闘技大会かぁ…
次の日、いつもの通り学校へ。
学活では、先生が闘技大会について話をしている。
闘技大会…帝国美少女グランプリと並ぶ帝国三大祭りの一つ。
帝国中、近隣国から腕に自信のある者が頂点を目指す。
武器や魔法はなんでもあり。
……レーナちゃん、近いよ。離れて。
場所は帝都ではなくて、商業都市ライネ。
フラムちゃんの親戚がいる所。
文字通り商業が中心で、街の中心に巨大な闘技場がある。
賑やかな所というイメージだけれど、賭け事も多く帝都以上に犯罪も多いから衛兵さん達は大変そう。
闘技大会かぁ……出なくても問題無いな。
技や魔法は視れば良いし。
……そうか、闘技大会で選手達を視れば色々な技を閃ける!
現状切り札が光速剣っていう自爆技だから、安全安心を求めたい。
沢山の流派を視て、無元流の応用をすれば…私流剣術が増える筈。
…レーナちゃんが机に手を枕にして、頭を乗せ私に横上目遣いを仕掛けている。あざと可愛いね。
でもね、学校でやっちゃ駄目だよ。ほら、男子が睨んでくる。
「めっ、だよ」
「きゃうん」
それ。それが駄目なの。解る?
ほら、女子にも睨まれちゃったじゃん。
ちょっ、眼鏡取ろうとしないで。
まじやめて。
……
レーナちゃんの悪戯を回避して、逃げるように魔物学の授業へ。
魔物学では、最近のラジャーナについて。
絶対行くなというお達し。
Bランクが身近になったラジャーナは、本当に危険。
学生は行くものじゃないね。
私は大丈夫。
騎士団所属だから。
騎士団で思い出した。
今日は騎士団へ行かないと。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
とりあえず特事班の詰所へ到着。
着替えなきゃいけないから。
アスティよりレティの方が嬉しいでしょ。
アスティとレティが同じだって知っているベテラン騎士さん達しか居なかったし。
「あらアスティちゃん、昨日の件?」
「ええ、そんな所です。騎士団の皆さんに時間を使わせてしまったので、軽くお礼をと思いまして」
「マメねぇ。こういう所におじさんはグッと来るのね。お礼って?」
「はい、クッキーを焼いてきました。お一つどうぞ」
「ありがとうー! ……うわっ…凄く美味しい……こんなクッキー食べた事無いわ……」
「私の愛が詰まっていますからねー」
なるほど…やっぱりそうか。
実は私のクッキーについて、リアちゃんが提唱したある仮説があった。
本当に辛い経験をした人ほど、心に響く味になる。
ミリアさんは公爵令嬢として苦労はしただろうけれど、心が壊れる程の辛い目には遭っていない。という事だ。
別にそれを知ってどうという事は無いけれど、私のクッキーの謎が解けたのは良い事だ。
レティスタイルに着替えて、詰所を出ようとした所でオレンジ女子を思い出す。
「ところで、私を襲った人ってどうなりました?」
「あぁ…今頃お爺さんにこってり絞られているんじゃないかしら?」
「お爺さんは怖い人なんですね」
「……ん? アスティちゃん知らないの?」
「はい、昨日初めて会った時に斬り掛かって来たんですから。知りませんよ」
「そうだったのね。だからおじさん軍団を呼んだのか」
別におじさん軍団を呼んだ訳ではないよ。
助けを呼んだ結果、おじさん軍団が来ただけだから。
どんな人なんです?
「あの子、剣聖様の孫なのよ」
「剣聖?」
……なんか店長が言っていたな。
セドリック・ノーザイェイだっけな。
へぇー、剣聖の孫ねぇ……
力量が解ったな。
感情的になったら弱くなるタイプ。
だとしたら、負けた事を怒られていそうだな。
自業自得って事で。
いざ、お礼参りへ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
騎士団は第一隊から第五隊まである。
つまり、全部回らなければならない。
でもベテラン騎士さんが居る場所は固定だから解りやすいのが救いかな。
「あの、デグマーさん。昨日のお礼です。お口に合うか解りませんが…」
「えっ!? 俺に!? あ、ありがとうレティちゃん!」
元気が出たって言ってくれた。
食べて食べて。
「……どうですか?」
「……美味しい。なんだろう…子供の頃を思い出したよ。親父と遊んだ記憶……ぅうっ…ごめんよ。泣いちまって…」
「いえ、家族を想って泣けるデグマーさんは素敵ですよ」
「レティちゃん…」
また会いましょう。
さぁ次へ。
「…うまい…なんでだ…なんでこんなに涙が…」
ベテラン騎士さん達は色々背負っているんだな。
若い騎士に俺のは無いの? と聞かれたけれど、あげません。
昨日居なかったし、アスティの時に冷たく対応されたのは忘れない。
私は根に持つので無表情で対応。
そういえば私が食べたらどうなるんだろう……
無味無臭だった。
砂糖ぐらい感じさせろよ。
一隊で三十分。
移動を含めて五隊で三時間で終了。
……疲れた。
おいそれとおじさん軍団を呼ぶもんじゃないな。
あっ、今度ラジャーナの衛兵さん達にもあげなきゃ。




