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私って人間の括りで良いんですかね?

 

『ふっ、俺の相手は人間か』

「よろしくお願いします」


 なんだろう…こっちの方が序列が上なのに、格下に見られている。

 私が子供だからか、幼女は同盟に入って日が浅いからか?

 だとしても、対等に見られないのはなんだかな。


 私の相手はガチムチなおっさん。

 赤い軽鎧を着て、両手に持つ赤い斧。

 首から見える鱗…瞳孔が縦に伸びて、人間ではなさそう。


「アレスティア、少し離れるぞえ」

「了解です。御武運を」


「かかっ、アレスティアもな」


 幼女は笑いながら離れた場所に転移。

 それにつられて他のおっさんも転移した。

 見える位置だから少し安心。

 ヘルちゃんは後方に椅子を置いて見学していた。持ってきたんだね。


 まだ幼女と連携が取れるようになったら近くで戦えるけれど、今は他世界の強者と戦える喜びを感じよう。


『女子供であろうと、この場に居る以上手加減しない』

「それは当然ですよ」


 斧相手だからマグロが一番適任だけれど、出す訳にはいかない。マグロ女なんて言われた日には枕を濡らすよ。

 という事で朱天の剣を使おう。


 少し重いけれど、エナジーパワーで調整すれば大丈夫だな。

 強い武器は大概重い…基本筋力が足りない問題をどうにかせねば…


『魔王武器か…』

 魔王武器?

 神武器じゃないとは思っていたけれど、分類は魔王武器というのか……格好良いね。


「それなら…それらしく戦いましょう。深界、アビスセイヴァー!」

『なっ! 裏魔法だとっ…本当に魔王なのか』


 なんか新しい単語が次々出てくる…後で幼女に聞くか。というか言葉が通じるのはこの部屋特有なのか? まぁ考えても仕方ない。


「私流・黒三日月!」


 三日月状の黒い斬撃を飛ばす…おー!

 デカイ!

 朱天の剣は深淵魔法と親和性が高いのか!


『くっ、バーンブルクラッシュ!』

 おっさんの振りかぶった赤い斧から炎が噴き出し、炎の推進力で斧が加速。

 黒三日月と衝突。

 おー…耐えている耐えている。

 私の方が力が上…いや、この場合深淵が特効なのか。

 裏世界戦では光魔法が有効だった。天異界戦では深淵が有効…これは私にとってかなりのプラスだ。


「ふふっ、私とは相性が悪そうですね。黒の衝撃!」

 闇を放出して黒三日月の力を上げると、おっさんが耐えきれずに呑み込まれた。


『ぐおぉぉお!』

 黒い力に呑み込まれ、おっさんの叫び声が響く。

 よしっ、凝縮!

 闇をギューッてやるとミシミシとおっさんが軋んでいく。


「そろそろ…おっ?」


 闇が弾けた。

 ボタボタと闇が落ち、息の荒いおっさんの赤い鎧には闇が絡み付いている。

 …なんだ? 姿が変わったな。

 顔がトカゲみたいになって、頭に二本の角が生えていた。

 うーん…翼もあるし竜人って事で良いのかな?


『はぁ、はぁ、本気で行かせて貰う!』

「最初から本気で来て下さいよ。それに本気とか言っちゃうと手の内がバレますよ」


『燃えろ! バーンドラグラッシュ!』

 赤い斧が燃え盛り、斧が肥大。

 ドラゴンの顎に変化した。

 確かに強い…強いけれど…


「…朱剣奥義・天壁」


 朱禍には敵わないよ。

 剣を突き立て、赤黒いエネルギーが剣先から溢れ天へと昇る。

 範囲は狭いけれど深淵と混じり合って凶悪な力が発生。


 そして天壁にドラゴンの斧が接触。

 接触した瞬間に斧がボロボロと崩れた。


『なっ!』

「お疲れ様でした。天壁派生・朱天砲!」


 格好良く言っているけれどお辞儀をしてエネルギーの向きを変えただけ!

 おっさんにファイナルアタッーク!


『ぐぉぉおおおお!』


 ……頭を上げた後は、ボロボロになった斧だけが遺されていた。

 ふっ、勝利。

 序列五十六位でこの強さとすれば…裏世界の方が強者が多い事が解る。

 まぁ、私が戦ったおっさんは補佐だから一概には言えないのだけれど…


 幼女の様子を見るか。

 ……ありゃ、もう終わってら。


 腕を組んで退屈そうにしながら、光の十字架に貼り付けにされたおっさん達を眺めていた。


「アテアちゃん、流石ですね」

「アレスティアも流石じゃの。竜人を雑魚扱いとは」


「まぁ世界によって強さの土台は違いますよね。で、このおじさん達はどうするんです?」

「止めを刺せば終わりじゃの。アレスティア、頼んだのじゃ」


『なっ! 人間に止めを刺させる気か!』

『非道め!』


「……なんかやりずらいです。人間だと問題なんですか?」

「まぁの。人間は種族特性が一番下じゃから、人間に止めを刺されると序列降格の対象になるのじゃよ!」


「今更ですけれど、私って人間の括りで良いんですか?」

「まぁ、うん、大丈夫じゃ…多分」


 多分て…でも嬉しそうだな…アテアちゃんが止めを刺せば降格の対象にならないのか。私が殺れば弱いものいじめが出来ると…

 ほうほう…


「朱天砲!」

 お疲れ様でしたー。

 お辞儀をしておっさん達に止めを刺す。

 頭を上げると綺麗さっぱり。

 やったー。勝ったー。


「……技は格好良いのに…攻撃方法がなんかダサいの」

「ダサいって言わないで下さい。これが一番楽なんですよ」


「アスティ、アテアちゃんお疲れ様」

「ヘルちゃーん。褒めて褒めてー」

「よしよし」


 ん? 壁を超えた感覚。

 なるほど…戦えば経験値も溜まるのか。


「あっ、アテアちゃん…魔王ってなんですか?」

「世界によって違うの。魔法の王や魔族の王、魔物の王、世界の支配者、神の敵やら意味合いは沢山あるの」


「へぇー、さっきのおっさんに魔王って言われましたよ」

「そうじゃな。大きな分類じゃと裏魔法が使えるアレスティアは魔王と言われてもおかしくないの。魔王も名乗るかえ?」


「んー。魔王天使で元王女の深魔貴族アレスティアとか情報が大渋滞ですね」


≪勝者、序列二十位アラス≫

 機械的な声が響き、おっさん達の残骸が消えていった。

 そして、前方に穴の開いた箱が現れた。

 中には白い玉が沢山入っている。


「あっ、くじ引きじゃ。アレスティア、引いて良いぞえ」

「なんか古典的ですね。じゃあ引きますよ」


 箱に手を入れて、適当な玉を取って幼女に渡す。

 幼女が玉に魔力を通すと、ポンッと玉が開いた。

 中には文字っぽいものが書かれた紙。


「うーむ。十位以下が良かったんじゃがな…」

「……なんて書いてあるんですか?」


「序列六位・ハズラじゃなー」

「ハズラ…」


 六位のハズラは朱禍の故郷。

 こんなに早く巡り会えるなんて嬉しいな。

 朱禍の身内が居れば良いけれど…


 少し待っていると、幼女が何か板のような物を操作。

 すると、前方に魔法陣が発生。

 序列六位の面々が転移してきた。


『おやぁ、二十位のアラステアかぁ。困ったねぇ…ん? あの剣は…』

 金髪のチャラい白ローブの男性…この人がハズラの神かな。

 六位というから強いんだろうな。


『アラステアとは噂に聞く暴君ですかな?』

 丸眼鏡をクイッと上げた線の細い白ローブの男性…幼女を物珍しそうに眺めている。


『やる事は一つ……あ……なん…で…』

 青い髪に白いローブの中性的な人。

 白ローブは制服か何かなのか?

 青い人は幼女を見てから私を見て、そして私が持つ朱天の剣に視線が釘付けになっている。

 ……もしかして、身内さんかね。


蒼禍(そうか)、行くか?』

『…はい』


 おー…敵意剥き出しで睨まれている。

 朱天の剣を持っている私は仇なのか?

 いや、別に看取っただけで私が殺した訳じゃないし…

 蒼禍というのか…


『アラステア、提案だが一人ずつ戦わないか?』

「んー…優遇してくれるのなら良いぞえ。聖女は見学じゃから戦えないからの…そうじゃな、補佐は一人見学って事でどうじゃ?」


『感謝する…行ってこい』

『…ありがとうございます』


 青い髪の人が前に出てきた。

 なんか注目されているな。


「アテアちゃん、私が戦うんですね」

「空気を読めばそうなるの」


「空気を読むの苦手なんですよ」

「わっちよりは上手じゃろ」


「そうですね。今干し芋を食べようとしている女神様よりは上手です」

「緊張感無いのぅ。眠くなってきたから早くしてくれの」


 はいはい。

 青い人は見た感じ、やっぱり朱禍には敵わない。

 とりあえず…ぼこぼこにしてから話をすれば良いか。

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