勉強なんざどうでも良い、青春ってぇやつをやりてえんだ
「「「……」」」
カウンターに出た瞬間しーん……そろそろみんな慣れろし。
「レーナ、お待たせ」
「……」
「どうした? ……レーナ、今日も可愛いな」
「──ぐはっ!」
あっ、撃沈した。
レーナちゃんが搬送されていく。
代わりにミーレイちゃんが座った。既に顔が赤い……
「ミーレイ、ご注文は?」
「あ、あああああれす君あのね、あのね、えと…えっと…その…」
「ほら、落ち着いて。いくらでも待ってやるから、な?」
「──ぅぁああやっぱむりぃぃ!」
ミーレイちゃんもパタリと倒れ、搬送されていく……ちょっと楽しい。
次は澄ました顔のクーちゃん……って挑戦者みたいだな。
クーちゃんはマイペースだから会話くらい出来るでしょ。
「……レティ、カッコいいです」
「クー、今はアレスだぞ」
「ぐっ……ドキドキが止まらないです……アレス、中々やるです」
「何が食べたい? パンケーキか? 肉か? それとも……俺か?」
「それ……反則です…もう…だめ…」
クーちゃんも倒れた。ふっ、私は罪な女さ。
いやいや、私はお話したいんだよ。
流石にこの格好は駄目か? あっ、最近みんなが鑑賞会で何処かの学園ものを観ていたな。学ランの男子とセーラー服の女子が告白しそうで中々しないやつ。その影響かぁ。
「アッきゅん、それは反則だよ。私でも気を抜いたらイチコロだね」
「あっ、イッきゅん。なんかみんなの耐性がどんどん下がっている気がしているんですよ」
「それはアッきゅんが凄く魅力的だからね。コーヒーお願い」
「かしこまりました」
今度はパーフェクト幼女のイッきゅんが座った。茶髪に茶色の目だから、目立たない印象があるけれどしっかり美少女。おまけに性格も落ち着いていて包容力もある幼女なんて完璧だよ。
「試練、敗けだったけど相手が悪過ぎたから考慮してもらえるんじゃない?」
「あれは反則ですよ……サティエルさんって有名なんですか?」
「うん、サティさん序列戦で強過ぎで有名なんだ。能力が凶悪な上に単純な強さも桁違いで……天異界からサティエル禁止令が出たくらいだから」
「じゃあ少しくらい考慮してもらえそうですね。ん? なんですかこの紙の束」
「日本のお金だよ。行くんでしょ?」
これが日本のお金かー、紙なんだな。おっさんの顔が載っている。へぇー。
「いくらです? 払いますよ」
「あーいいよいいよ。沢山あるし、あと、このカードにも入っているから。使い方はミズキちゃんに聞いてね」
「ありがとうございます」
「私もその内行くから、デートしようね。あっ、私にもあれやって」
「イツハ、嬉しいよ。あの、これから時間あるんだ…一緒に、過ごさないか?」
「……うん、過ごす。はぁ…ママの気持ちが痛いほどわかるよ」
イッきゅん忙しいから中々二人きりになれないからね。
じゃあ、お持ち帰りしようか。
なんか、違う視点で見たら私って幼女にお金を貰うヒモだったな。まぁちゃんと払うけれどね、物か身体かだけれど。
…………
…………
……よし、集合時間だ。
「アッきゅん、行ってらっしゃい」
「行ってきます。写真送りますね」
「うんっ、じゃあねー」
イッきゅんとゴロゴロした後、休憩所へ……の前に幼女の部屋を開けると、まだ寝ていた。そういえばルゼルどこ行った?
「あっ、レティ終わったよ」
「ミズキさん、お疲れさまです。そのボロボロの布切れはなんですか?」
「制服…だったものだよ。破けてから着ていなかったけど、捨てられなくてね。持ってきてって言われたからさ」
「血の跡が凄いですね」
「最初はこれしか服無かったから」
「大変でしたね。セーラー服ですか…あっ、リアちゃんお願いしまーす」
リアちゃんが入ってきて、腰に手を当てて何かをアピールしていた。まぁ、うん、似合うよセーラー服。見た目は十八歳だもんね。
「じゃあこれ若返りの薬。グイッとね」
「は、はい…んっ…なんか、身体が熱い…」
シューっとミズキから白い煙が出てきて、なんか肌に張りが…少し荒んだ目が澄んでいく…おぉ、なんか若くなったよ! ほうほう…ほぅ…
「なんか匂いが変わりましたね。若いおなごの匂いです」
「それおっさんみたい。あっ、肩こりが治った!」
「制服も戻したから着てみてね」
「はいっ!」
声も少し高くなったし、可愛いくなったな。少し背が縮んで、これはモテたんじゃないか? 女子に。
だって少しクール系な雰囲気で、背も高くてさ…セーラー服を着たら良い感じだよ。
ヘンリエッテも上がったみたいだな。ミズキを見て硬直している。
「ミズキ? ふわぁー! 可愛い!」
「姫、やっと帰れます……レティ…手入れないで」
「いや、こんなのが制服とか日本の女子って大変だなぁって…中に着ないとお腹丸見えですよ」
「これは割りとスタンダードだよ。まぁ、日本もまだまだ女らしさとかうるさいからね」
「にしてもですよ。スカートだしお腹冷えますよね?」
「冷える冷える。冬とか最悪だよ」
…これで学校行くのか。夏とか気を抜くとブラジャー透けるぞ…男子達は悶々とするんじゃないか? 着るのは可愛いけれど、毎日これ着て学校か…
「私視点では最高ですね」
「それおっさん目線だよね?」
「ヘンリエッテも着るんでしょ?」
「なんで?」
「なんでって、ミズキさんの学校に行くんでしょ?」
「……ん?」
ヘンリエッテが人差し指を唇に持っていき、コテンと首を傾げて…あーあざといあざとい。それ私がたまにやるやつじゃん。
そう、私もあざといんだよ。
今日は下見だけれど、手続きは今度やるかな。
「えっ、レティ……もしかして……」
「よろしくお願いしますね。ミズキ先輩っ」
「いや、レティ忙しいんでしょ? 学校なんて行ってる暇……」
「確かにありません。でも、私はアレがやりたいんです!」
そう、地味っ子が眼鏡を外したら可愛いアレ。
ラブレターを渡すアレ。
ベタなアレ!
勉強とかどうでも良い。色々なシュチュエーションがしたいだけ!
という事で、私とヘンリエッテもセーラー服にチェンジ!
地味メガネを掛ければ地味っ子に変身だ!
「別に学校じゃなくても出来るじゃん」
「チッチッチッ、物事は本物だからこそ輝くんですよ」
「相手は誰さ」
「その時に決めます。リアちゃんありがとうございました」
「うん、時間軸の調整もあるからやっておくね。それと目立ちたくないなら髪の毛黒くしたりは自由だけど、魔力は抑えた方が良いよ。あとこれ、言語理解の指輪ね」
「そうですね。ありがとうございます。カラーチェンジ・黒!」
私とヘンリエッテの髪をルゼル直伝の魔法で黒く変化。うん、似合わねぇ。
そして懐かしの封印の指輪を装着…私は魔力ゼロに出来るから意味無かったな。ヘンリエッテとミズキに着けよう。言語理解機能って凄いね。
「なんか顔色悪く見えるね」
「私はおかぁさん似なので慣れたら違和感ありませんが、ヘンリエッテは今にもゲロ吐きそうな顔色だね」
「えっ、やだ……茶色は?」
「カラーチェンジ・茶。あーこっちの方が良いね」
「あえて外国のお嬢様設定は?」
「ヘンリエッテが目立っても意味ないですが……まぁ下見なので良いでしょう。戻れー」
ヘンリエッテは金髪に戻り、私は黒髪のまま。
うん、地味だ。
よし、じゃあ次元転移で地球へゴー!




