ええ、貴方様の瞳は良い色をしていらっしゃる」

「瞳の色はその人の人生を表しています」


 興味の湧く話に、耳が惹きつけられる。


「白色の瞳を持つ人は、嘘を付くのが苦手、多彩な才能に恵まれるが、流されやすく他の色に染まりやすい」


 胡散臭い占いに疑問をぶつける。


「じゃあ緑の瞳はどんな人?」


 緑の瞳とは村長の瞳の色だった。


「緑色の瞳を持つ人は、常に優しく冷静、裏に隠した感情を秘めています」


 村長が?一気に信頼できなくなった。


「それじゃ、黒色は?」


 黒色の瞳、アレフのことだ。


「黒色の瞳は……」


 急にめまいが襲ってくる。


「……なん…だ?」


 アレフは胸ポケットにある時計を確認する。


「おっと時間のようですね」


 意識が朦朧としゆっくりと目を閉じる。


「おやすみさない…私達の希望」

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