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元お姉ちゃんだよー……

 

 ……コーデリアは殺意の籠った眼光で部屋を出ていった。


 ふぅー…なんだこの緊張感は…あそこで出たら敵認定されそうだったから出られなかった。

 うーん…どうするかなぁ…さっきのメイドさんが濡れ衣を着せられたら後味悪いから、侵入するか。

 幸い地味メイドだからなんとかなるっしょ!

 いや、エプロンが無いと一瞬でバレる…エプロンエプロンっと、隣の給仕室にメイド服がある筈だ。


 扉を開く…中は変わらずだなぁ。簡易キッチンと棚が並ぶ小部屋。確か棚の引き出しを全部外して、奥にある箱に…あった! 私用のこすぷれセット! メイド服もあるな。折角だからこっちに着替えよっ。スポッ。


 ふっ、一秒で着替えたよ。私も成長したな…いや成長していないから速く着替えられたのか…



 これで安心して城を徘徊出来る。

 魔力感知も合わせれば無敵だよ。


 早速私の部屋から出る。

 懐かしいなぁ…夜中に探検して親の不倫現場を目撃したり、兄がメイドと逢引きしている場面を目撃したり、メイド達の陰口を真後ろで聞いたり、大臣が裸で王座に座っている所に出くわしたり、屋上には怪しい祭壇があったり……この国大丈夫か?


 廊下を歩いていると、騒ぎを聞き付けた人がせわしなく動いていた。

 一人で居るメイドさんを発見、ちょっと話を聞いてみよう。


「あの、すみません」

「なんです? ん? あなた見ない顔ね」


「えーと…今日、学院の当番で…」

「あらそうなの、夜勤なんてあったかしら?」


「たまたまです。あの、状況が掴めなくて…教えてもらえませんか?」

「あぁ…災難ね、良いわよ。なんでもアレスティア王女の遺品がすり換わっていたみたいなのよ。犯人はまだ解らないから、今城で働いている者はコーデリア殿下の精査を受けるって話なの」


「精査ですか…どうしてコーデリア姫なんです?」

「さぁね。会ったら解ると思うわよ」


 メイドさんにお礼を言ってこの場を去る。

 なるほど。コーデリアに接触するチャンスだが、一対一じゃないと意味が無い。まだ時間が掛かると思うし、保留かな。



 よし、味方が居れば心強いという事で…爺やの所へ行こう。

 爺やは執事長なので、自分の部屋を持っている。場所はこの上層エリアから二つ下の階の中層エリア。

 近くの階段を降りて、降りて、中層に到着。


 うーん…結構人が居るな。掃除中…いや、私の遺品を探しているのか? ご苦労様です。

 あっ、ここだ執事長の部屋。

 ここは夜中の探検で揚げ芋を食べに来ていた場所…


 多分居るかな…行くか。

 コンコン…

「はい、どなたですか?」

「……揚げた芋を食べに来ました」


「……どうぞ、お入り下さい」


 扉を開けて中に入る。

 部屋の中心には、爺やが立っていて私に向かって一礼した。


「このような老いぼれの元に来て戴き、光栄に思います。アレスティア様」

「爺や久し振りー。私は平民なんだから畏まらなくて良いよ。今はただのアスティだから」


 地味メガネを外して、ピシッと敬礼。

 いやー、知り合いが居ると安心するね。

 人が色々変わっていたから不安だったよ。


「ヨホホホ、変わらないですね。それにしても、騒ぎの原因は姫様でしたか」

「私物を回収しただけなのに、大事になっちゃった。コーデリアと秘密裏に会えそうかな?」


「それは…難しいかと。姫様が死んでからコーデリア姫は警戒心が非常に高くて…」

「コーデリアにも、何かがあったんだね。魔眼も覚醒していたし…」


「…あれは私も驚きました…紅茶でも淹れましょう」


 やったー、爺やの紅茶!

 とりあえず、爺やに近況報告でもしよう。

 前回はリアちゃんが居たから全然話せなかったし。

 フーツー王国から逃亡してから、最近までザックリと話した。

 幼女の事は伏せた方が良いのかな?

 でもその内アレスティア王女の噂が流れるし…うーむ。


「ヨホホホ、そうでしたか。元気にやっていて何より」

「そうだ、リックに手紙でも書いてあげてよ。爺やに会いたいって言っていたんだ。書いたら私が渡すから」


「リックが…分かりました。私も会いたいと思っていたんですが忙しくて忘れていました」

「休みは無いの?」


「ヨホホホホホホ…剣術を教えて欲しいという少女の為に時間を割いていたら、休む暇なんてありませんよ」

「うっ……ごめんなさい……」


 冗談と言われたけれど、私の心にクリティカルヒットだよ。

 すまぬ…あの頃は自分の事しか考えていなかった。いや今もそうか。

 爺やに何か恩返しがしたい…私のわがままを聞いてくれたから。

 そういえば、リックは事故があってから爺やと疎遠になったって…事故…事故…もしかして。

 爺やが簡単な手紙を書くというので、少し待つ。


「出来ました。よろしくお願いします」


「うん。あの…爺や、ちょっと後ろ向いて」

「んむ? こうですかな?」


 後ろから爺やを視る……なるほど、魔力の流れが凄く悪い。魔法を使うと身体に激痛が走る…事故の影響かな。

 リアちゃんは爺やが魔力の素質が無いって言っていたけれど、後天的に素質が無くなったのか。

 治さなかったのか治せなかったのか…


「…魔力が戻ったら、嬉しい?」

「それは…そうですね。奥方様でも時間が掛かるから難しいと言われたので、治療は断りました」


「そっか。エナジーヒール」

「何を……っ! これはっ!」


 ルゼルの回復魔法は、思い描いたように治す事が出来る。身体も、魔力も。

 聞こえは良いけれど、それ相応の能力が無いと完全回復はしない。

「ごめんなさい…今の私にはこれが限界…」

 だから…半分も回復しなかった。

 悔しいな…


「…本当に…成長なされて…ありがとうございます…本当にありがとうございます」

「えへへ、恩返しをしたいんだ。だからもっと上手になったらまたやるね!」


 良かった、喜んでくれた。

 よしっ、定期的に来よう。

 …それにしても、爺やの魔力って凄いな。

 鋭利な刃物のような鋭い魔力…

 魔力に敏感な人なら初対面でビビってまうぞ。


「ヨホホホ…頼もしい限りです。コーデリア姫には私から適当に言っておきましょうか?」

「よろしくね。駄目なら私の名前を出しても良いから」


 また来るねー。

 窓から出よう。

 …コーデリアは…ちょっと怖くて…また次回にしようかな…


 ……ん?

 ……お?

 ……来た?

 ……真っ直ぐここに向かってくる!


 早速魔力の変化を感じ取ったのか!

 幸い一人だ…でもどうしよう…心の準備が!

 とりあえずいつでも逃げられるように窓は開けておこう!

 メガネも忘れずに!


 ――コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン……


 ふぉっ! 凄え連打!


「ヨホホホ…開けますね」

「えっ…やだっ…」


 やめて!

 もう少し待って!

 なんか怖いの!


 あぁ! 開けちゃった!


「何か急ぎですかな? コーデリア姫」

「えぇ、不穏な魔力を感じまして…ディアス室長…何故魔力が増えているんですか?」


「持病が少し治りましてな」

「それは…良かったです。……メイド?」


 コーデリアの視線がゆらりと私を捉える。


「こんばんは、コーデリア姫」


 やっほー。久しぶりー。元お姉ちゃんだよー。

 首を傾げて……意外に落ち着いている?

 あっ……一瞬目が光ったな。


「えぇ、こんばん…なにっ……視え…ない」


 うわっ……落ち着いた表情から、ストンッと表情が抜けた。

 一歩、また一歩と私に近付く。

 爺やが遠い目で扉を閉める。おいっ、助けろ…


 そして、コーデリアの口が動いた。

「………か………お……」

 感情が昂っているせいか声が出ていない…口パクで何かを言っている…………お・ま・え・か。


 あぁ…目がヤバい…殺意しか無い……昔はあんなに可愛かったコーデリアは…私が死んでから…


「……ころす」


 少し…お転婆になっていたようだ……



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