えー…ショックー…
「「「ありがとうございましたー!」」」
ふむ…ハイソックス、ニーハイ、ルーズソックスなど好みで選べるのか。タイツの子は…居た居た。
「ミズキさんは何派ですか?」
「紺のハイソ。レティは?」
「生足派です。ですが私は生足を他人に見せたらみんなに怒られるので、ロングスカートに普通の靴下です」
「いつも普段着変わらないもんねぇ……水着とかどうするの?」
「無人島に行きますよ」
「えー、私もいきたーい」
可愛い店員さん達を眺めながら、ミズキの旅路を聞いていた。
私と別れた後、黒鬼族に襲われて返り討ちにしたらしい。
「エルドラドで食べる物とかありました?」
「無かったよ。一応収納リングに非常食は入れてあったから助かったけど、本当に何も無かったねー」
「良かったですね。エーリンは…黄泉の国で楽しくやっていると思いますよ」
「うん…私…本当に帰って良いのかな? エーリンちゃんの事を思うと悲しくて…」
エーリンは死んだ事になっている。店員さん達の悲しい顔を見るのは辛かったけれど、エーリンはもうこの世界に来ないと思うし。
ヘルちゃんにはバレているけれどね。
「帰って良いんですよ。因みにいつ帰るんですか?」
「うーん…本当なら直ぐ帰りたいけど…寂しいというか…」
「じゃあ明日にでもヘンリエッテも連れて行けば良いじゃないですか」
「まだ姫は勉強中だし…それに、帰ったらもう二度とここには来れないじゃん」
「ん? そんな事言いました?」
「えっ?」
地球で暮らすのは簡単じゃないから、この前喧嘩したんだよね?
道を歩く場所も決められているらしいし。
ミズキとヘンリエッテがキャッキャウフフしながら地球旅行を満喫するのを私が指を咥えて見ていると思ったら大間違いだよ。
「まぁとりあえずの問題はヘンリエッテの暮らす場所ですが、ミズキさんの家は難しいんですか?」
「難しいね。身分証の無い外国の女の子とか、警察…ここで言う騎士団に相談する案件だよ」
「ふーん。リアちゃん、身分証って偽造出来ませんか?」
「出来るけど、書類が多いから時間が掛かるかなー。アスきゅんママなら簡単じゃない?」
「おかぁさんに頼むと私の家まで用意してくれそうなので悩み中なんですよ」
「良いじゃないの。甘えられる時に甘えないと。どうせ大人になったら喧嘩するんだから」
「それはリアちゃんとイッきゅんですよね。それにちょいちょいこの世界で喧嘩するのやめて貰えませんか? ラジャーナが荒れ放題なので人々の生活に支障が出ています」
「何事にも犠牲は付き物よ」
やめる気は無いと。
喧嘩が終わったら仲良しになるから凄いよなぁ。
おっ、制服姿の黒髪女子が近付いてきた。
「おかわりなど、いかがですか?」
「じゃあデラックスパンケーキを下さい」
「はい…」
「あっ、カスミー笑顔笑顔っ」
「は、はいっ」
黒髪女子がなんでこんな事しているんだろう的な顔をしているけれど、リアちゃんの機嫌を損ねたら故郷に帰れなくなるぞー。
「あっ、そうだヘンリエッテ」
「なになにー」
「ちょっと写真撮らせて」
「今は駄目。なんで?」
「身分証に写真いるからっと、これで良いか」
「駄目って言ったのにー」
写真を確認…バッチリ決め顔じゃねえか。
まぁ良いや。
「あっ、その…レティの写真欲しい」
「私のは…ムルムーに言えば貰えますよ」
「最近ムルムーちゃんが何処にいるか解らないんだよね」
多分そこに居る。
透明ムルムーはカウンターに立って私を凝視していると推測。
少し手を伸ばすと、指先をペロンと舐められた。
ここか。
「ムルムー、写真欲しいんだって」
「…御意」
「うおっ! ムルムーちゃんそこに居たの? あっ、お金払うから裏美少女アルバム欲しいな」
「…御代は一億ゴルドかミズキ様の脱ぎたてパンテー」
「一億かぁ…パンテーで払うよ」
「…まいど」
ミズキがパンテーを脱ぐ為にバックヤードへ消えていった。
ムルムー、早く行きなさい。
「えー、良いなーミズキ。私もパンテー払えば貰える?」
「…いや、それはちょっと…」
「なんでよっ。これでも王女なんだよっ!」
「……は? だから?」
「きぃぃ! ムルムーさんには私の良さを身を持って知って貰う必要があるわねっ!」
「……ミズキ…駄目だよそんな…私には婚約者が…だっ、だめぇ。それに…私達…んんっ」
「はぁぁぁあ!? 何故知っているぅぅ!」
「…観ていたから」
「いやぁぁ! 恥ずかしいぃぃ!」
ヘンリエッテもバックヤードへ消えていった。
ムルムー、あんまり苛めちゃ駄目だぞっ。
「あっ、そうだムルムー。ベアトリスクとコーデリアが失踪したらしいけれど、何か知っている?」
「…不穏な魔力を感じたという報告は受けています」
「不穏な魔力か。調べてみるか。因みに誰からの報告?」
「ステートレイラ様です」
「ステラさんね。ありがと」
プレオープンも落ち着いてきたから、とりあえず帝都に戻るかなー。
「姫様、お供します」
「場を荒らさないなら良いよ」
「ふっ、そんな事しませんよ。これでも専属侍女ですから」
「じゃあ先ず透明化を解いてよ」
「「……」」
……無視すんなや。専属侍女の癖に私を放置し過ぎだぞ。
まぁ、どうせ付いて来るから良いか。
ロンロンを出て、女子寮で転移ゲートを設置しよう。
ロンロンの直ぐ裏手……扉が複数あるな。
従業員用、来客用、アスきゅん用、秘密の扉。
秘密の扉が気になる。
「姫様、秘密の扉は十八禁の姫様しか入れません」
「それ言うな。何処だムルムー…ライラが居ないから解らないぞ」
匂いまでは消せないからライラが居れば捕まえられるのに…
「実は私…う○こも透明なんですよ」
くそっ、隙を見て耳元で囁いて逃げていく…
仕方無いのでムルムーを無視してアスきゅん用扉を開けた。
少し長い通路を進むと、扉が三つ設置された場所に到着。
パンパン、幼女の家、アスきゅんの部屋と書かれていたのでアスきゅんの部屋に入ってみた。
ベッドや本棚等があるスタンダードな部屋…ここは本当に私の部屋で良いのかな?
だとしたらありがたい。
パンパンの私の部屋は常に誰かが潜んでいるから使っていないし、ここは一人になりたい時に過ごそう。
ムルムーが居るからこの部屋はまた後で。
パンパンの扉に入ってみた。
……お? 幼女の部屋直通だ。
「アレスティアー、おかえりんこ。ご飯食べさせての」
「アテアちゃん帰っていたんですね。店員さんに拐われたから今日はもう会わないと思っていました」
「言い忘れていた事を思い出したから戻って来たのじゃ。褒めての」
「ふーん、内容によります」
「大地の王が倒されたのじゃ」
「へぇー……えっ? 誰が、ですか?」
大地の王? マジで? 最強種だよね。私の知り合い以外で倒せる人居るの?
…私が倒そうと思っていたのに……えっ…じゃあ生命の宝珠は?
「あっこら辺は星のバランスが悪いから、詳しくは知らぬよ」
「じゃ、じゃあ…生命の宝珠は、手に入らないんですか?」
「まぁ手には入る。因みに王種は死なぬが…大地の王が復活するまで千年は掛かるの」
「えー…千年…」
千年とか長過ぎ…
えー…ふて寝するかなぁ…
いやでも誰が倒したのか気になる。
えーでもショックだから何もしたくなーい。
とりあえず幼女の二の腕を枕にしていじけるか。
「アレスティア…もぅっ、いきなり抱こうとしたらドキドキするじゃろっ。アレスティアー…アレスティア?」
「すーすー」
「むぅ……寝おってからに…先に寝るとちゅーしちゃうぞえー……むぅ…アレスティアーアレスティアーアレスティアー」
「……ふて寝中なので起きませんよ」
「いやー構って構って構ってー」
「生命の宝珠が手に入らないので辛いんです」
「いや、手には入るぞえ」
「千年後ですよね?」
「いや、通販で買えるの」
「……は? 通販?」
何言ってんの?
通販? あっ、他世界から買うって事?
他世界にもあるの?
「今から頼んでやるから構っての」
「はいっ!」
まじで?
やった。
よしっ、復活しようっ!




