ラグナのお願い
『勝てると思ったんだがなぁ……想定外の繰り返しで、楽しかったよ』
私も、とても楽しかったなぁ。
ラグナが武神装を解くと、閻魔が現れ、きひきひと笑いながら愛の聖女ヘルちゃんの撮影を始めた。
ヘルちゃん、反応したらご褒美だから駄目よ。
《アスティ、おめでとう!》《あれすてぃぁ……嬉しいよ、頑張ったなぁ……》《愚姉……覚えていろよ》《お姉さまぁ……良かったです、本当に……》《おめでとうなのじゃ》
《《《おめでとうー!》》》
「アスティ、おめでとう。素敵な思い出も、ありがとね」
「へへっ、やった。これで、私はジョーカーになれますか?」
『あぁ、いつでもなれる。でもジョーカーになる前に、お願いがあるんだが聞いてもらって良いかな? アレスティアが適任なんだ』
「まぁ、出来る範囲でなら……」
『後で私の部屋に来てくれ。これは部屋の前に転移出来るカードだ』
ラグナにカードを渡され、槍を担いで後ろに振り向き、後ろ手でひらひらと手を振ってアスターのみんなの元へ歩いて行った……去り際はあっさりしていたな。
ぼーっとアスターのみんなの中に入っていくラグナを眺めていると、ヘルちゃんが私の手を握って寄り添った。
「アスティ……先ずは閻魔を消しましょう」
「和やかに物騒な事を言うね。一応恩はあるんだから背景として受け入れてあげようよ」
「無理よ。私は心が狭いの。きしょいわ」
「分体を各地に配置しているからこれを消しても無駄だよ」
『きひっ、ヘルトルーデ様にお願いがございます』
「……何?」
『なんでも致します。わたくしを奴隷にして下さい』
「……アスティ、行くわよ」
「じゃあ閻魔さんまたお会いしましょう。次元転移っ」
『ひぐぅぅぅ!』
アスターのみんなはもう手を振って転移していったので、裏世界に用事は無い。
という事でバシュンと裏世界からパンパンに転移した。
誰も居ないホールに来たところで、みんなが出て来て私に向かい合うように並んだ。
「「「おかえりなさいっ!」」」
「……えへへ、ただいま」
『さぁ、我が娘のお祝いだなっ』『まだ料理はするなよ』
これからみんなで私のお祝いをしてくれるみたい。
テキパキと飾り付けを始めている中、コーデリアが私の前に来て深々と頭を下げた。
「お姉さま、本当に、ありがとうございました」
「こちらこそありがとね。アスターの所属になるんだよね?」
「はい、これからアスターの見習いとして勉強の日々です」
「遊びに行くからね。それと、はいこれあげる」
「これは腕輪ですか……?」
「私が作った黒異天体を作れる星具。アスターって実力主義だから、頑張ってね」
「……いや、そんな凄いものポイってしないでください」
「作るのは簡単だからね。もう行くの?」
「はい、書類やら手続きがあるので失礼します」
ギュッと抱きしめて、少し寂しそうにしながら転移して行った。
頑張ってね。これからいつでも会えるように。
この後はパーチーをしながら結婚式の予定やらで揉めに揉めた。ルゼルママンとルナママンが。
あっ、そうだ。ラグナに呼ばれていたんだ。お願いってなんだろうね。
♀×♀×♀×♀×♀
「なぁなぁ今年は誰が来てくれるのかな?」
「まだ情報は出ていないらしいですわ。一組はアスターの誰かが担当するのでしょ?」
「あっ見て、凄く可愛い子……何処の所属かな?」
「ぅわぁ……めっちゃ可愛い。私聞いてくるっ。……ねぇねぇ貴女、お名前は? 私バースのリリースっ」
「ごきげんよう、わたくしはルゼルムーアと申します。所属は……アラスですわ」
ここはアスターの月に拠点を置く天異界同盟本部内にある天異界神学校。
各世界の新米の神や、補佐等が天異界や世界の管理について学ぶ場で、今日は新入生が集う日。
新入生と言っても年齢は様々で種族も老人の見た目であったり、獣だったり様々だ。
そして新入生は全員分体……本体は忙しい場合等で来られない事があるので、分体作成キットが配布されていた。
神学校の一年一組、ここはある意味エリートが集う組。
「アラス? 確か……暴君アラステア様が代表の世界よね? やっぱり……凄いの?」
「んー……そうですねぇ。暴君ですわ」
「そうなんだー、後で詳しく聞かせてねっ。うわっ、見てあの子……凄い強そう」
「あの方もアラス所属ですわっ。ルーナさーん」
「あぁゼルムー早かったな」
白髪の少女が現れ、一組全員が注目していた。
分体で力を抑えているのに、圧倒的な存在感を発していたから。
「アラスって、凄いんだね。最近一気に序列が上がったんでしょ? あっ、私リリースですっ」
「ルーナリエだ、よろしく。ゼルムー、今度覇道も入学するみたいだぞ」
「えぇっ!? 覇道お姉さまも? 楽しみですっ」
彼女達が自己紹介をしながら会話をしていると、一組の扉が開き、スーツを着た女性が入ってきた。
「あれ?」「あんな人アスターに居たっけ?」「ぐふふ、お姉さま素敵……」「……気合い入っているな」「うわぁ、綺麗……」
スーツを着た女性は、名簿を見ながら席に座る生徒達を確認……全員が揃っている事に安心した表情を浮かべていた。
「はい、全員揃っていますね。今回アスターの皆さんは慰安旅行に行ってしまいましたので、しばらくは臨時で私…アレスティアがみなさんの担任を勤めます。よろしくお願いします」
神とは違う雰囲気の存在を新入生の中で理解している者は少数。
特に強さを感じない事に、首を傾げる者が多かった。
♀×♀×♀×♀×♀
「じゃあこれから一人一人自己紹介をしましょうねー」
「「はーいっ」」「「「……」」」
「しましょうねー。全員返事をしないと先生は容赦無く成績下げますよー。先生は根に持つタイプですからねー知りませんよー」
「「「っ! はーいっ!」」」
さて、ラグナのお願いは私に天異界神学校の一年一組の臨時担任をしてくれとの事。
理由は……新入生がルゼルママンとルナママン、それに覇道ちゃんなどなども入学すると聞いて、アスターのみんなが誰も担任をやりたがらないから私に押し付けた訳だ。
まぁ別に暇だし良いんだけれど、私を担任にしたら駄目だと思うのよ。
だって、可愛い子に超ひいきするから。
はい、読んで戴きありがとうございました。
キリが良いところで少しお休みしますね。
一応予定として……次章は『天異界神学校編』、その次の章は……『女神大運動会編』又は『美少女神コンテスト編』になるかなーとは思いますが、書き溜めたら考えたいと思います。
評価等して戴けると助かりますっ。ではではまたお会いしましょう!




