一人なんだが
「ここは?」
目を開けると真っ暗な世界が広がっていた。
そこには何もなく人の気配すら一切感じられない。
俺は何でこんな所にいると考えると頭が突然痛くなった。
思いだせないが死んだ事には間違いがないと身体が感じていた。
突然俺の目の前に光の渦みたいな物が現れた。
俺の頭がピーンと閃いた。
この光の渦から天使やら悪魔やら何かが現れて異世界に行って無双してこいって話しだろ。
光の渦から人影が写りだされた。
どうやら俺の読みは当たっているようだ。
「主は選ばれた。無人島でスローライフを送るか、化け物が出るけどハーレムに囲まれるかを選べ」
とんでもない爺さん現れたんだが。
顔はよぼよぼで猫背で今にも死んじゃいそうな爺さん何でですけど。
お願いだから死なないでよ。
あまりにも強烈だったので爺さんの言葉が全然入って来なかったんだが。
「爺さんもう一度説明してください」
俺は目上の方に失礼な言葉いっちまったー。
爺さんは俺に手を向けて、日本語じゃない何やら聞いた事もない言葉を喋っていた。
俺の足下が光だし、爺さんが詠唱を終わると俺はそのなかに落ちていったが、その寸前に「無表情だったけど爺さんめちゃくちゃ怒ってたのねー!!!」
と叫びながら落ちていった。
「ここは?」
目を開けると青空が広がっていた。
立ち上がり周りを見渡すと木々が生い茂っていた。
「ヤッホー!!!」
山頂にいるわけではないので、当然声が反響するわけでもないがついついやりたくなってしまう。
これは僕の心に少年の心がある証でもあるんだろう。
さてこれからどうするか?
何の説明も無しにこの地に降りたったわけだから正直何をしていいか分からない。
ただ一度死んで···死んだんだよな。
確証がないのでつい曖昧な表現になってしまう。
まぁ取り敢えず無双の力を得たのは間違いないよな。
だってそれはテンプレートだし、前のままの俺だったら弱すぎる。
あまりにも弱すぎて、目の前の虫だって倒せないほどだ。
ほら良く家の中にあまびらが入っても殺せないからな。
ただ嫌いなだけっていうのはあるがな。
しかもその前にここは島なのか大陸なのかそれすら分からない状態だ。
島だったら、ここの土地全部が俺の物って事だろ。
だとするとこの島を売れば億万長者なわけだから、一生働かなくてもいいということか。
ただの最高じゃあねーか。
あの爺さん怒ってたんじゃあなくて、俺にただ施しを与えただけなのか。
だとすると失礼な事言ってすいませんでした爺さん。
カサカサと今目の前の草が確かに揺れたのを感じた。
数秒待ったが気のせいだったのか、気配がなかったのでフーっと心を撫で下ろしていたら目の前の草むらから人が現れた。
その人は一人だけではなくて、数人が俺の周りを囲んでいた。
「ウホホウホホ」
といいながら手を上に持ち上げたり、奇妙な踊りをしながらおれの周りを動いていた。
それぞれがみたこともない、どこかの部族だと思われる仮面を被っているので表情を確認出来ず不気味だった。
俺の周りで踊っていた部族の二人が道を作ると、そこから一番高そうな仮面を付けて部族が俺の前に現れた。
いやーにしても高そうだ。
だって仮面の周りに付属品が沢山付いてるんだもん。
あれは日本で言うなら高級ブランドのグッ○とかシャネ○だろうな。
「お前何故ここの島にいる?」
と話しかけてきた。
表情は分からないがどうやら言葉は通じるらしいな。
それとここが島だという事も判明した。
声色的には女の子のような気がする。
女の子特有の甲高い声ではなくて、ちょっと低いのだ。
それと身長も俺より低いので、女の子だろうと予想した。
「よぼよぼの爺さんがここの島に俺を落としたんで」
俺は首元をかきながら困った表情をして話した。
「嘘をいうな!」
多分怒ってらっしゃるのは間違いないのか声を荒げていた。
「いや、本当なんですって」
「おい、それ以上嘘を言ったらお前の首を切り裂くぞ」
民族は藁を肩から足の方まで伸ばした衣装を着ていて、どこかに隠していたナイフを俺の首元に近付けたのだ。
ちょっタンマタンマ。
本当にそれが答えだから、他にいいようがないんだけど。
「···あれです。あなた方と共存したいと思いまして」
嘘ついちまったー。
あんたらに興味ないよ。
「そうか」
それでいいのかよ。
俺の首元に突き付けられたナイフは藁の中にしまわれた。
「この島に人間がいるというのは新鮮でな。付いてこい」
高価な仮面を付けた女は俺の有無などは聞かずに、先に歩きだした。
俺もその後をゆっくり付いて行った。