火の点かない煙草 陸
「七瀬テメェ何すんだ!」
「何すんだじゃねぇよ。フルフェイスタイプのヘルメット被ったままズカズカ受付に向かったと思ったら、強盗犯みたいにギャーギャー騒ぐんじゃないよ。本当すいません。秋くんも謝って」ぐい、と、右手で頭を抑え込む。
「騒いですみませんでした…」
受付の女性は眉を下げつつも、笑って許してくれた。
「あの、つかぬ事をお訊きしますが、今日の夕方17時頃に速報で流れた事件の被害者、女の人1人と男の人2人って、此処の病院に運び込まれてきましたか?」
「確認してみますので、少々お待ち下さいね」待つ事暫し。「すみません、お待たせしました。昨夜23時頃に確かに3人の患者さんが運び込まれていますね」
ヘルメットを取り、深呼吸をして、落ち着きながら質問を投げる。「何処の病棟ですか」
「東塔の302号室になります」
「東の302。迷惑かけてすみません。ありがとうございます」もう一度頭を下げ、2人はエレベーターに乗り込んだ。
「……。(まだ、みたいだな…。焦らずとももう直ぐだ)誰かがこの病室に向かって来ているな…」妖艶な笑みを浮かべた顔をお面で隠している男は窓から飛び降り、ゆらりと何処かに向かった。
「さんまるに…さんまるに…此処だ――――!?」病室に足を踏み入れようとした、その時、獣の呻き声が秋人に襲い掛かってきた。「うぐぉおおおおッ」
「「が…ぁああああああ!!」」
「あき―――――!?」
襲われている秋人を助けんと手を伸ばした矢先だった。秋人に纏めて襲い掛かってきていたうちの1人が七瀬に襲い掛かろうとしていたが、「ッ!させるかああああああッ!」片足で獣の呻き声を蹴り飛ばす。
「秋くん!」
「七瀬!麻酔銃でコイツ等を撃て!」
返事をする代わりに、腰に巻かれたホルスターから麻酔銃を取り出し、双方に一発ずつ撃ち込む。
「だーー助かったぁ…」
「君達!何病院で騒いでいるんだ!発砲音まで聞こえたぞ!?まさか最近の事件の犯人か!」
「げっ…。少しは休ませろよ。」はぁ、と、1つ溜息を吐き「おい、おっさん!俺達は何も悪くねぇ!コイツ等が俺達を襲ってきたんだ!」今目の前で起きた、信じ難い事実を警備員に訴えるが、信じてもらえる筈も無く「何をわけの分からん事を!銃を手にしてるのが証拠だろ!」