クレア族に属しました
両者向かい合い一歩も動かずただ固まっていた。
仮面の男は何故か急に動かなくなったのだ。
俺が動かないのは分かる。動かないというよりも動けないの方が表現としては正しいだろう。
水中から大きな音とともに、人間が姿を表した。
俺と仮面の男はその音に反応して、そっちに視線を向けると鼻筋がスーッとしていて、目はまん丸で大きく瞳の色は漆黒で、みているだけで吸い込まれそうだ。
おいおいこんな近くにブラックホールがあるとは思わなかったよ。
そして長い髪に身体には薄い布一枚を巻いているだけの状態だ。
それも布は水分を含んでおり身体は透け透けでほぼほぼ全裸の姿になっていた。
その女性がゆっくりと俺達の間へと入ってくる。
目のやりに困っている俺とは対照的仮面の男はその女性をずっと直視していた。
女性は間髪いれずに突然仮面の男を殴り飛ばした。
そのまま仮面の男は水に叩きつけらて、水の中へと消えていった。
女性はキリッと俺の方へ視線を向けた。
なんだよ。その前に服着ろよ。服。
「やっぱり童貞臭がきついな」
聞いた事のある声。そして童貞と言う単語をこの世界で使ったのは一度しかない。
「マティ?」
「いちいち私の名前を言うでない」
やはりマティか?
仮面を付けている時は声で女性だという事は分かったが、外したらここまで美人だとは分からなかった。
「どうしてここにいるんですか?」
俺はマティから視線を反らして喋った。
「私の水浴び場だからな。いるのは当たり前だ」
まぁこの島では近代的な風呂何てある訳も無いから水浴び場があってもおかしくないのか。
「あの仮面の男沈んだままだけど大丈夫なんですか?」
今だに水中の男は空気を求めて、上へと浮上せずに沈んだままだ。
「死んだかも知れんな。まぁ人の領土を荒らしたからにはそれを覚悟で攻めている訳だから当然と言えば当然だ」
あーそう言えばそんな事この前俺の所に頭を下げてきた奴も、そんな事言ってたっけ。
「領土ってこの島の事ですか?」
俺は5歳時くらいの子供が自分の知らない事を、純粋に親から聞くみたいに喋っていた。
「お前はここにいる期間が短いから、あまり知らないのも無理は無いな。ここの島、陥没島には100年以上前からクレア族とカムイ族が対立している。それでこの前カムイ族の1人の子供を拉致してこいと命令したっきりそいつ連絡が途絶えているんだがな。その拉致した奴を見せしめにして、この長かった歴史に戦争が始まり終わりにしようと思ったがどうやら出来なかったがな」
マティは恐れもせずに平気で淡々と喋っていたが、考えると恐ろしいよ。
恐ろしい何て優しい表現だったな。
恐ろしいじゃないおぞましいだったな。
こっちの方が表現的には適切だろ。
何もいい返せずに俺は言葉をさがしていたが、結局何も見つからなかった。
「お前も私達と一緒に戦わないか?」
マティは俺に視線を合わし懇願する目ではなくて、従ってくれという命令的な視線を送っていた。
仮面を付けてた時もドキッとしたが、その仮面を付けてない時の破壊力はヤバイ。
例えるならダイナマイトで中古の一軒家を木っ端微塵に破壊する位の破壊力だ。
「どうした?」
マティが更に詰め寄って来たので、思わず視線を下に反らすとお山が二つ目に止まったので視線を上に反らした。
これは命令ではなく誘惑だな。
「おいどうした?」
マティは後寸前で俺の胸にマティの胸が当たりそうだったので、コクりと頷きこの場を回避した。
マティはどこかにあったか分からない動物の毛皮を羽織って一緒にクレア属の本拠地へと向かった。
ここに来たのは二度目。
竹やぶの中にひっそりとたっているあそこだ。
「さてとお前がこの軍に入ってもらって私は嬉しいぞ」
マティは本当にご満悦らしく、口角が上がっていた。
「それは良かったです。それとお願いがあるんですけど、何かご飯を恵んで頂ける事は可能でしょうか?」
安心したのかどうか分からないが急激にお腹が減りだした。
この世界に来て、一度も胃に入れていない事に気付いた。
「少し待っていろ」
マティは俺の所から離れて、外にでてしばらく経つと何やらいい匂いがたち込んできた。
外でバーベキューをする時に網で肉を焼いている時にタレをかけるといい匂いが鼻腔をくすぐるやつだな。