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大事なものー…大事なものー…なんだろなー

 

「別に皆さんを責めている訳ではありません。こうして私は天の使いとなれましたから」

「ど、どういう事…でしょうか…責める?」


「アリーモブナ、黙っていろ」

「え、いや、ですが…」


「王太子さん、実はですね…」

「あっ! アレスティア王女! わたくし共の為にありがとうございました!」


 おー、喋ろうとしたのにー。困った宰相さんだなー。

 別に良いじゃん。知らないのはモブ王子だけなんだし…あっ、女神の前だから駄目なのか。


「あら、別に宰相さんと国王さんがミズキさんに帝国第二皇子を傷付けるように命令したら、勢い余って私が殺されちゃっただけじゃないですか。何を焦る必要がありますか?」

「えっ……命令って…」


「ん? アレスティア、それは本当かえ?」

「ええ本当ですよ。ほっぺにクリーム付いています。こういう時くらいちゃんとして下さい」


「ふーん。なんで皇子を傷付けるように命令したのじゃ?」

「それは…」


 アテアちゃんがくるんっと国王の方へ向くと、ビクッと国王と宰相の肩が跳ねる。

 ただの好奇心で聞いているだけなのに、焦っているな。モブ王子はどういう事かと二人を見ているけれど、追及すると悪い状況になる事は明白。アテアちゃんが乗ってきたから助かったよ。嘘を吐いたら解るからね。


「あっ、言っておくがの…わっちの前で嘘を吐いたら徳が下がるぞえ」

 自分は普通に嘘つくよね。自分に甘くて人に厳しい…私と一緒だな。


「……フーツー王国の信用が下がれば…我が国の王女と帝国の皇子との縁談が纏まると…」

「で? その結果、縁談は纏まったのかえ?」


「……縁談が纏まりかけている状況でしたが…アレスティア王女が生きていたとなれば…」

「アレスティア王女は死んでいるぞえ」


「死んで…今この場に…」

「だからアレスティア王女は死んで、天使アレスティアになったのじゃ。これで縁談は纏まるから良かったの」

「「……」」


 私はアテアちゃんの天使じゃないよ。

 王達は凄い微妙な表情だね。別に和解する気は無いし、聞きたい事を聞ければ良いかな。


「話は少し変わりますが、国王さんか宰相さんはフーツー王国のロードスタ家との繋がりはありますか?」

「「…いえ」」


 ロードスタ公爵家は母親の実家。

 繋がりは無いか。


「じゃあ…ラール侯爵家は?」

「…いえ」「…」


 おっ、当たりか。宰相は母親の不倫相手と繋がっている。となれば、母親が私と第二皇子の縁談情報を横流し…不倫相手がアース王国に縁談情報を売ったと考えれば妥当か。じゃないとミズキがフーツー城に間に合わないもんな。


「ふふっ、なるほど。やっぱりフーツー王妃と繋がっていましたか。そしてアース王国、もしくはフーツー王国が魔眼か何かを使ってミズキさんを精神操作をし…私が殺された。つまり、私が殺されたのは計画的だった訳ですね」

「…それは…知りません…」


「知らないとしても、アース王国側がフーツー王国の王女を殺害した事実は変わりません。宰相さん、フーツー王妃に利用されちゃいましたね」

「……くっ…あの女狐…」


「追及しても、恐らく証拠は記憶だけ。不確かなものだと言われてしまえばそこで話は終わりです。宝物庫にある黒騎士の鎧は早々に破棄した方が良いですよ。あの鎧があると、アース王国が不利になります」

「流石は天使に抜擢されるだけはありますね…私共に勝ち目は無いという事ですか……アレスティア王女は、これからどうなさるのですか?」


「そうですねぇ……」


 まぁ気になるよね。計画的に殺された訳だし。でも結果オーライで今の私がある……

 恐らくというか、ほぼ確で黒幕は私の母親……なんだかなぁ……

 このまま何もしないを選択すると、母親が何かを仕出かす可能性大。


 私は命という大事なものを奪われた。

 だからといって、母親の命を奪うという選択は違うと思う。


 とすれば、命に匹敵するものくらいは貰いたいよねー。

 母親が大事にしているもの……権力。宝石。美貌。自慢の庭園。

 後は…


「母親…ベアトリスク・フーツー・ミリスタンが大事にしているものを一つ、戴いてしまいましょうかねぇ」


「それは、聞いても良いですか?」

「えぇ…候補は三つ。一つ目は…奇跡の宝石と呼ばれる、秘宝ゴールデンダイヤモンド。二つ目は…迷宮産の綺麗な装飾品。三つ目は…」


 若さを保つ薬…バジラの霊薬をと思ったけれど、なんか弱いな。

 うーん…大事なものー大事なものー。

 …………あっ! あったな…


「…三つ目は?」

「知りたいですか?」


「アレスティア、気になるから教えるのじゃ」

「ふふっ、それはですね。最愛の娘…コーデリア・フーツー・ミリスタンです」


 妹コーデリアは、母親の愛するラール侯爵との子供。

 大事な者…それこそ命に匹敵する。


 最近、母親ベアトリスクは本当は私を産んでいないんじゃないかって思っている。兄を産んだ時点で仕事は終わっているし、それなら全てに納得がいくから。

 調べる価値はあるな。


「アレスティア…まさかお主…」

「えぇ…コーデリアを…」


「美味しく食べちゃうんじゃな!」


 違えよ。馬鹿なのか? 今日一の笑顔を向けるな。


「馬鹿なんですか? あっ失礼、心の声が漏れました。理想としては天使にスカウトですね。つまり私の部下です」

「それこそ母親が喜ぶのではないかえ? 娘が天使じゃぞ?」


「ええ、普通なら喜びます。ですが…天使をアレスティアが誘い、コーデリアが了承した場合…必然的にコーデリアはアレスティアの下位の存在になる。母親からしたら、この上無い屈辱ですよ…折角殺したと思った相手の下に最愛の娘が就くんですから…奪われたと同義。社会的には超美談だから嘘でも喜ばなければならない…くっくっくっ…楽しみですねぇ」


「お主…性格悪いの……」

「その発想は…流石ひねくれ者だね…」

「「「……」」」


 おっさん達、引いてくれても構わないぞ。下手したら一生偽りの喜びを演じなければいけないのだから。

 まっ、あくまで候補の一つだけれどね。

 コーデリアが了承しない限り実現不可能。それに会えるかどうかも解らないから。


 他にも楽しい事は考えておかないと、ね。

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