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ほんとこの機能は便利だよ

 

 次の日…ロートン公爵の使者との面会という事で、ミズキの部屋で白兜と出来立てほやほやの白鎧を着用。

 顔を晒す訳にはいかないので、白騎士の格好で挑む。

 理由は何故か王女が居るから…暇なのか?


「あなたが…アレスティア? 兜を脱いでお顔を見せて?」

「断る」


「…脱ぎなさいよ…どうしてアレスティアと名乗っているの? その名前は友の名前だからやめて欲しいの」


 友ってなんだよ……どう脳内変換すれば会った事も無い奴を友と呼べるんだ? というかレイン王国のアレスティアとここに居るアレスティアを同一人物と思わないその思考が凄いぞ。

 ブリッタさーん、この子大丈夫?


「じゃあ私の事は白雲(しらくも)と呼んで」

「分かったわ。白雲」


「それ私の名字なんだけど…」



 実はこちらの面子は結構居る。ブリッタさんの他にもメイドさん達と侍女さん達。

 ミズキのゴマすり高官さん達、王女のゴマすり役人達。総勢二十名。その中に紛れる白い奴は凄く目立つね。


 会議室に入ると…結構広いな。大きな円形テーブルに隊長のニコライさんと、知らないおっさんが二人座っていた。

 ニコライさんは渋い顔をしている…ほうほう、私の希望通りにはならないようだ。

 おっさんの方が偉そうだし、公爵兵団の隊長くらいの立場じゃ発言さえ出来ないかもね。


 おっさん二人は王女が居るとは思わなかったのか、少し驚いた様子だった。

 直ぐ様王女とミズキに近付いて最敬礼…


「これは王女殿下、本日学院はお休みでしょうか?」

「ええ、休みよ。後学の為に参加させて貰うわ」


 ほんとか? サボっただろ。昨日駄々捏ねていたの知っているからな。

 ゴマすりさん達…『流石は殿下』等々、持ち上げんな…調子に乗るだろ。


「是非ともお願い致します。勇者ミズキ様、時間を作って戴きありがとうございます」

「…はい」


 ミズキはクールだね。人見知りとも言うけれど…

 ゴマすりさん達…『はぁ…ミズキ様…』の、『はぁ』…は何の『はぁ』なんだ? 声を聞けたの『はぁ』なのか、ミズキ様素敵の『はぁ』なのか…一人股間を抑えて『はぁ』の奴がいるが、あいつは居て良いのか? ミズキ、どうなんだ? 股間の『はぁ』は良いのか?


 現在私は退屈なので、こうやって思考の海を漂っている訳だ。


 王女とミズキが席に案内されて座る。メイドさん達は紅茶を配膳し、他のゴマすりさん達は余った椅子に座り…私はただ立っているだけ……


「では、恩賞についてですが…目録を御覧下さい」

 うぉい! 私は? 挨拶無しか?

 身分の高い順に話し掛けるのは解る。解るけれど、一声掛けなさいよ。私は領地を救ったんだよもう…ほらぁ、ニコライさんが申し訳無さそうにしているじゃん。


 目録を王女に渡し、ミズキに渡す。

 …私の目録は? 予備くらい用意しておけよ。王女のいらんやろ、くれよ。


「…見る?」

「ありがとうございます」

 ミズキが空気を読んで目録をくれた。

 なになに?

 ほうほう。

 迷宮の氾濫を手助けした者に…三百万ゴルド、公爵兵団への推薦、迷宮攻略部隊推薦、ロートン公爵からの有難いお言葉……後は? あれ? 無いの? しかも迷宮調査書類と引き換え? ざけんな。


「…しょぼっ」

「「――なっ!」」


「白雲…これは適切よ。ボス級を倒す手助けをしただけじゃない」

「貴様…最大限の恩賞を…無礼だぞ!」

「兜を脱いで跪け!」


 えー…手助けしただけって伝わっているの?

 ニコライさんが小さくなっているじゃん。見ていて悲しくなるよ。なんか私が悪いみたいだし…


「白雲、今すぐ発言を撤回しなさい。不敬罪じゃ済まないわよ」

 やーだ。


 おっさんやゴマすりさん達は凄い怒っているけれどさ…真実くらいは伝えよう。


「じゃあ、これを観て適切と言えますか?」

「何を言って…」



 地味眼鏡を取り出して、会議室の壁に向かって再生機能をオンっと。幸い白い壁で助かったよ。


≪どうしますー?≫

≪先ずはあの穴を二人で塞いで。私はその隙にデカイ魔法の準備に入る≫

≪う、うん!≫


 眼下に広がる魔物の大群。エーリンとチロルちゃんが岩を穴に落としている光景…そして…


≪白の流星群!≫

 どかーん。どかーん。白い流星が魔物をハンバーガーにしていく光景が映し出される。


「なに…これ…有り得ない…」


 普通じゃない光景に王女は驚き、おっさんは困惑している。まだまだ行くよー。撮影者、私。編集はムルムーの合作映像だよー。


 ここでボス…青い骸骨さんが登場。


≪ホホホホホホホホ≫


≪二人は岩を穴に落としていてねー。私は青い骸骨を倒すよ≫

≪はいー≫

≪気を付けてね!≫


 青い骸骨を見た王女がプルプルしている…SSランクを見るのは初めてかい?

 お望みとあればラジャーナに放り込んであげるよ…今すぐにな!


≪ホホホホホ…≫


 そして、私が骸骨さん倒し終わり、鎧を着たニコライさん登場。

≪はぁ…はぁ…御助力…感謝致します! 私はロートン公爵兵団のニコライだ。貴殿らの名前を教えて貰えぬか?≫


 ミズキが映像とニコライさんの顔を交互に見る。王女もそれに釣られて交互に見て、それはもう顔が引きつっていた。この映像が真実だという事に確信を持ってしまったな。


≪エーリンですー≫

≪アスきゅんきゅん≫

≪あっ、チロルでしゅ≫


 ムルムー…チロルちゃんの所はカットしてあげなよ。

 しかもさ…私の名乗り、明らかにムルムーがアフレコしたよね。それどうやんのさ…私より使いこなしてんじゃん。


≪…この度は、魔物の氾濫を抑えて戴き…感謝してもしきれぬ…あの町は故郷でな…貴殿らのお蔭でなんとか守る事が出来た。改めて、お礼申し上げる≫


 とまぁ、ニコライさんがお礼を言った所で映像は終了。

 数千の魔物とSSランクの魔物を、三人でほとんど倒したという事実を受け止めてくれたかな?

 とりあえず皆…主要面子の表情でも確認しよう。


 ミズキは再生機能に感心している様子で、私の地味眼鏡を見ている。あげないよ。

 ブリッタさんは目をキラキラさせて私を見ている…後でデートして下さいね。

 ニコライさんは私に頭を下げて動かない。

 おっさん二人は困惑している。

 王女はどうするべきか、何が最善かを考えている様子…流石は頭の回転が速い、日常生活でも頭を回転させろと言いたいけれど…策は無いよね。


「正直申し上げますと…ニコライさんが心からの感謝を伝え、私がその言葉を受け取った時点でこの話は終わっています。皆さん…ニコライさんに感謝をした方が良いですよ」


 ……格好付けてみたけれど、報酬は欲しいよ。

 ……なんか言ってよ。

 ……さん…に…いち…はい時間切れー。


 すすすーっと出入口まで行き…捨て台詞でも吐くかな。


「あぁ、因みにこの映像と会議室での映像…そしてこの目録を帝国に売れば、一千万ゴルドにはなりそうですね。ではでは! もう二度と会う事はありませんが皆さんお元気で! さらばだぁぁ!」


 王女が立ち上がって私に向かって来たけれど、時既に遅し!

 はっはっはー! 焦れ焦れ!

 会議室から出た瞬間に窓からダイブ!


 星乗りで外を移動…ミズキの部屋に窓から入る。


 白兜と白鎧を脱いで、メイド服をスポッと着た。


 ふっ、完璧だ。

 我ながら、ひねくれ度合いが増しているな。


 これで報酬は私の望む物になりそう。

 よっしゃ、ミズキが来るまでゴロゴロしよっと。



 

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