あー、死ぬー
この魔法陣…一つ一つが超位魔法並みだ。
なんだよこれ…
『我等には、勝てぬよ。汎用型魔法陣は、金色の世界ルビアを天異界序列二位まで押し上げた技術』
「死にまくっている癖によく言うよ。黒異天体」
ルビア、か。やはり天明が使う魔法はルビアの魔法か。リアちゃんやイッきゅん、そしてGの故郷…
序列二位ルビアは魔法の技術が最も進んでいるといわれ、序列一位アスターは武器等の武力が最も進んでいるといわれているらしい。
『果たしてその小さな星でどこまで持つかな? 大禁術・深淵樹海』
汎用型魔法陣が一気に数十個、緑や黒に輝いた。
発動が早い…それにこれは、上位の環境魔法。
瓦礫から黒い樹が伸びていき、暗く深い森が形成されていく。
これは生命力吸収に、森が攻撃を仕掛ける魔法か。
「これくらいならぶっ潰す。黒異天体、超重力」
星を消費して重力場を発生。黒い樹が自分の重さに耐えきれなくなってバキバキに折れていく。ついでに潰されている深淵樹海を引き寄せて吸収。黒異天体の中に深緑の星を作った。
『まだ行くぞ。大禁術・深炎火山』
魔法陣が赤や黒に輝き、大きな火山地帯が現れた。黒いマグマが流れ、異臭が酷い。
本来ある地形を生かす魔法というより、魔法陣が地形を形成しているから…魔法操作が尋常じゃない事が解る。
「…私に力を使わせる気か? 黒異天体・全方位重力」
火山ごと一点に集中するように重力で押し潰して、黒異天体の星に赤い星を追加させる。その間にまた魔法陣が輝いた。
今度は青と白…
『大禁術・白銀冷傑』
火山の次は雪原か。さっきとは違って魔法の順番もバラバラだし…何かを試すような…
「でも、全て防がないと危険か…黒異天体・次元圧縮」
天明ごと次元をギューッと圧縮して……一気に解放!
耳が割れるような音が響いて、視界の景色がぐにゃぐにゃしたりヒビが出来て割れたり……これは保護しているとは言え、私が星を壊しそうだな。
『がっ…あっ…力だけ、なら、破壊神をも超えて…いるのか…』
「さぁて、このままじゃジリ貧だな……負の根源が解除出来ないのが、何か嫌な予感がするし…」
『我等も、力だけが上がっても…暴走…しかねん』
一応天明は黒異天体で死ねば力は削げる。削げるけれど、耐性が上がったら万が一勝てる見込みが無くて逃げる場合に困る。
逃げる場合の事を考えている時点で弱気だなぁとは思うけれど、天異界同盟の総攻撃なら完全に倒せる気がするんだよ。
だから私は天異界同盟に丸投げすれば勝ちなのだ。
「んー…なんか力だけは沸き上がるんだよなぁ…まるで裏世界から流れてくるみたいだし。いや、こりゃ流れてんな……ぁ……」
『ぐっ…まだ、超えられぬのか……まさか……大禁術・白羅砂漠』
「あー…大変な推測を立ててしまった……事実なら、私も討伐対象かも…」
まずい事態だ。いや推測なんだけれど……
浄化の砂に埋もれながら、今後について考えるけれど…先ずは黒異天体でこの砂漠を対処する事が先決。
全方位重力で凝縮させながら、砂同士を結合させてさらに圧縮。
天明も巻き込んではいるけれど、復活するのは見慣れた光景だよ。
『くっ…ククッ…さて、お遊びは終わりだ』
残りの魔法陣が、全て輝いた。
モノクロの世界に迷いこんだような…白と、黒。
「全部、壊してやるよ。っ! なんだ…身体が…」
身体が、言うことを聞かない。
胸が焼けるように熱い…この感覚は覚えがある…
あぁくそ、こんな時にオーバーヒートかよ。
『待っていたぞ! 神位魔法・光闇の大聖悪堂!』
立つ力も抜け…ぺたりと座り込んで、白と黒の巨大な教会のような建造物を見上げた。今までとは、段違いだよ。
黒異天体じゃあ吸収なんて出来ない。
神位魔法…ちょっと、こりゃ周りを気にする余裕なんて無いな。
「はぁ…これは私もどうなるか解らないけれど…みんな、逃げてね」
『この、魔法は、全ての光と闇を、反転させ、差が大きい程、ダメージが上がる…』
「ははっ、私なんか反転した時点で死ぬじゃねえか。黒異天体・全解放!」
死ぬくらいなら、もう全部解放してやる。
次元を歪ませ、歪んだ点に全方位重力場を設置。
空間を食い破るように圧縮し……解放と同時に天命が放った大禁術も大解放!
『お前は死ぬ運命にある! 全反転!』
あ……本日何回目になるかわからないぶっ飛び中。
吐血でうまく息ができないし、目も見えないし鼓膜も割れた。
これ、死んだかも。
痛みで感覚が無いからわからないけれど、身体も手くらいなら吹っ飛んでいそうだし……天明の攻撃もろに食らったなこりゃ……
『アスティ……よく、頑張ったな。エナジーヒール』
……正直どうなったかわからないけれど、何か柔らかいものに受け止められた。
私の原形は留めているのだろうか……五感で生きているのは触覚だけだ。
でも、この魔力はハッキリ分かる。
「……か…さ…」
『治りが遅いな…無茶し過ぎだ』
ママン。
待っていたよ。
なんか、安心したら……眠くなってきた。




