今日はパンパンに帰っていないから、何かが起きそうで怖い
うーん…一度家に帰りたいな。服は着替えれば良いけれど、髪の毛が香ばしいにほひを放っている。
エーリンは気にしていない様子。匂いって結構印象変わるから気にしなされ。
綺麗になる魔法って無いかなぁ……キュアを連発すれば少しは匂いが取れるけれど、完璧ではない。まぁ匂いに関して三日くらい語れるけれど、割愛しよう。
さて、宝箱だっけ。
横幅が私の身長くらいの黄色い宝箱。大きいな。色付きだから、割りとレアな宝箱らしい。
「開けて良いよ」
「えー…もっとこう、ワクワクだったりあるじゃないですかー」
「開けてからだよ。お金になればそれで良いし」
役に立つ物って少ないからね。
珍しい物は多いから、コレクターに売れば儲かる。
「まぁ、確かに。開けますよー……あれ? 鍵付きかな?」
バキッ…と、エーリンが宝箱を抉じ開ける。
すげえ、鍵要らずじゃん。
宝箱の中には、うん…ごちゃごちゃしている。一つずつ見るか。
一番上には赤い布…マントか。視てみると、やる気の上がるマントだ。
視れば効果は解るけれど、名前が時々しか解らないか。
「魔法武具が多いって噂は本当みたいだね」
「そうですねー。資源の一つですよー」
「とりあえずザックリ視て、気になる物は詳しく視よう」
魔力を通すと重くなる腕輪。
綺麗なナイフ。
腰痛予防のベルト。
白い兜。
青い服…男物。
蒸れない靴。
魔法書二つ…氷と風。
銀のバケツ…その中に小さい銀の釣竿。
お金…総額百二十万ゴルドくらい。
この中で気になるのは…白い兜。フルフェイスで被ると顔が隠れる。デザインは悪くない。
被ってみると、視界良好。魔法防具か。
魔法書は中級程度。銀のバケツと釣竿は…小魚が沢山釣れる。
「結構良いんじゃない?」
「そうですかー? お金以外使わないですよー」
「白い兜は顔が隠れるから便利だし、他の物も欲しい人から見たらお宝だよ」
「そうですけどー。もう一個お宝探しません?」
深追いは禁物だよ。
でも楽しみではある…時間もまだあるし、奥にある扉を進んでみよう。
黄色い扉を開くと、真っ直ぐの通路。
色々視ながら進む。黄色い壁の材質は、魔法黄土の壁。魔力体の魔物はすり抜けられるのか……でも魔法はすり抜けられない。
最奥に行けば解る事も多いだろうけれど、今回は見送りかな。
「エーリンは欲しい物無いの?」
「欲しい物? んー…ありすぎて解らないですねー。役立つ物なら大概欲しいですー。アレスティアは?」
「私は強くなれる物ならなんでも良いかな。似たような答えだけれど」
「強くなってどうするんです?」
「地の王を倒す。その後は…夢を叶える、かな」
「夢?」
「秘密」
「教えて下さいよー」
秘密だよ。先ずは目標…地の王なんだから。地の王が持っている生命の宝珠があれば子供が出来るらしいし…仕組みは解らないけれど、希望者には私の子供を…いや先ずは手に入れたらだな。
雑談しながら真っ直ぐ進んでいると、左右に道が分かれた。
ちょっと視てみよう。
「アレスティア、どうです?」
「うーん…広いからちょっと待って」
辿るの大変なんだよ。
上から視たら楽なんだけれどなぁ。左は行き止まりだから、右か。
「右に行って、分かれ道でまた視るね」
「はいー。そういえば魔物が来ないですねー」
「魔力体の魔物が沢山居るよ。でも私達って魔力を隠しているから、寄って来ないんだ」
封印の指輪が便利だ。魔力感知に優れている程騙せる。雑魚には興味無いって奴だね。
右の道を進んで、分かれ道で視て進むを繰り返す事二時間。時間の感覚が無いから、今が昼なのか夜なのか解らない。家に帰れば解るけれどね。
因みにエーリンはもう飽きている。
「……エーリン、帰る方法って来た道を戻るの?」
「まぁ……大概そうですねー。帰還石があれば、直ぐに帰れます」
「それはどうやって手に入れるの?」
「……ボス部屋の真ん中の床に嵌まっている事が多いです」
「……次のボスを探そう」
「…そうですねー」
カタツムリの真下を調べる気にはならない。
次のボスまで頑張るか…
また一時間程進むと、普通の鉄扉。開けると小部屋になっていて、奥に鉄扉がある。
真ん中には、綺麗な丸い泉。ゴブリンの石像があり、口から水が流れて泉に入っていく……ゴブリン噴水か。何故ゴブリン。
「ここは休憩室かな?」
「そうですねー、たまに泊まれる場所があるんですよ。傷が癒える泉とセットの場合が多いです」
「へぇー。不思議なもんだね。今日はここに泊まろうか」
「はいー。あの、水浴びしません?」
「えー…あっ! 封印の指輪を私の分まで着けて、封印しまくるなら良いよ」
エーリンを二重に封印。
少し触って貰う……痛くない。
おー…やっと触れ合える。
「おぉ…やっとアレスティアを抱き締めて良いんですねー!」
良いぞ良いぞ。近う寄れ。
ポフッとエーリンに抱き締められる…まだカタツムリの匂いが残っているな。
ギュッと抱き締めたエーリンが、私の服をずらして…カプリと肩に噛み付く。
……何してんの? 痛いよ。
牙が肩の肉に食い込んで、流れた私の血をペロペロと舐めながら飲んでいる。
エーリンの身体が段々熱くなってきた。大丈夫?
「エーリン、それは何の意味があるの?」
「んぐっ…んぐっ…愛情表現ですぅ……アレスティアの…血…美味し過ぎる…なんか…凄いぃ…」
「なるほど、じゃあ私もエーリンの肩に噛み付けば良いの?」
「はいぃ…噛んで…下さいぃ」
なんかよく解らないけれど、噛んでと言うなら噛んでみよう。
カプリ。
歯形が付いた。
えっ? もっと? 血が流れるくらい?
カプリ。
……
……
……
……
なるほど、悪くはない。
まぁ…その後は一緒に寝んねした。
すやすやと寝ているエーリンの頭を撫でると、幸せそうに微笑んだ。
良い夢を見ていそう。
「あっ」
今日は、パンパンに帰れないなぁ。
リアちゃんがプンプンしていない事を祈ろう。




