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歩いて城へ

 

「……ねぇヘンリエッテ、馬車に乗って行かないの?」

「……馬車が無いから仕方ないでしょ」


「でもこういう場合、アース王国の王女を出迎えもせずに歩かせた帝国に非難が行くんじゃない?」

「滞在場所を知らなかったから仕方ないでしょ。道中に私だってバレなきゃ大丈夫じゃない?」


「バレているよ。ほらっ、早朝なのに女子達が集まってきた」

「えっ、まだ五時だよ? 早くない?」


「女子達の情報網を甘く見たら駄目だよ」


 早朝の大通りを私、ヘンリエッテ、ミズキ、ブリッタさん、侍女さんが城へ向かって歩いている。

 ヘンリエッテは帝都を歩けるから嬉しそうだな。

 見送る女の子達が手を振り、ヘンリエッテが手を振り返すとキャーキャー言って楽しそう。

 ミズキも手を振るとキャーキャー言って楽しそう…


「朝だから声援が響くね。レティも振ったら?」

「私の時にシーンとなったら帰りますけれど…それでも良いのなら…」


「じゃあ振ったら駄目っ! あっ、衛兵さんが来た…なんか引き返して走っていくよ?」

「上に知らせるんじゃない? ヘンリエッテが歩いて城に行くのは一大事と思ったんでしょ。……女子達から見たら歩く王女なんて庶民的で親しみやすいから人気が増えそうだねー」


「…今あざといって思ったでしょ」

「ん? 何も思っていないよ?」


「えっ、それはそれで傷付く…」


 大通りを進んで騎士団を通過していく…

 騎士さん達が胸に拳を当てて敬礼してくれるので、仲が良かった人にはおでこに手を当てて敬礼を返すとえっ…て顔をされた。

 レティの時にしていた敬礼だから気付いたかな?


 出勤の道だったから懐かしいなぁ…

 騎士団の敷地を真っ直ぐ…右手に特事班がある…行きたいなぁ…


「……寄ってく?」

「いえ、休職中なので急に行くと迷惑になります。それに早朝は閉まっていますからね…あっ、誰も居ないのでお土産だけ置きに行って良いですか?」


「もちろん良いよ」

「ありがとうございます」


 よしっ、二人には待ってもらって特事班の詰所へ。

 植木にある鍵を取って鍵を開け、中に入って先ずはみんなの机にアース王国のお菓子を置いておこう。

 それに加えてロバートさんの机には栄養ドリンクとカップ麺。

 ミリアさんの机にはブルークイーンの花油と髪飾り。

 クロムさんの机には…魔力が上がる腕輪。

 レジンさんの机には…うーん…迷宮にあったいらない斧で良いや。

 フラムちゃんの席は…あった、日持ちするおっぱい煎餅を置いておこう。

 クーちゃんの席には幼女秘蔵のビーフジャーキー。

 フーさんの机には丸めたチロルパンツを置いておこうかな。


 よしっ、書き置きをして出よう。


「……」

「あっ、おはようございます。これ鍵です」


「えっ…いや、あの…」

 お久し振りですミリアさん。

 カシャンカシャンと逃げまっせー。


「お待たせしましたー。急ぎましょう」

「どうしたのさ。まぁ良いけど」


 急がないとミリアさんが追い掛けて来るからねっ。早歩きで…あっ、来たー。ちょっと急いでよっ。あっミリアさん全力疾走じゃねえか。


「待ってっ!」

「…ヘンリエッテ、頑張れ」


「もぅ……はい、何か御用かしら?」

「っ…呼び止めてしまい申し訳ありません。私は騎士団の者です…あの、お聞きしても?」


「ええ、どうぞ」

「ありがとうございますヘンリエッテ王女。そちらの白騎士様は護衛ですか?」


「ええ、そうね。ここでは護衛よ」

「…なるほど」


 ここではなんて含みを持たせて言うなよ。

 ここじゃなかったら親友とか言ったらカンチョーするかんな。


「ヘンリエッテ、後でお部屋に来てって言って」

「……はいはい、だそうよ」


「ふふっ、ありがとうございます。では後程伺いますね」


 一応ヘンリエッテを差し置いて護衛が喋れないからね。ルールは守るよ。

 ミリアさんが見送り、私達が歩こうとした所で…やっと迎えの馬車が来た。

 やっとというか、滞在場所を伝えていないこちらが悪いんだけれど。


 なんか高官らしき人が降りてきて、誘導を始めたけれどヘンリエッテは動かない。

 恐らく馬車が小さいから一人くらい溢れるからだろう。みんな一緒に乗れない大きさじゃないと乗らないだろうな。


「王女殿下っ! 大変申し訳ありませんっ! この馬車へどうぞっ!」

「頼んだ覚えは無いわ。今更馬車など不要ね…帰って貰える?」

「アレ…シラクモ、なんであなたが言うのよ」


「是非…乗って戴きたいのですが…」

「何故? 別に徒歩でも着けば良いじゃないの。帝国の手は借りないわっ」

「ちょっと…私が嫌な奴みたいじゃない…ミズキも止めてよ」


「ですが…」

「何? 迎えに来たらホイホイ乗るとでも思ったの? 今更媚びを売ろうとしても無駄よ。帝国がアース王国に働いた無礼を知らないとは言わせないわよ?」

「えっ、何言う気? というかなんでみんな私を無視するの?」


「えっ、いや、それは…」

「本当に知らないの? へぇー、ふーん、そぉー」

「……」


 あれ? アース王国のパーリーでの事は帝国に伝わっていないのかい?

 おっ、ミリアさんが高官に並んで敬礼…なんだ? 目が少し笑っている…面白いネタが欲しそうな顔をしているな。

 ふっふっふっ、良いだろう良いだろう。


「無知なあなた方に教えてあげる。帝国第二皇子はアース王国のパーリーで、婚約予定のヘンリエッテ第一王女とアース国王の目の前で他の女を求めたの。その後…帝国から何も謝罪は無い…どういうつもりかしらね?」

「…シラクモ、別にそれは良いのに…」


「…それは」

「…うわ…それは本当ですか?」


「ええ、更にその場には…聖女、天使、そして女神アラステア様が居た」

「っ! レティちゃんそれ本当!?」


 ちょっと…レティって言うなし。

 ミリアさん落ち着きなされ…楽しそうだな。


「ミリアさん、私は白雲ですよ。情報通の貴女でも知らないとなれば…帝国上層部の極秘事項になりますねー。あーどうしよー言っちゃったぁー」

「くくっ、白雲さんありがとうございました。じゃあ少し確認してからまた伺います」


 またねー。

 ミリアさんに言っておけば楽しくなりそうだな。

 馬車にも帰って貰おう。何派の人か解らないしね、しっし。


 さっ、行こう行こう。

 騎士団を抜け、グランプリが行われるホールを抜け、城に到着。

 城に行く目的はアース王国の王女として、外交官には挨拶しておかないといけないらしい。


「これはこれはヘンリエッテ王女、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

「泊まらないからそこの客間で良いわ。よろしく」

「シラクモぉ…なんで先に喋るのさぁ…」


 ヘンリエッテが泣きそうだが、落ち着く場所に行くまでは勘弁しなされ。回りくどく喋られると時間の無駄なんだよ。


 外交官らしき人に近くの客間に案内され、形式ばった挨拶を交わして終了…早いな。外交官は退室し、しばしのティータイムをしていた。


「ミズキさん、この後の予定はなんですか?」

「帝国祭典ホールに行って、グランプリの準備をして、美少女グランプリを眺めて、表彰式が終わったら城でパーティーかな」


「ふーん。まぁスリルを味わいたいので、護衛としてならパーリーに行っても良いですよ」

「ほんと? じゃあアレスティアと一緒に踊るっ!」


「この鎧カシャンカシャンいうから嫌だよ」

「えー踊ってよー」


「その前にグランプリがあるじゃん」

「むぅ…正直、裏美少女グランプリで燃え尽きたというか…」


 やる気無いのね。

 でもね、優勝しないと後が怖いぞー。


「優勝しないと、裏美少女グランプリでヘンリエッテの下だった私、ライラ、女神幼女が浮かばれないよ」

「……えっ、凄いプレッシャー」


 優勝以外にヘンリエッテの生き残る道は無いからね。

 もし準優勝以下ならムルムーと同じ扱いだからな。

 居ても台詞やらねえからな。



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― 新着の感想 ―
[一言] シュレーディンガーのムルムー… 居るか居ないかは描写されるまで読者視点では確定しない…ッ
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