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みんな景品の為に頑張れー

 

「フリシアちゃん、なんか食べよっか」

「はっ、はい! ありがとうございました!」


「ん? うん、良かったよ。おっ、来た来た」

「わぁ…綺麗ですね…」


「良いねーあの冷たい雰囲気。流石は氷魔法の使い手だ」

「本当は凄い優しいのに…勿体無いです」


 ヘンリエッテとミズキが会場にやって来た。ランネイさんも居る。

 会場が一瞬で静まり、ヘンリエッテの動向に注目していた。

 ヘンリエッテは微笑を浮かべ、威圧感満載…恐らく装備品の効果で威圧感が増加していると思われる。


「わたくしが来たら静まり返って…ふふっ、嫌われたものね」

「よそ者は帰れという事でしょうか。姫、帰りましょう」


「そうね。楽しい楽しいパーティーだったわ」


 静寂の中…ヘンリエッテの声が妙に響き、踵を返そうとした所で奥から走ってくる足音が響いた。


「ヘンリエッテ王女っ、お待ちになって!」

「……あら、誰かと思えばグランプリ優勝者さんじゃないですか。わたくしに何か用ですか?」


 アレスティアさんが現れた。奥から来たという事は…ヘンリエッテが来るまで待っていたな。最後に現れて注目される気満々だったのだろう…ミーたんよ、帰ろうとする以外のレパートリーを出さないと減点だぞっ。

 あっ、ヘンリエッテがチラ見してきた。減点だな。


「パーティーは始まったばかりよっ、帰るにはまだ早いわっ」

「ふふふ…パーティーの内容も知らされずに来たので、もう終わりかと思いました。で? この催しは何をする場なのですか?」


 ヘンリエッテがパーティーの存在意義に斬り込んだな…そのタブーを言ったら駄目なんだぞっ。

 パーティーは人脈を広げて嫌いな奴を見下す不毛な場だからねっ。


「それは、楽しむ為よっ」

「なるほど、では今が楽しい時ですね」


「いや、これからじゃない…」

「会場に入れば誰もが口を閉ざし…帰ろうとしても未だに他国の姫以外は止めない。本当に楽しいですね」


「み…みなさんも帰って欲しくないわよね?」


 アレスティアさんが凄い不安そうだ。一応会場の人はウンウンと頷いて、公爵家のなんとかさんが歩み寄ってきた。


「私はヘンリエッテ王女と交流を深めたいと思っております。もし宜しければ私とお話しませんか?」

「…ええ、良いわよ」


 ヘンリエッテはまぁまぁ良い感じに飛ばしているな。アレスティアさんは公爵家のなんとかさんに見せ場を取られてしまっているな…可哀想に。

 ……ミズキとアレスティアさんが見詰め合っている。転移者同士話をしたいのかな?


 ヘンリエッテが移動すると、貴族達もぞろぞろ移動を始めた。

 おっ、奥からコーデリアが覗いている。そもそもコーデリアは何しに来たんだ?


「フリシアちゃん、ヘンリエッテの近くに行こっか」

「はい、なんか…凄いですね。女って怖いなって思いました」


「一応ヘンリエッテも色々渡り歩いているからね。そろそろ皇族が現れる筈だけれど…おっ、来た来た」


 奥の方に移動したので、私とフリシアちゃんも移動していると…ホールの奥で音楽隊による演奏が始まり、貴族達が身体を向ける。


 奥から出てきたのは、第一皇女ヴァランティーヌとその侍女さん。相変わらず偉そうな立ち振舞いだな。


「皆さん、お楽しみ戴けているでしょうか。今宵は国の垣根を越えて交流を深めていければと…では、美少女グランプリ優勝者のアレスティア王女から、一言お願い致します」


「はい、私アレスティア・フーツー・ミリスタンは…美少女グランプリ優勝という栄誉を抱え、フーツー王国に凱旋したいと思います。ですがその前に…今宵は皆様との出会いを大切に出来ればと思っております。短い時間ではありますが、宜しくお願い致します」


 パチパチパチパチー。よく出来ましたー。

 アレスティアさんは度胸があるなぁ。何処ぞのヘタレ転移者とは大違いだよ。


「ありがとうございました。では、グラスをお持ち下さい。催しの途中ではありますが、帝国、フーツー王国…アース王国の繁栄を願って…乾杯!」


「「「乾杯!」」」


 かんぱーい。ってグラス持ってねぇよ。乾杯するなら先に言えよ。

 おっ、なんか明るい雰囲気になったな。

 流石は次期皇帝候補。

 乾杯も終わり、位の高い順に挨拶へと向かっていく。

 最初はアレスティアさんかな。


「あっ、あの私達も挨拶に行くんですか?」

「行かないよ。話す事無いもん」


 一応この会場の中で、幼女使いの私が一番偉いんだよね。

 なんてボーッと思っていると、第一皇女とアレスティアさんの会話が終わり、貴族達がヘンリエッテをチラチラ見ている。


 普通に考えたら招待された側であるヘンリエッテが第一皇女の元へ行くんだけれど、ヘンリエッテは公爵家の人と普通に喋っているな。

 …行かないのか……そんなに景品が欲しいのか。

 仕方ない…この空気が面白いから景品を追加しよう。


「あ、あのヘンリエッテ王女…行かないのですか?」

「何処へ?」


「ヴァランティーヌ様の所…ですが…」

「…そうね。行こうかしら」


 公爵さんがホッとしている。焦らしプレイなんてやるねぇ。

 ヘンリエッテが第一皇女の元へ向かうと、人垣が割れる割れる…良いなーあれやりたい。


「ごきげんよう。一年振りですねヴァランティーヌさん」

「…ごきげんよう。前と印象が違うみたいだけれど、良い事でもあったのかしら?」


「ええ、それはもう良い事があり過ぎて困っているくらいですよ」

「あら、聞かせてもらえない?」


「一番はやはり…女神様とお友達になった事ですね」


 ざわっ! としたな。いきなり爆弾投下したか。


「そ、そう。良かったら私にも紹介して貰えない?」

「私の親友の天使様が了解すれば良いですよ」


「天使様? 是非ともお会いしたいわね」

「ふふっ、もう天使様には会っている筈ですよ」


「…あら、誰かしら?」

「去年、ここの庭園に呼び出した平民の女の子に覚えはありませんか? 不思議な力を持つ女の子です」


「……」


 おー、第一皇女さんの顔が引きつっている。

 気付いたな。本物のアレスティア王女が天使アレスティアなったという事に。


「ふふっ、ヴァランティーヌ様のお力添えで彼女はアース王国へ行き、私はとても仲良くなれました。その節はありがとうございました」

「え、ええ…出来れば、もう一度会いたいわ」


「そうですねぇ…彼女は気まぐれなので、予期せぬ時に来ると思いますよ。ではまた後程」


 ここだよー。

 ヘンリエッテの嫌味挨拶は中々良いね。景品をまた追加だ。

 その後、貴族の挨拶は上の空だったな…良いね。心中お察しすると楽しいよ。


 ホールの中央でダンスが始まった。

 アレスティアさんと、あれは第二皇子か……ん? 第二皇子は私の正体を知っているから、アレスティアさんが偽物だって知っている筈だぞ?


 んー? なんかお二人さん、幸せそうだな。愛し合う二人みたいなゲボい雰囲気…会場のみんなも微笑ましく見ているし……


「あっ…」

「どうしました?」


「いや、第二皇子は良い感じに洗脳されているなーってさ」

「えっ…大丈夫なんですか?」


「うん、幸せそうだから良いんじゃない?」


 恐らく第一皇女の闇の魔眼の効果だ…

 よしっ! 見なかった事にしよう!


 うん、なんかハッピーだし。

 二人の仲は邪魔しないようにしよう。うん、そうしよう。


 現在ヘンリエッテの景品は三つ…ドレスと靴とイヤリング。

 ミズキはまだ無し。

 ランネイさんは何処行った?


「白雲さん、ランネイさんはあそこに居ますよ」

「普通に仲の良い貴族さんと会話中か…ちょっと行ってみようか」


「なんか解らないですけど、楽しくなってきました」

「良いね、素質あるよ」


 ぐるっと迂回してランネイさんの元へ。


「そうなんですよ。たまたまヘンリエッテ王女にお会いしましてねー」

「羨ましいわ。どんな話を?」


「ただの世間話ですよ。そうそう、姪が会社を立ち上げるみたいなので、応援宜しくお願いしますね」

「あらっ、姪ってまだ若いのよね? どんな会社?」


「それは…あっ、丁度良かった。こちらの方と共同で出資しますの」

「どうも、白雲と申します。ランネイさんの姪のミーレイちゃんは服飾関係の会社ですよ」


 ここで知名度を上げて貰えれば、ミーレイちゃんは半泣きになりながら会社を立ち上げるね。

 人気の会社になるには、貴族のご婦人方との繋がりも必要か…


「あら、服飾関係は中々厳しいって話よ。商業都市から安物の服が流通しているからね」

「それは存じています。一般的な服で勝負はしませんので」


「へぇ、どんな服かしら?」

「それはですね……」


 こそこそ話で伝えよう。

 私達の話を聞いている人も居るし。

 魔導ブラジャーやゴン・ジーラスの名前を出していく。


 因みにゴン店長は安物の粗悪な服が流通している事が嫌みたいで、ミーレイちゃんに協力的だ。会社が出来ればパンパンを卒業した女子の雇用に繋がるからリアちゃんも協力的…もうミーレイちゃんの外堀は埋められている。


「まぁっ! それは凄いわねっ! 協力するわっ!」

「私も!」


「ありがとうございます。あっ、これ試作品ですがどうぞ」


 手提げ袋に入った魔導ブラジャーを渡したらご婦人方は大喜びだ。うん、まだまだ若いねー。


「彼女達は信頼出来るわよ」

「感謝します。ランネイさんは景品ゲットです」


「やった!」


 おめでとうございます。

 さて、後は…皇帝が来るまで待とうかな。


「フリシアちゃん」

「はい?」


「踊ろっか」

「えっ…ダンス出来ませんよ」


「適当で良いよ。あっ、折角だし…」


 少し冒険してみよう。

 白兜をスポッと脱いで、イケメン眼鏡を解放。更にイケメンメイクもしてあるから、至近距離で見てもアレスティアには見えない。私に気付く人は居ないと自負しているよ。

 ふっ、どや。俺様ツンデレ系メイク…頑張ったんだぞっ。


「えっ……」

「どう? 格好良いでしょ」


「は、ふ、ぁ…ぃ…」


 フリシアちゃんの顔がどんどん赤く…流石に至近距離のイケメン眼鏡は刺激が強いかな。

 まぁやめないけれどねっ。


「フリシア…おいで」

「ぅっ…やばっ…幸せ…」


 折角来たんだから、フリシアちゃんも楽しもうではないか。

 きゅんをくれたら景品ゲットだぞっ。


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