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急に喋ると声って出ないよね。

 

 お礼参りが終わって特事班の詰所へ。

 詰所にはミリアさん、クロムさん、ロバートさん。

 とりあえずクロムさんとロバートさんに余ったクッキーのお裾分け。

 クロムさんがクッキーを食べて、天井を見上げながら涙を堪えているけれど、堪えきれなくて流れている。

 ロバートさんは微笑みながらクッキーを眺めていた。


「アスティちゃん、このクッキー何が入っているの?」

「あぁ…レインボーシュガーです」


 ピシッ…ミリアさんが停止。

 ん? 有名なの?


「レインボーシュガーは…グラム金貨一枚よ…」

「えっ……」


 ドバドバ使っちゃった。キロ単位で…

 一キロ黒金貨一枚って事?

 ひぇぇええ!


 銀貨二枚じゃ足りないよ…あっでも一度脇に挟んだ銀貨だからリアちゃん的には黒金貨の価値がある筈。


 因みに…キッチンに私専用の場所が出来た。

 隅っこに私の名前が書かれた場所…

 ちゃんと魔導具完備。

 材料完備。

 リアちゃんの愛が溢れている。



「じゃあまた来週」

「じゃあねー。あっ、アスティちゃんは闘技大会に出るの?」


「出ませんよ。目指す所はそこじゃ無いので」


 私の目指す所は、あくまで最強種を倒す事だから。

 観戦は行くけれど、参加はしない。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 次の日は学校で国語の授業。

 いつもの通り、フラムちゃんとミーレイちゃんに挟まれる。

 レーナちゃんは薬学、錬金学、地学なので授業は被らない。


「闘技大会の観戦に行きたいんだけれどフラムちゃんとミーレイちゃんは行く?」

「私は親戚と観戦するの…」

「私は親が駄目って言うわね」


 まぁ犯罪に巻き込まれる可能性があるから危ないか。

 フラムちゃんは私を面倒な親戚に会わせたくないらしい…


 チロルちゃんは行くって言うけれど、怖がるだろうなぁ…

 ヘルちゃんも顔割れしているから、もし誘拐とかされたら困るし…


 仕方無い…一人で行くか。

 闘技大会は一ヶ月後。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 うーん……居るなぁ。

 校門の真ん中で仁王立ちしているオレンジ女子が。


「ミーレイちゃん、あの子って有名人?」

「うん、有名人だよ剣聖様の孫だし」


 もちろん注目の的。

 有名人らしいからね。

 謝る態度では無いなぁ。


「多分私に用事があるみたいだから、時間があったらお家行くね」

「むぅ…分かったぁ…」


 ずっとあの場所に陣取られても困るからなぁ…

 流石に斬り掛かって来ないと思うし、地味スタイルで良いか。


 真っ直ぐオレンジ女子の場所まで行き、対峙してみる。

 刺々しい空気が辺りを包み、他の生徒達は遠巻きに眺めている。

 目立つな。初めてこの学校で目立っている…地味なのに目立つという矛盾を肌で感じて、少し気持ち良い気分。


「……た…ね」

「えっ、何? 声小さ過ぎて聞こえない」


 急に喋ると声って出ないよね。

 水分補給は大事だよ。

 睨んで怒らないでよ。

 顔赤くしてさ…恥ずかしいならこんなど真ん中で待たなきゃ良かったのに。


「謝りに来てあげたわ!」

「いや、別にいいです。じゃ」


「待ってよ! 私が謝ってあげるっていうのに!」

「じゃあ、もう一切関わらないという条件なら謝罪を受け入れます」


「なんでよ!」


 なんでがなんでだよ。

 関わりたくないよ。こんな危ない人。

 下を向いてブツブツ何か言っているし……

 今がチャンスだから通り過ぎてみる。

 ……よし! 成功!


 少し歩いて振り返ってみる。

 ……えっ…地面に座って、両手で顔を抑えて…まるで泣き崩れているみたいじゃないか。


 これじゃあオレンジ女子を私が振ったみたいな構図だよね。

 こんな場面本で読んだ事あるよ。


 あぁ…くそ…また要らぬ噂が立つじゃねえか。

 私を社会的に追い詰める仕返しか? 策士か? 策士なのか?


 このまま帰ったら来週学校で酷い噂に発展する。

 仕方無い……来週の私の為に話し掛けるか。

 …本当に泣いている?


「あの、泣かれると私が辛くなるので…場所を変えませんか?」


 後ろから話し掛けると、バッと振り向いて…


 私に向かって突進してきた!

 ちょっ、なになになに!?

 怖い怖い怖い!

 無理! 逃げよう!



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