なるほどなるほど。
二人同時に視るのは疲れるけれど、倒れてもリアちゃんが居るから大丈夫かな。お持ち帰りされなければ……
* * * * * *
『どうして! 私じゃない!』
アース王女の記憶。
荒れてんなー。そりゃ…婚約寸前まで行って、やっぱり違う王女にするって言われたらそうか。
『あんなに愛を囁いてくれたのに!』
えー…第二皇子引くわー。
口説いていたならアース王女一筋にしろよ……
『大事に手紙を仕舞っていたのに!』
うわぁ……アース王女にも手紙の件を言っていたのかぁ……引くわぁ……えぇー……引くわぁ……
別に複数の女性を口説く事は仕方無いとしてさぁ……せめて違う口説き方をしてくれよ。
多分第二皇子にとって鉄板の口説き文句なんだろうな…という事は他にも同じ口説かれ方をした女子が居るという事か……
とりあえずあの腕輪は棄てよう。
売ると足が付くから棄てよう。明日棄てよう。
『誕生会にも出席しない田舎者を選ぶなんて!』
それは何も言い返せないね。
積み恋愛小説が多くて行く暇が無かったんだよ。
『ミズキー! 聞いてよぉ! うえぇぇええん!』
うーん……怒っている様子が多いけれど、何かを企む様子は無い…か。
右目がジンジンしてきた…ミズキに切り替えよう。
* * * * * *
『……えっ? ここ……どこ?』
ミズキの記憶。
他の世界から迷い込んだ迷い人…原因は解らないけれど嵐や地震等の災害の後によく起こる現象。
迷い人は他の世界の知識や力を持っている事で有名だから、よく権力者に狙われる。何故か成人していない子供が中心だから、外堀を埋められ飼い殺しにされる迷い人が大半。
ミズキもその一人。
光属性の適性が高く、超級魔法まで使いこなす迷い人をアース王国は放っておく事をしなかった。
『本当に…やらなければいけないんですか?』
『国の為に力を貸してくれ…頼む』
『…分かりました……これで…終わりにして貰えませんか…』
なるほど…主犯は国王もしくは側近か。
アース国王の迫真の演技に、ミズキはアレスティア王女と第二皇子の顔合わせの際…第二皇子を傷付ける約束をしてしまう。
傷付けるだけで、フーツー王国の信用が落ちる。
国の為…だけれどミズキには関係無い。無いけれど、自分を守る為ならこうするしか無かったのか。
身寄りも無い。
人権も無い。
文化も違う。
生きる為か……でも、なんで第二皇子を殺そうとしたのだろう?
『私は…何をしているのだろう……』
ドンッ!――
ミズキの視点であの時の記憶が流れる。
第二皇子の背後に降り立ち、第二皇子の奥に金髪時代の私……化粧濃いな……その奥にはムルムーが呆然とした表情。なんだろう…ちょっと面白い。
剣を天に向けた後、第二皇子に向かって剣を突き刺す所で私が皇子を突き飛ばして身代わりに刺される。
……ん? 巻き戻してもう一度見よう。
第二皇子の背後に降り立ち、第二皇子の奥に金髪時代の私……見る所は化粧じゃないな。よく見ると…私の目が若干光ってらっしゃる。
しかも両目。
そこから、ミズキに殺意に似た何かが湧いている。
ほぇー……ほうほう……なるほどなるほど。
うん、私のせいか。
ミズキの弱った心に、私の中途半端に発現した魔眼が効いてしまったのか。
そうかそうか。
……この件は、私の心の奥に仕舞っておこう。
……いや駄目だ。ミズキが可哀想だ。
そこからミズキが心を病んでいる……どうしようかな……これはリアちゃんに相談しよう。
もう少しいけそうだから、私が死んだ時の王女の反応でも視るか。
* * * * * *
『……えっ? 死んだ? あの田舎者が皇子様の身代わりに?』
名前で呼んでくれよ、ヘンナエッチさん。うろ覚えの私が言うのも難だけれど。
しばらく続く沈黙。
ミズキの目に隈が凄い…寝不足なんだね。
『なんでよ……なんで死んだのよ! 私はまだ勝負をしていないのに!』
『姫様…』
勝負?
『卑怯じゃない! 命を掛けて助けるだなんて! 命を掛けられるほどに愛しているだなんて……敗けたみたいじゃない……』
愛してはいないよ。
気分だよ気分。
『……決めた。私が…あの田舎者の代わりに…最高の王女になってやる……ミズキ、力を貸して』
『……はい』
最高の王女ねぇ…道は違えど、お互いに目指す頂があるのか。
……
一人になった王女が、泣いている。
……私の為に泣いてくれたのか。
『勝ち逃げされちゃったなぁ……同じ人を愛したのなら、仲良くなれるかもと思ったのに……』
……なんだ、良い奴じゃないか。
うーん……人の記憶なんて視るもんじゃないなぁ……
先に闘っておいて良かった。
こんなの見たら私が闘えないよ。
余程の事が無い限り、記憶を覗くのは封印しよう。うん。
* * * * * *
……目が痛い。
ミズキと王女は気を失っている。
なんとか真相は解ったけれど、誰が悪いんだろう?
原因はそれぞれにあるけれど、結局は収まる所に収まっている訳だし……
王女は第二皇子と結婚出来る。
ミズキは私を殺していない。
私は自由と力を手に入れた。
……結果オーライだね。
今回は上手くいったけれど、全員の深淵を覗けるとは限らない。
深淵を覗けない人には警戒しないと。
強い精神力の持ち主は強いから。
ねぇ、リアちゃん?
今少し視えたけれど、時の魔眼って格好良いね。
「アスきゅん、そっちに覚醒しちゃったんだね」
「そっち? 複数あるんですか?」
「うん。右目にだけ深淵だから…もしかしたら左目に別の魔眼が覚醒するかも」
二つの魔眼を持つ女……格好良いな。
ところで、勇者と王女…と護衛はどうします?
いらないかって? いりません。無事に力を手に入れましたので、私の用事は済みました。
色々視れましたし…
「じゃあ、私が後始末しておくから…アスきゅんは休んだ方が良いよ。副作用や負担が大きいから、ね」
まぁ、それは覚悟の上。
ただで強くなれる訳も無いから……
多分この魔眼を解いたら反動が一気に押し寄せるんだろうな……
怖いなぁ……
「あの、この二人ともう一度話す機会が欲しいんですが…」
「派手にヤっちゃったもんね。詳しい話を聞かせてくれるなら良いよ」
「ありがとうございます。このまま遺恨が残ったままお別れは嫌なので…あと、もうほとんど動けないので…家まで送って下さい」
本当なら、もう二度と関わらない方がお互いの為。
だけれど、ミズキにはもう関わらないと言っておかないといけないし……王女は、私と勝負したそうだったから。
でも、謝る事はしない。
お互いの堰は保たなければ…ね。
謝らないけれど、感謝はしようかな。
勇者の力を視られたから、ソルレーザーが強化出来る。
何? チューしてくれたら送ってあげる?
良いですけれど、聞いて下さいよ。
私のチューって特殊効果があるみたいなんですよ。
パンパンの皆で検証?
それは大変な事になるのでやめましょう。
「みんな喜ぶよ」
いやいや…みんな女の子しか愛せなくなったらどうするんですか?
早く送って下さいよ。
「仕方無いなぁ…テレポート」
バシュン――
お花屋さんの前に私だけ転移。
ありがとうリアちゃん。
お礼しなきゃな。
魔眼を解除。
……さっ、疲れたから帰ろう。
「ただいまー」
「おかえりなさ……アスティちゃん!」
「ん? どしたの?」
「目から血が出てるよ! 回復しなきゃ!」
焦った表情のフラムちゃん。
声を聞いたミーレイちゃんとチロルちゃんもやって来た。
確かに右目から血が出ている。
ヒール。
ヒール。
ヒール。
あれ?
治らないな。
んー……あっ、深淵魔法・アビスヒール。
血が止まった。
止まったけれど、止まっただけ。
痛みは継続している。
ちょっと辛いな。
みんな、心配掛けてごめんね。
ちょっと、疲れたから寝るね。




