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新しい場所へ。

 ……今日は土の日。

 国語の講義。

 教室へ行き、後ろの席へ。


「あ、アレス君…おはよう」

「おはよう、ミーレイちゃん」


 先週と同じ様に、ミーレイちゃんが隣に座る。

 青い髪に白いお花の髪飾り、可愛いなぁ。

 服装もおしゃれ…今日はデートかな?


「ホワイトベルの髪飾り、可愛いね」

「あ、ありがとう…」


 恥ずかしそうにして…やっぱりデートかな。

 男子諸君、ミーレイちゃんはデートらしいよ。

 そんなに見ても、望みは無いよ。



「アレス君おはよう。……ん?」

「フラムちゃんおはよう」

「……」


 フラムちゃんとミーレイちゃんが見詰め合っている。

 何か通じ合う物があるのかな?

 …私も混ぜて下さい。


 フラムちゃんがミーレイちゃんの反対側に座る。

 男子諸君、睨まないでおくれ。三人共女の子だよ。

 そういえば、フラムちゃんに言って無かったな…ミーレイちゃんに顔見られたって。


「アレス君、今日は『パンパン』に行くの?」

「んー、今日は用事あるから行かないかな」

「そ、そっかぁ…」


『パンパン』でパンケーキを食べたいけど、鉱脈を探したい。

 日帰り出来る距離に何個か候補があるから。

 ミーレイちゃんは残念そうにしている。

 奢って欲しかったのかな?デラックスパンケーキは駄目だよ。銀貨1枚だから。 鉱脈を見付けたら良いけど…


 どうしたの?フラムちゃん。

 先週『パンパン』でミーレイちゃんと偶然会ったんだよ。

 ……明日仕事終わったら行こうね。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 講義が終わり、二人にバイバイして学校を出る。

 今日は着替えずにそのまま転移ゲートへ。

 辺境の街ラジャーナに到着。


 今日は北門から出て、北の森を抜けた先にある岩山を目指す。

 北の森は出現する魔物が違う。

 ウルフやベアなどの獣系が多い。


 駆け足で森を抜けて行く。

 オークとか足が遅い魔物は撒けるけど、足が速い魔物は付いてくる。


 後方から一定の距離で付いてくる魔物…数は五。


 少し開けた場所に到着。

 振り返ると、ウルフ系の魔物。


「あれは、シャドーウルフ。ランクはCだっけ」


 広い場所なら余裕。

 シャドーウルフが徐々に距離を詰めて来る。

 私はライトの魔法をシャドーウルフの上から落とす。


『――キャイン!』

 スパッ!――

 怯んだ隙に二体斬り落とし、視界を奪われた三体も直ぐに斬り捨てる。

 魔石を回収。

 また駆け足で森を進む。

 シャドーウルフは夜行性だから光に弱い。でもなんで昼間に活動していたんだろう。


 森は直線で30分も進めば直ぐに終わりが来る。

 森を抜ける間に10体のウルフを倒した。

 中々森には来ないから、これが普通なのかは解らないけれど、今の所は順調かな。


 木がだんだんと減っていき、草原になっていく。

 草原は私の腰位の高さ。少し動きにくい。

 右に進むと沼があるので、近付かない様に左側に向かって進む。


 途中でオーガと同じ高さのイノシシ型の魔物に遭遇。

 睨み合い。


 突進してきた。


 ギリギリまで引き付けて…

『ブルル!』

「――無元流・脈流!」

 横に飛び、すれ違い様に血管を斬る。


 毛皮が厚いけど、竜剣の斬れ味には敵わない。


 ダラダラと血が流れ毛皮が赤く染まっていく。


 痛みと流血で動きが鈍ってきた。

 これなら近付いても反撃は受けない自信がある。

 素早く近付き、鼻を落とす。

 イノシシが痛みに叫ぶ中。

 剣を振り上げ、

 ザシュッ――

 首に向かって振り下ろす。


 少し暴れていたけれど、直ぐにイノシシが沈黙。

 近付いて魔石を取り出した。



「イノシシ魔物は、ランクCだっけな…名前忘れた」


 イノシシは、肉が売れるけれど持てないので放置。

 遠目にある岩山の方角へ駆け足で向かう。


 徐々に草原の高さが、腰から膝へ。

 そして草がまばらになってきた。



「着いた、かな」


 地図にあった岩山。

 岩山は反り立つ壁の様に、直角に立っている。

 登れる場所は少ないけれど、登れない事はない。

 岩の窪みに手を掛けて、少しずつ登って行く…ロッククライミングというものをやってみよう。

 岩山を登るのは初めてだけど、日頃ダイエッ……訓練している私としては、簡単な事。


 いや、ねぇ、仕事上がり『パンケーキのお店パンパン』に入ってしまうんですよ……今週は無火水の日が仕事だった訳で……仕方無いんですよ、帰り道なんですから。

 つい、入ってしまいます。

 そこで店員のお姉さんにパンケーキを食べさせていたら、いつの間にかカウンターの端っこが私の指定席になってしまいました。

 今では、カウンターの端に予約席という紙が貼られる様になり…常に可愛い店員さんが目の前に居る状況に…眼福します。



 そんな事を考えている間に、大きな窪みに到着したので少し休憩。

 下を眺めていると、何やら大柄な魔物が見えた。


「あれは…イノシシを食べているのかなー…あれ?」


 あれあれ? あれ? イノシシってオーガくらい大きかったよね?

 魔物の膝くらいの大きさに見えるのは気のせいかな?


 オーガを三メートルとすると……五体分? ……15メートルのクマさん。


「10メートルだと…デスグランドベアー…15メートルだと…なんだっけ?」


 お食事中なので、見つからない内に登ってしまおう。

 大きな窪みからは、割りと緩やかな崖。

 足を上手く使ってスイスイ登っていく。


 岩山の上に到着。

 上には何も居ない、あるのはお花や草やら大きな水溜まりやら。

 このお花は…綺麗な青色…高山に咲く孤高の花ブルークイーンだ!


「おぉぉ……綺麗やなぁ!」


 持って帰りたい!こういう時の為に土入りの鉢を入れているんだ!

 ……でも根が岩に絡まっているな。

 丁寧に丁寧に…取れた…

 ふふふ……可愛い。


 鉱脈は後回しだ。ブルークイーンを採取しよう。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ……岩がぬくぬくして暖かい。

 眠くなってきた。いや、寝るのは駄目だ。

 眠気と闘いながら、10株取れた。店長にもプレゼントしよう。


 採取は終わり。また来れば良いし、少し探索しよう。


 草は何処にでもある草。風で種が飛んできたのかな。

 綺麗な水溜まりを見てみる。5メートルくらいの窪みに雨水が溜まっていて、隙間から水が漏れてブルークイーンの所まで届いている。

 ……いや、水溜まりならこんなに綺麗な筈が無いね。

 冷たい…湧き水かな。だから高山に咲くブルークイーンが咲いていたのかな。だとしたら、ここは凄い場所だ。


 大事にしたい場所。

 開拓されたら、ここは無くなるのかな……



『――グオォォォ!』


 ここまで響く咆哮。

 まるで、自分の存在を示す様な…『ここに居るぞ』と。


「…そんなに騒がなくても、解ってますよ」


 岩山の上から見下ろす。

 先程、イノシシを食べていた大きなクマ。

 こちらを睨む様に見据えている。

 怒っている。私が見下ろしているから。


 そうは言っても、ここ高いんですよ? 飛び降りたら死にますからね。

 大きな岩に、ロープを取り付ける。

 長さ足りるかな?


 ロープを伝って滑り降りる。


 ……中腹の大きな窪みに到着。


 着地地点で待っている…そこに居たら邪魔なんだけど。


 ロープは足りるから、ギリギリまで降りる。

 光の魔力を練りながら片手でロープを持って、指先をクマの頭上へ。


「退かないと、死にますよ! ――ソルレーザー!」


 キイィィィイイ!――

 光の塊がクマの頭上から落ちる。

 眩しい…今の内に飛び降りよう…壁を蹴ってクマから離れた場所に着地。


 今の内に距離を取ろう。


 光が晴れて、ブスブスと煙が発生する中。


 寸前で躱して、毛先が焦げたクマの姿。

 真っ黒い毛皮に包まれた、立ち上がると体長15メートルの大きなクマ。

 お腹の部分が稲妻の様に、赤いギザギザの模様が見える。

 そして、私を見据える真っ赤な瞳。


「思い出した。Sランク…フェルドフレイムベアー」


 火炎の熊という名前の通り、炎を操るクマさん。


 どうしてこうも、新しい場所に行ったら強い魔物に出会うのか。



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