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第17話 帰って来た開拓村

 開拓村へ帰って来た。

 道中、盗賊も出ず、静かな移動となった。いや、イベントとかいりませんよ?


 唯一の懸念は、シルビアだろうか? なんか思い悩んでいる気がする。

 いや、気負いすぎと言った感じだ。


 シルビアの光魔法は、エリカの指導で、回復魔法のみだが習熟度も飛躍的に向上している。

 弓矢に関しては、元から百発百中と言って良い。

 悩むことなどないと思っていたが、村長として僕の配慮が足らなかったのかもしれないな。

 とりあえず、コミュニケーションを取って行こうと思う。

 別な仕事がしたいのであれば、任せるのも良いだろう。


 それと、開拓村では問題が起きていなかった。

 僕がいなければ、水のトラブルくらいは起きるだろうと思っていたが、譲り合っているらしい。

 衣食住が揃った彼らは、皆笑顔だ。

 この雰囲気を続けて行けるような政策を出し続けて行きたいと思う。





 夜になり、雨が降って来た。

 今僕は窓際で雨音を聞いている。だが、その音も静かになった。

 雨が雪に変わったのだ。

 ゆらゆらと白い粉が落ちて来たのだ。


「……もう、冬なのだな」


 夏の終わりから数えて、三~四ヵ月であるが、とても有意義に過ごせたと思う。

 あの三人には、感謝しかない。それと、村民にも。

 そして、これから起こりえる未来も聞いた。事前準備だけしておけば、問題なさそうだが、エリカにも懸念点があるらしい。

 不測の事態……。それは必ず起こると言っていた。

 その時は、エリカに頼れないだろう。僕が判断しなければならない。

 それは良い。そんなことは当たり前なのだ。

 この数ヵ月が、異常だった。


 当たり前の事を再確認する。


 ──コンコン


「空いている。入って来てくれ」


 エリカとセバスチャンであった。シルビアは、この時間には仕事があるので来れない。

 三人でテーブルを囲み、今後の打ち合わせだ。


「次は魔導書を取りにダンジョンに挑みたいのだが、事前準備として何が必要だと思う?」


「そうね。まず、盾役がいないのが問題ね。村民の中にレガートと言う人物がいるので、セバスさんに鍛えさせるのが良いかな」


 レガートか。荷物持ちとして一番初めに手を上げてくれた人物である。

 出会った頃は、長身痩躯で痩せていたが、今ではマッチョだ。そして、盾や防具は道中で購入済み(食料と交換)だ。

 彼がダンジョン攻略のカギになるのかもしれないな。


「セバス。レガートのことを頼んでも良いか?」


「はい、坊ちゃま。数日で鍛え上げてみせましょう」


 いや、もっと時間をかけても良いのだが……。まあ、任せよう。


「薬品とかは、必要ないか?」


「不要だと思います。回復役が二人もいるので荷物になるだけかと。でも、そうですね。毒消し草くらいは、持って行きましょう」


 ふむ。まあ、そうか。干し肉とパンを数日分持って行けば事足りる。水は僕が生み出せば良い。一応、消毒用にアルコールを持って行っても良いだろう。飲むのは、レガートだけになりそうだが。ちなみにセバスチャンは飲まない。

 毒消し草は、大量に採集してある。乾燥させて粉にすれば、薬になるので、冬の仕事として村民に依頼してあったのだ。

 春に街に売りに行く予定であったが、少し分けて貰っても良いだろう。

 しかし、ダンジョン踏破を目指すとは思えないほど、事前準備が少ないな。

 ああ、そうだ。事前に決めておかなければならないことがあった。


「僕達が不在の間に、まとめ役を決めたいと思うのだが、適任者を教えて欲しい。今のところはトラブルが起きていないが、これからのことを考えると必要になると思う」


「……それは、エヴィ様が決めることですね。私の知識にはありませんでした。でも、そうね。人望のある人が良いかな。知恵者だと悪事を働くかもしれないので」


 おや? 初めてかもしれないな。エリカが僕の質問に答えられなかったのは。


「そうか……。セバスは、誰か適任者がいると思うか?」


「……私としましては、まとめ役を決めることに反対でございます。私どもが不在時のトラブルですが、村民に解決させるべきかと」


 頭をガシガシと掻く。

 奴隷に権力を持たせたくないのだな。村民は今のところ平等であるが、そのバランスが崩れかねないということか。

 まあ、気持ちも分かる。一人を贔屓しては、村民達に不満が出ないとも限らない。


「僕達がダンジョンに挑む間に、問題は起きると思うか?」


「……多分ないでしょうとしか言えないわね。この開拓村は、歴史的に存続して貰わないといけないのよ。

 なので、私以外の転生者がいたとしても、開拓村には手を出してこないと思うわ」


 ここで、再度ノックが鳴った。シルビアが仕事を終えて来てくれたのだ。

 シルビアが席に着く。

 これからのことを少し考えてしまう。

 決断は、僕がしなければいけない。


「ダンジョンには、セバスとエリカ、レガートを連れて行く。

 シルビアは、村長代理補佐として開拓村の不測の事態に備えて欲しい」


 シルビアが、驚いた表情で、目を大きく開き、僕を見た。

 それほど意外なことは、言っていないつもりなのだが……。


 補足

 この世界の入学時期は、八~九月を想定しています。

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