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学校見学。

「頑張って下さーい! あと少しですよぉー!」


 あれから、ギガンテスを運び終わるまで衛兵さん達の応援を続けた。色々なポーズの要求は何だったんだろう…

 途中、帽子を無くしている事に気付いたので紐で髪を後ろに纏めて応援。

 …男の子って信じて貰えたのが不思議だけれど、まぁ良いか。


「今日はありがとうございました。また伺いますね」


「お礼を言うのはこちらの方だよ! デスジャイヂ・ギガンテスなんて討伐隊を組まなきゃいけなかったからね! 凄いよアスティちゃ、君!」


 ラジャーナに到着したので解散。素材のお金は後日、南門で貰う予定。なので衛兵さん達にさよならして帝都に帰った。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「うーん…」


 どうしよう…部屋に帰って気付いたんだけれど…竜剣の刃が欠けている。

 確かにライトソードで強化したとはいえ、ギガンテスの太くて硬い骨を断ち切ろうとするなんて無理があったか…

 とりあえず店長に報告した方が良いかな…折角譲って貰ったばかりなのに…ごめんなさい…



 夜、仕事が終わった店長に刃が欠けた事を報告。今日の店長は『裸ぶキュート』と書かれたタンクトップ。最初の方が読めない…なんて書いてあるんだろう…


「あらぁー…鉄と撃ち合っても欠けないのに…欠けるなんてあるのかしら?」


「ごめんなさい…無理しちゃいました」


「何か硬い魔物と闘ったの?」


 言った方が良いかな…まぁ店長に嘘は付きたくないから、ラジャーナでデスジャイヂ・ギガンテスと闘ったと言った。

 言ったら黙り込んじゃって…なんか怖いんですけど…


「…魔石はあるの?」

「はい、これです」


 ゴトリ。

 私の顔くらいある魔石。それを見た店長は驚いて、笑いだした。


「…ふふっ、ごめんなさい笑っちゃって。まさかアスティちゃんがSランクをソロで倒せるなんて思わなかったから…こんなに可愛いのに…

 あら?もしかして、ラジャーナで噂になっていたレスティってアスティちゃん?」


 はい、私です。頷くと、店長は拍手をして私を力強く抱き締めた。


「あらぁー! 私レスティちゃんに会いたかったのよぉー! こんなに近くに居たのねぇー!」


「ぎゃあぁぁ!」


 ミシミシ――ピキピキ――ジョリジョリ――


 身体が軋む――痛い痛い痛い! ヒゲも痛い! 折れる折れる折れる!


「あら? アスティちゃん?」


 意識が遠のく……




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 翌日。ヒゲのおっさんに抱き締められる悪夢でうなされ、目覚めたら朝だった。黒めの服を着て店長の元へ。

 意識を失った私をベッドまで運んでくれた店長は、会うなり謝って来た。私は別に怒ってはいないので、か弱いので気を付けて下さい…と言って済ませ、お店を出る。


 あのヒゲはトラウマになりそうだ…ジョリジョリ…


 今日は何をしよう。あっ、帽子買わなきゃ…とりあえず紐で纏めておこう。


 そういえば学校の見学しなきゃなぁ…どんな学科があるか見ておかないと…


 という事で、西区にある学校に到着。

 大きく分けて三つと聞いていたけど、確かに三つのエリアに分かれている。

 一般、騎士、魔法のエリア。チロルちゃんは魔法のエリアに居るのかな? その内会えると思いたい。



 一般の学区エリアへ行っているけど、正直かなり広い。みんなどうやって登校しているか気になる程に。


 到着したけど…学校も大きい。何人通っているのか解らないくらいの大きな建物…お城より大きいや。



 トコトコ歩いて正面の入口へ。見学は身分証があれば出来るという事なので、受付へ行き身分証を提示。

 内部に潜入…じゃなくて見学開始。


 受け取った冊子を見ながら、学校を回っていくけれど…どれだけ教室があるんだろう…すげえな帝都。

 初等部と中等部が一緒になっているから大きいのもあるけれど…




 一通り回り、入口から出た所のベンチに座って冊子を読む。

 一般の学科は、帝都だけあって多い。算術みたいな一般的な座学から、剣術やサバイバル実習の様な実技まで様々。

 あっ、お菓子学科良いなぁ…


 悩む…まぁ、見学は出来たから帰ろうと、立ち上がったら目の前に女の子の二人組が居た。居たのは気付いていたけれど、なんでしょう? もう昼だから帰り時間なのかな?


「…あの、すみません」

「はい?」

「見学、ですか?」

「はい、そうです」

「ど、どの学科に入るんですか?」

「まだ決めていないですけれど…」

「「……」」


 何か喋ろうと口をパクパクさせているけど…

「あぁ! もう無理ぃ!」

 あっ、一人が急に走り出した。両手で顔を抑えているから転ばないと良いけど…あっ転んだ。


「あっ! 待ってよぉ! すみません! また会いましょう!」


 ……何だったんだろう。なんか女の子の輪の中に入っていったけど…キャーキャー言ってる…良いなぁ…あんな感じで楽しく出来れば良いけれど…身分証は男の子で登録されてるからなぁ…



「あれ? アスティ…君?」

「ん? あっ、フラムちゃん…」


 声を掛けられて、振り向くとフラムちゃんではないですか! 今日も可愛いですね!

 なんと、後ろに居るのは友達ですかな? 沢山居ますね…眩しいですよ…


「どうしたの? 学校通うの?」

「うん、その予定。見学に来たんだ」

「へぇー! そうなんだ――ぁもが!」


 フラムちゃんが後ろの友達に連れて行かれた…なんか円陣を組んで、中心にフラムちゃん…何の儀式かな?


「フラム、誰よあの格好良い人」「何処で知り合ったのよ」「紹介してよ」「抜け駆けは許さないわよ」

「ちっ、違うって!」

「何が違うのよ」「私達友達よね」「フラムは彼が好きだったのね」「告白されても断ってたもんね」



 何話しているんだろうなぁ…

 あっ、フラムちゃんが出てきた。


「…アスティ君、もう帰るの?」

「うん、後は冊子を見ながら考えるだけだから」

「じゃあ、逃げよう」

「…へ?」


 フラムちゃんが私の手を掴んで走り出した。なになに? とりあえず走って付いていってるけれど、フラムちゃんは必死な表情。

 振り返るとフラムちゃんの友達が追い掛けて来ている。


 何あれ怖い…



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 フラムちゃんと一緒に走って、大通りまでやって来た。フラムちゃんの友達は直ぐに追い掛けるのを止めたみたいだけれど…


「ぜはぁ、ぜひゅ、何とか撒いたか…」

「フラムちゃん、大丈夫? 息切れが末期だよ」


 呼吸を整えたフラムちゃんは、辺りを見渡しホッと一息。



「アスティちゃんごめんね。女の子って説明している内に全員来そうで、私の身が危険だったの」

「全員? お友達ってまだ居るの?」

「うん、今日は30人くらい」


 今日は30人…そんなに友達居るんですか…少し分けて下さいよ…私もキャッキャウフフしたいんですから…


「でも、私は男の子として学校に行くよ」

「え? そんな事出来るの?」


 フラムちゃんに特事官になった事、男で登録してある事を伝える。驚いていた様子だけど、凄いって褒めてくれた。


「でもアスティちゃん、黒い格好だから男の子? って思うけど…直ぐに女の子ってバレるよ」


「大丈夫。地味眼鏡っていうの貰ったから」



 スチャッと地味眼鏡を掛ける。これ誰よって思うくらい地味になれる眼鏡…


「おー! 地味! 凄い地味! 凄い根暗で陰気で地味な男の子に見えるよ!」


 根暗で陰気は余計だけれど、男の子に見えるなら良しとしよう。


「名前はどうするの? アスティ君だと…まずいかも…」


「ん? なんで?」


「私がアスティ君って呼んだから、もう初等部だと地味じゃないアスティ君が広まってる……うん、ごめん、直ぐバレるわ」


「……ちょっとロバートさんに聞いてみるね」




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 フラムちゃんと別れ、特事班の詰所にやって来た。


「あらアスティちゃん、どうしたの?」

「実は…」


 受付のミリアさんに説明していく。


「ぷっ、くくっ、それで学校での名前を変えられないかって? 良いじゃない、女子にモテモテよ」


「女の子のお友達は欲しいですけれど、モテたくは無いですよ。笑いすぎですよぉ」


「あーごめんごめん。一応ロバートに聞いてみるわ。名前を変えるならどんな名前が良い?」


「えっ、まぁ何でも良いですけど、アレス…ですかね」


「了解。伝えとくわね」



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 結果として、名前を変える事は出来た。学校ではアレス。


 フラムちゃんが居る曜日に合わせるつもりで、風と土の曜日。

 学科は主に魔物学と国語。曜日と時間が合えば他の学科も学べるけれど、とりあえずはこれで。


 剣術と魔法は学ばない。無元流を教えてくれる人は居ないし、魔法は光属性以外ショボイから…


 来週から学校だ。

 楽しみだな。



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