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煙草屋さんと弾丸  作者: 赤城霧弥
2/10

火の点かない煙草 弐

『―――――昨夜、10代後半から20代前半と見られる女性1名と、男性2名が何者かによって発砲される事件が起きました。被害者は病院に搬送され…』

 ラジオから流れるニュース速報に、店の影で煙草を吹かす男が、空を見上げながら「あれからもう1年か…」と、独り言をもらした。

「秋くん」

 返事をすると代わりに、携帯タイプのラジオの電源を切る。

「煙草吸い過ぎ」津田七瀬は、缶コーヒーの飲み口に刺さった3本の吸殻を指摘しながら、彼の横に腰を下ろす。

「るせぇ…。慰めは勘弁してくれ」怒りに任せ吸いかけの煙草の火を握り消す津田秋人に、「………」かける言葉を探す七瀬。

「秋くん。私は気にしてないから」

「俺が俺を許せねぇんだよ。七瀬をそんな姿にさせた犯人もだが…何より約束を果たせなかった俺自身が…!ずっと、ずっと前から約束してきたのに…ッ」膝の上で拳を強く握り締める。

「何で?吸血鬼になっても、私は私じゃん」

 1年前に起きた吸血鬼化事件を、ずっと秋人は気にして生きてきた。たった1年に思えるが、幼少期の頃に好きな七瀬を護ると約束を交わし、格好良い男に憧れていた秋人にとっては重い枷だった。




 この町は、人間と吸血鬼が共存する世界。

 そして、煙草屋は、煙草を売るのが仕事である。

 しかし―――――。煙草屋はとある職業と婚約する事でしか使えない物があると、巷で噂になっていた。

「おねーちゃん、又来るね」

「はい。ありがとうございました」

 客が去ったのを横目で確認すると「まーた、あのじぃさんかよ。毎日煙草屋に来る奴なんて初めて見たぞ」どんな吸い方してんだよ、と、悪態をつく。

「聞かれたらどうすんの。てか、何してんの」七瀬。煙草屋の一人娘。

 特殊な煙草屋で、不思議な実包を売っているのは、吸血鬼化した凶悪な吸血鬼を退治する為である。

「仕事」秋人。情報屋の一人息子。

 幼馴染だった2人は、2年前に晴れて夫婦となった。七瀬の実家が営む煙草屋は一般的な店とは違い、情報屋という職業と一緒になる事ではじめて成り立つ、特殊な煙草屋だ。

 30年前に人間が吸血鬼に変貌する事件が起きた。犯人の情報は一切掴めず、公安警察内で手に負えなくなり15年後に設立されたのが吸血鬼課。別の部署から吸血鬼課に配属する事になった1人の男が以前から情報屋と繋がりがあり、それ以降、その男は一部の情報屋にだけに秘密裏に情報を流し続けている。

 吸血鬼課にとって煙草屋は、頼りたくないが頼らざるを得ない微妙な関係なのだ。





「お前、抹茶飲みながら尾行とかふざけてんのか」

「秋くんこそ、抹茶飲みながらとかふざけてんの?」

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