俺って最強だろ
「今日合コン行くだろ?」
俺の同級生で既婚者の田辺誠が何かに期待しながら目を輝かせながら話してきた。
こいつのこの目はあれだろ。
俺がまた振られるのを見て、心の中で笑い楽しむ···本当に性格が悪いというかなんというか?
「···行くけど」
「お前ならそう言ってくれると思ったよ。女の子に人数集まったって電話してくる」
そういうと俺の前から離れて行き自分の部署へと戻って行った。
ちッ、くそが。
あいつから頼むのはごめんだがあいつに頼むしか出会いがないのは事実だから仕方ない。
俺の最強のスペックを紹介しとこう。
『29歳独身男性大池代
彼女いない歴=年齢
見た目 悪くもなく良くもなく=普通の人間
性格 自分の心の中ではめちゃくちゃ冗談も言えるし、人の事も考えられる素晴らしい人間だと思っている。人からは暗いし、声が小さいと言われる
趣味 人間の腐った気持ちを見抜く事』
なぁ-最強だろ。
これで落とせない女なんていないだろ。
さてと俺もこの後の決戦を向けて仕事片付けちゃいますか。
俺のはファーっと身体を伸ばして自分の部署に向かった。
「あなた遅いわよ。いったい何してたのよ?」
俺の仕事はガチャガチャの中に入っているフュギュアを作る仕事なんだが、自分の席に座ると同時に向かい側の席の青木紗瑛が話しかけてきた。
この人は俺の先輩なのだが、歳は俺の方が上なのでこの場合敬語を使った方がいいのか使わない方がいいのか、なんとも難しいところだ。
俺の考えでは上司だから歳上だから敬語を使うのは間違いだと思っている。
同じ人間がなぜ上と下を決める必要がある。
いくら歳をとってもくそ野郎はくそ野郎だし、いい奴はいい奴だ。
誰かが言ってただろ。
人の上には人を作らずって···たしかそうだよな。
だから俺は目の前の女性に上司にタメ口を使おう。
「ちょっと今日向かう営業先について話しあってたんだよ」
青木の目は鋭くなり俺を睨み付けた。
青木の顔は目鼻立ちがくっきりしていて、長い黒髪にモデルさん並の身長でこの会社のマドンナ的存在だ。
「···す···すいませんでした」
青木はニコっと笑顔になり自分の机の上に置いてあるパソコンで仕事をし始めた。
この人は俺と考えが真逆で上下関係をめちゃくちゃ気にする人なのだ。
あー面倒臭いわ。
どこかの体育会系の部活かよ。
普通の常任なら今の笑顔で恋に落ちてるかも知れないけど俺は違う。
何故ならこの歳になるまで俺はどのくらい振られたと思う。
もうそれは何人もだ。
いや違うな。
正確にいうと振られた人数はいないな。
好きですと言った事がないから振られてはいないよな。
しかも俺がこの人と付き合える可能性なんて間違いなくゼロだろう。
俺は自己分析だけはしっかりと出来る方だ。
身の丈にあってないからな。
街中で横に歩いたら間違いなく不釣り合いだと後ろ指をさされるだろう。
だから俺が青木に惚れる事はないのだ。
さてと俺もフュギュアの頭を取り付ける作業をしますかね。