結果は出たね…うん。とりあえず母娘の喧嘩を眺めよう。
「ママ、私はもう大人だよ。ママの許しなんて必要無い」
「そんな事解っている。でも、アスきゅんは駄目…私が先に出逢ったんだから私がアスきゅんに貰われるわ」
「アスきゅんちゃんは私が欲しいって言ったもんっ!」
「駄目なものは駄目なのっ!」
喧嘩してんなー。よしっ!
「二人ともっ、私の為に争わないでぇっ!」
これ言ってみたかったんだよ。物語で二人の男が一人の女を巡って争うやつ。
「駄目じゃないもんっ! ママばっかりズルいっ!」
「イツハには早いわっ、私はイツハの為を思って!」
ちょっ…無視かよ。
一ミリくらい反応しろよ恥ずかしいだろ…
こらっ、ミズキ笑うなっ。
「余計なお世話なのっ! アスきゅんちゃんが良いっ!」
「だからアスきゅんは駄目なのよっ! アラステアちゃんにしておきなさいっ!」
リアちゃんって面倒見良いから、娘に対しては尚更なんだな。娘からしたらウザイと思うんだろう…
というかリアちゃんは私に貰われる気満々だったんだね。旦那はどうした?
「あの幼女は駄目過ぎて嫌っ! 邪魔するなら私と勝負して!」
「…イツハ…くっ、望むところよっ!」
……熱くなってんなー。幼女は酷い言われようだし…
美少女グランプリはどうなるんだろう…
おっ? リアちゃんとイツハさんが審査員席に座った。
……あっ、審査はするのね。こういう所は律儀だね…親子息ピッタリじゃん…仲良しじゃん…
「ねぇライラ、優勝したら何が貰えるの?」
「えっと…審査員から何か一個ずつ貰える…だっけ」
「へぇ…一個ずつかぁ…うーん…」
イツハさんは解らないけれど、リアちゃんは怪しいおもちゃで、フーさんはエロいパンツで、クーちゃんは肉で、蒼禍は筋トレグッズ、ミズキは謎のお手製アクセサリー、ムルムーはキモい絵本…かな。
おや? リアちゃんが蒼禍にマイクを渡した。もうイツハさんの事で頭が一杯なんだね。
「それでは、結果発表だっ、です」
蒼禍…無理すんな。
おっ、出た出た。
アスきゅん、269点。
ヘルたん、275点。
ライラ、265点。
ヘンリエッテちゃん、270点。
アラステアちゃん、240点。
うわ……可もなく不可もなくという主人公が一番やってはいけない順位になってしまった…
ヘルちゃんは妥当だとして、ヘンリエッテの配点おかしくねぇか? 私がときめかせたんだぞ? もしかして配点操作されてんじゃないか?
「審査員からお話を伺いましょう。フーメリアさん」
「…ええ、レティちゃんは水着審査を無難に攻めていたら優勝だったけど…最高だったわ。ヘルたんは流石というか、観客の求めるものに合わせていった所が素晴らしい」
「ありがとうございます。ではミズキさん」
「あっ、はい。姫、女神様やレティを抑えて二位だなんて凄いです。ライラちゃんは、後で私にも大好きって言って欲しいです」
「ありがとうございます。私もライラに言って貰いたいですね。じゃあ、最後にイツハさんお願いします」
「みんな可愛くて、楽しませて貰いました。それだけに、今まで一人占めしていたママとの決着を着けなければなりません」
「あっ…ありがとうございましたー。表彰は後日ヘルたんに目録を渡したいと思います。これにて第一回裏美少女グランプリを閉会致しますっ!」
蒼禍が空気を呼んで速攻で終わらせたな。
……なんだろう、みんなそそくさと出て行っている。ロンロンの皆さんや関係者は入口から出て行き、パンパンの皆さんもバックヤードへ逃げるように行ってしまった…
「じゃあ、みんなを部屋に連れていくわね」
ヘルちゃんはフーさんとクーちゃん、フラムちゃん達を連れて出て行ってしまった。
ミズキとヘンリエッテも手を繋いで出て行ってしまう…
「ライラ…」
「あっ、用事を思い出したっ」
……裏切りものめ。あっ、蒼禍とムルムーはライラに付いて行った…
残るは、リアちゃんとイツハさんと私…あっ、幼女も居た。
いや、私も出ていこうとしたんだよ…でもね、足が動かないのだよっ。リアちゃん…この魔法を解いて下さい。
「じゃあ…行くわよ」
「うん…負けないから」
リアちゃんの足元に紫色の魔法陣が出現。
クルッと回ったかと思ったら…どこか見覚えのある荒野に視点が切り替わった。
「……」
「ここなら多少暴れても大丈夫」
「その余裕も今だけだよっ!」
…えっ? 勝負って戦うの? じゃんけんやらゲームじゃなくて?
危ないじゃん魔法解いてよ。
おっ、足が動いた。とりあえず幼女を装備しよう。
「んぁ? 終わったかえ?」
「終わりましたよ。ヘルちゃんが一番でした」
「まぁ、そうじゃろうな。観客はウブは女子ばかりじゃし……今何をしているのじゃ?」
「母娘喧嘩です」
「喧嘩なんてするんじゃな。原因はなんぞえ?」
「私が娘さんを下さいって言ったのが発端です」
「どうせまたイッたんが拗らせたんじゃろ?」
「そうですね。リアちゃんが拗らせました」
近くで観戦したいから、ハイエナジーバリアを張ってソファーを置いて座ろう。ソファーなら幼女を抱っこしなくて良いし。
リアちゃんとイツハさんは向かい合って無言だけれど、魔力がドンドン上がっていく。
「ルビアの戦いを見られるなら少しくらい周辺が壊れても良いかの」
「序列二位でしたっけ。いずれは挑戦するんですか?」
「いや、わっちが目指しているのは序列五位じゃ」
「五位? それだと何かあるんですか?」
「上位の世界には見習いの神達が研修で何百と来てくれるからの。一回でも五位に成ればわっちはもう何もしなくても良いのじゃっ」
「あぁ…そういう事ですか。未来の堕楽の為に今頑張っているんですね」
なるほど…幼女は戦う事しか取り柄が無いから序列戦で頑張っているのか。この性格だから友達も少なく…いや、考えるのはよそう。
「ママ…覚悟してね…魔力解放」
「あら、言葉を返すわ。掛かってらっしゃい」
……大気が揺れている。周辺にいる魔物達が逃げ出しているな…
「イツハさんってどんな風に戦うんですかね?」
「確か土属性特化じゃな。あやつは神宝石師として有名じゃぞ」
「へぇー宝石師……」
……ん? なんか…暗くなってきた。
上を見上げると……雲? いや…違う。
「……アレスティア、逃げるぞい」
「……そうですね、あれは無理です」
空一杯に大きな大きな岩…大陸が存在していた。
えっ…イツハさんが出したの?
…あれ落とすの?
馬鹿なの?
「禁術…ギガタイラント・マグナム」
あぁぁぁあああ!
落ちて来たぁぁあ!
あほぉぉおおおおお!
「アレスティアっ! 走るのじゃ!」
「抱き付くなよっ! 走れじゃねぇよ! 転移しろ転移っ!」
邪魔すんな幼女!
転移出来るんだろっ!
やれよっ!
「っ! アレスティアっ!」
「なんですかっ!」
「昼ご飯食べて無いから転移出来ないぞえ!」
「なにっ! 干し芋持っていますよねっ! 今食べてよっ!」
「あれは高い奴だから一日一枚って決めているのじゃっ! おにぎり寄越せい!」
「今日のおにぎりは明太子だから駄目ですっ! 後はカップ麺しか持っていないから間に合わないんですよ! 干し芋買ってあげるからっ!」
「くっ、仕方ないのっ!」
嬉しそうだな…あっ、もしかして買って貰うつもりだった? ちっ、やられたな。
幼女が干し芋を取り出して、むっちゃむっちゃ食べている。
「……」
「むっちゃむっちゃ」
「……あっ、お茶飲みます?」
「あっ、悪いの。むっちゃむっちゃ…」
……あの魔法おっきいなぁ。
何メートルあるんだろうなぁ。
もう目の前が岩過ぎて笑える。
「……そろそろバリアに衝突しますよ」
「そうじゃの。ちょっと待っておれ……あっ」
「次はなんですか?」
「今度の会議に出る服が欲しいのじゃ」
「良いですよ、ゴン店長に頼んでみますね。あと十秒無いですよ」
「よろしくの。五秒後に転移じゃ」
「何処に行くんですか?」
「わっちの家じゃ」
「あっ、やっと行けるんですね」
やったー幼女の家に行けるぞー。
あっ、バリア割れた。




