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出来れば私もこの魔法は使いたくなかったよ

 

 ヘルちゃん、バラスと三姉妹…そして恐る恐る近付いてきた街の人々が見守る中…腕を治しながら怒るヒロトと対峙する。

 黒髪黒目…黒い服と靴に黒いマントや黒い色々…魔法のアクセサリー…格好付けている感じに笑う姿に、私の鳥肌は絶好調だ。


「ヒロト! 大丈夫!?」

「あぁ…下がってろ。直ぐに終わる」

「気を付けてね…」


 お連れさん達がヒロトに駆け寄り、魔力回復薬やらを渡した。

 おー……凄い睨んできた。騎士っぽい女子と魔法使いっぽい女子と斥候っぽい女子の三人。

 でも私の雰囲気に気圧されている…ふっふっふ、どうよ可愛いだろ。


「お前…何が目的だ」

「ただのお節介ですよ。それより良いんですか?」


「何が…ぐっ…痛え!」

 気付かなかったのかい? 私の攻撃はもう始まっているんだよ。

 光は調節すれば目には見えない。強度は下がるけれどね。

 まぁつまり、透明なレーザーブレイドでまた腕を落とした。


「とっくに戦いは始まっていますよ」

「くっ…グレーターヒール。舐めやがって…許さねえ!」


「敵対しているのに許すも許さないも無いのですがね。それ以前に何に対して許さないんですか?」

「俺の戦いを邪魔…いや汚したんだ!」


「戦い? あぁ…他人の技で戦って最後には娘を盾にして勝利した戦いっぽいものですね?」

「俺の技だ! 勝てば正義! 環境魔法・白銀世界!」


 再び街が白銀に染まる。

 魔力があれば回数に制限は無い…か。

 バラスも落ち付いて戦えば白銀世界を使わずに殺せたのに…男というのは、熱くなると必殺技を使いたがるのかね。


 ヒロトの頭上に無数の氷刃。

「氷刃乱舞!」

 回転しながら不規則に飛び交う氷刃を躱すのは難しい。


「行くよ雪華…」


 迫り来る氷刃を次々と斬り捨てる。

 全方向から来る訳ではなく面の攻撃…それなら簡単だ。

 まぁ…側面には透明なレーザーブレイドを展開しているから攻撃は効かないんだけれど。


「大口叩くだけはあるな! 量が駄目なら質だ! 白銀氷壊!」


 飛び交う氷刃が集結。巨大な氷柱となり、私に向かって射出された。私は素早く飛び乗って雪華を上段に構える。

 ヒロトを見ると自信満々な表情…確かに白銀世界は強力だけれど…

「両断」

 振り下ろすと、白銀氷壊は簡単に両断された。

 両断され勢いを失った白銀氷壊は崩れていく。


「なんだと!」

 まぁ…うん…気付かないものなのかな…

 雪華の特殊効果で氷属性なら何でも斬れるんだよね…


「白銀世界はバラスさんの魔法です。貴方に使いこなせる訳ないですよ」

「俺の(コピー)は完璧だ! 雷光炎爆剣!」


 ヒロトが詰め寄り雷炎を纏う剣を振り下ろす。

 剣先を下に向けながら受け、力を逃がしながら人差し指をヒロトに向ける。

 ゆびーむ。

「うっ…」

 光線がヒロトの肩を貫くが、痛みに耐えながら振り上げてきたので雪華で受け止めながらジャンプ。

 両肩を斬り付けながら背後に着地。

 そして背中を少し刺しながら殺気を当ててやると、前転するように退避した。


「先程から私は技や魔法を使っていますが、複製しないのですか?」

「はっ、ショボい技を複製しても意味がねえからな!」


 複製には条件があるのか。目に見えないと駄目とか、相手が技名を言わなきゃ駄目とか、技と認識しなければいけないとかそんな所だろう。

 冷や汗を流しながら私を睨む姿勢は変わらない…うーん…何十回と殺される場面があった事に気が付いていないのか。


「沢山の技を覚えてこそ応用が出来るのですが。威力があって格好良ければそれで良いみたいですね」

「お前に何が解る!」


 正直人間性が詰まらなすぎて、もう戦わなくても良い…身のこなしは素人っぽいのに技だけはしっかりしているから…人形みたいな相手にずっと練習してきたのが解る。

 こんなんで私は自分の技を使う気にならないよ。


「…オリジナルの技はあるんですか?」

「…あぁ…もちろんあるさ」


 あっ、聞いたは良いけれど特に興味無いや…ん?


「もう見ていられない! ウインドカッター!」

 お連れさんの魔法使いさんが援護してきた。

 風の刃をペシッと叩き落として、ゆびーむでお腹を貫く。

 邪魔しないでねー。


「こいつっ!」

 その隙を狙って斥候さんが両手に持つダガーで斬り掛かる。

 雪華でダガーを弾き飛ばして、お腹をグーパンチ。くの字に曲がって魔力使いさんの所へ飛んで行った。さよならー。


「パワースラッシュ!」

 背後から騎士さんが剣を振り下ろす。

 少し魔力を込めて剣を斬り刻むと、振り下ろした頃には柄だけになっていた。

 柄だけの剣を見て呆然としていたので、お腹を前蹴り。魔法使いさんの所へ吹っ飛ばす。元気でねー。


「みんな!」

「殺されないだけありがたいと思って下さい。いい加減降参したらどうですか?」


 早く降参しないと知らないぞー。そろそろ来ちゃうぞー。


「くっ、この魔法だけは使いたくなかったが…」

「前置きは良いんで、やるならさっさとして下さい」


「くくっ、その余裕も今の内だ。行くぜ! 風の章…第九十九。召喚魔法・暴風龍サイクロニーガ!」


『――グボォオオオ! 小僧…また会ったな』


 おー! こんな街中で召喚するなんてやるねぇ!

 みんな逃げ出しているよ。


 暴風龍サイクロニーガは、灼熱龍グドラームと並ぶ深緑の龍。

 城よりも大きな体躯に、触れる者全てを斬り刻む深緑の龍鱗を持つ。

 暴風のブレスで嵐を吹き飛ばし、晴天を無理矢理作り出した逸話もある伝説の召喚龍だ。


「へぇー、召喚魔法もコピー出来るんですね」

「はははっ! 驚いたか! 最強の召喚魔法だ!」


「ふふふっ、最強…ですか。丁度良かったです…私も、召喚魔法を使いましょうかねぇ」

「何が来ても無駄だ! やれサイクロニーガ!」


 何が来ても無駄なのは、私の台詞なんだけれど…

 すまんね、本当にすまんね暴風龍さん。


「私の召喚魔法……リーアーちゃーん!」


「はぁーい!」


 キラキラと輝く神々しい光の柱が発生。

 ご丁寧に周囲に光の羽が舞い落ちる仕様…気合い入ってんな。私の目の前だから光の羽がパシパシ顔に当たっているよ…

 その中からシュタッと私の前に現れる薄紅色の髪を靡かせたお姉さん。

 生クリームを飲む幼女を抱っこしながら、嬉しそうに…それはもう嬉しそうに笑っていた。

 なんでエーリンの巫女服着ているんですか? あっ、自前なんですか。まじ可愛いですね。


「私はもう満足したので、後はよろしくお願いします」

「アスきゅん…アスきゅんのお願いだから…私…張り切っちゃうね!」


 いや、張り切ったら街が無くなるからね。

 喚んでおいてアレだけれど、自重して下さいね。


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