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御先祖様…いつか、お会いできることを楽しみにしております  作者: はぎま
終章・叶えてやるんだ
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私にかかればこんなもんよー!

 

「ふんぬー! はうー! にみゅー!」

「頑張れー」


 ……うん、ちゅらい。

 少し動かせたよ。少しね。

 あぁ憎い。この剣が憎い。持って帰るだけじゃん。言う事聞きなよ。


「はぁ…持った時点で限界だからなぁ…」

「引き摺ったら駄目なの?」


「ズルしたら動かないの」

「アスティの天敵みたいな存在ね」


「でも少し解ってきた。この剣は意思があるんだ」

「歴史を感じる剣よね。ねぇ閻魔、持ちなさい」


『やや』


 閻魔は首を振ってヘルちゃんに反抗した。折角ヘルちゃんが我慢して話しかけたのに…

 ヘルちゃん、さっき食べた焼き芋の包み紙を投げちゃ駄目よ。それ餌だから。

 ほらっ、食べちゃった。


「早く帰らないと…でもおかぁさんのメッセージ、絵文字多かったから余裕なのか?」

「顔だけの石像に羽が生えた絵文字の意味は何かしらね」


「フライングモアイの絵文字だから、早く来てねの意味だろうけれど……ねぇ咎星剣、ルゼルさんが待っているよ」

「……反応無いわね」


『人には扱えない剣だからな』

「確かに振るなんて無理です。閻魔さんから見て私って人で良いんですかね? 最近解らなくなってきました」


「アスティは私の可愛いアスティよ」

「ありがちゅ」

『……百の血を持つ人なぞ居ないがな、分類は人だ。器は正…神の素質があるが、魂は負…深淵に染まり、今生きているだけでも不思議な程』


「やっぱり、私の寿命は長くは無いんですか?」

『いえす』


 私は負の力が強過ぎる。普通じゃない。

 光の力を頑張って伸ばしていたけれど、限界は近いだろうな。

 テンちゃんの加護で少しは持ち直したのは大きい。でも、負の力が圧倒的なんだ。

 幼女は戦わずに何もしなければ長生きは出来ると言っていたけれど…


「…アスティが長生き出来る方法を教えなさい」

『きひっ、方法は複数ある。一つはその剣に認められる事、二つ目は力を全て棄てる事、三つ目は私を継いで王となる事…まだあったかな…そうそう、その魂にもう一つの魂を合わせる事…かな』


「二つ目は無しです。王になるなんて考えていないので、一つ目と最後を詳しくお願いします」

『その剣は、咎を背負う者が扱える。己にとって大きな罪を負う事だ。最後はそのまま他人の魂を合わせる…任意でなくてはいけないし、格の大きな魂じゃないと負の力が溢れる』


「アスティ、合体よ」

「それヘルちゃん死ぬじゃん。イチャイチャ出来ないよ」


「じゃあどうするのよ。他に方法無いわよ」

「やっ! 咎星剣を脅してみる。折るぞー、折っちゃうぞー」


 意思があるなら私の声は聞こえる筈。

 折るぞー折るぞー。

 ボロボロだからポキっていくぞー。

 それとも破壊の力で粉々にしちゃうぞー。


「……無反応ね」

「…じゃあ…臭くするぞー。その刃でニンニクゴリゴリしちゃうぞー。リアちゃんの納豆絡ませるぞー」


「あっ、震えたわね。その調子よ」

「私に運ばせないと下の広場でみんなで焼肉食べて匂いだけ届けるぞー。みんな楽しそうで邪魔しちゃ悪いと思って待っていたけれど誰も呼びに来ないから凄く不安になっても結局誰も来ないんだからな…独りで乾いた素パンを食べる切なさを届けるぞー……」


「……アスティ…あの時はごめん」

「気にしていないよー。根に持っていないよー。咎星剣、お前も私と同じ目に合わせてやるからなー!」


 いざ勝負!

 よっしゃー持てたー!

 はっはっはー! 私にかかればこんなもんよー!


「『……』」


 さっ、行こう。

 ……玉座の間から出ようとしたら、閻魔も付いてきたな。


「……なんです?」

『あちきも行く』


「その成りで幼女みたいな声出さないで下さい。閻魔さんはアラスに来れるんです?」

『ちょっと怖いけど行ける』


「閻魔さんの方が怖いですよ」

『行っておくが、アレスティアはもう戦えない』


 解っているよ。これ以上負の力を使ったら私が私じゃなくなるんだよね。

 でも負の根源状態の黒ローブだから、負の力を使っている状態。ここは裏世界だから安定しているけれど、表世界へ行ったらどうなるか解らない。


「アスティ、私がなんとかするから」

「…それだとヘルちゃんがどうなるか解らないじゃん」


『……大丈夫。その為に私が行く』

「…なんかそれ以外に目的がありそうね」


『今アラスには…大聖女が居るから、会いたいの』

「「大聖女?」」


 誰? 大聖女なんて居た?

 ヘルちゃんも心当たりは無いみたいだし…


『……聖女というのは可能性の塊だ。神の期待に応え続ければ女神となり、星の為に戦い続ければ星の巫女、そして邪に堕ちれば咎人となる。その中でも、己の信念の為に長きに渡り戦い続けた聖女は…大聖女となるのだ』

「うん、大聖女って誰です?」


『イリアスたん』

「あぁ、リアちゃんですね。触ったら駄目ですよ」


『きひっ、もちろん。遠くから見れたらそれで良い』


 そういえばリアちゃんも聖女だったな。元って言っていたけれど…

 そもそも閻魔は見てどうするんだ?

 男って感じしゃあ無いからなぁ…

 恐らく性別とかは無さそうか。


「閻魔さんって普段何をしているんですか?」

『裏世界の勢力拡大』


「仕事していたんですね。まぁ居ないよりは居た方が良いので、行きましょうか」


 玉座の間から出て、次元転移を起動…いや、今の身体じゃ駄目か。いやいや、生身の身体に移行したらどうなるか解らない。最悪死ぬかも…でもヘルちゃんは人形だから、ヘルちゃんだけでも戻った方が良いか。


「ヘルちゃんの身体は人形だから、おかぁさんの部屋に行こっか」

「えぇ…でも閻魔が居るから不安しか無いわ」


『私はルゼルの部屋には入れない契約だ。入ったら死ぬ』

「じゃあ試しに入りなさい」


『それはご勘弁を。まだ生きたい』


 ヘルちゃん人形にイタズラしたら私が黙っていないよ!

 私がイタズラするんだから!

 ヘルちゃんまだイタズラしていないからちねらないで。


「じゃあ閻魔さん先に行って下さい。私達は後程合流します」

『きひっ、では後程』


 閻魔はスーッと消えていった。

 ……ヘルちゃんが杖を振り回したら、ボコッと何かに当たった。


「おい閻魔、早く行きなさい」

『くーん』

「ぶひぶひ」


「……なんだ犬と豚か、とりあえず殺すわね」


 ヘルちゃん、本当に犬か豚も知れないからボコボコにしちゃ駄目よ。

 犬と豚? どっちかが閻魔だよな。


「……おい雌豚、何しにきた」

「お手伝いぶひ。もう終わっていたから悲しいぶひ」


「とりあえず時間無いから黙って付いて来い」

「了解ぶひ」

「じゃあこっちが閻魔ね」


 ヘルちゃんの本気の振り下ろし。メコッとなんかヤヴァイ音を立てて、何かが飛び散った。

 …なんだ血か。


『キャンキャンっ』

「……アスティ、本当に連れて行くの?」

「まぁ仕方ないよね。今のところは害は無いし」


「私の精神に害があるわ。こうなったらイリアスさんに丸投げね」

『リアちゃんは天異界の人だから難しいかもね。接触があれば裏世界と繋がりがあると思われるし…』


「でも天異界の総帥はルゼルさんと友達なんでしょ?」

「天異界も一枚板じゃないんだよ。閻魔さんは天異界総帥とはお友達なんですか?」

『…妹。間違えた、会った事なんて無いきゅるん』


 ……今のは聞かなかった事にしよう。

 よし、ルゼルの部屋に到着したので、閻魔とは別れて部屋に入って咎星剣は…収納出来たな。ヘルちゃんを寝かせて先ずは幼女の部屋に向かおう。


「あっヘルちゃん、この雌豚も殴っておいて」

「分かったわ」


「あぁぁあん! もっとぉぉお!」

「…なんかこれ私が損するだけね。おやすみなさい」

「まぁ、そうだね。おやちゅみなさい」


 ヘルちゃんは幼女の部屋に行ったか。

 不安だなぁ…でも行かなきゃ。


「雌豚、行くぞ。次元転移」

「かしこ」


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