表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/375

先祖の記憶・邪族戦2

 

 星々を集めて、大きな月を形成。

 私よりも密度が違う…練度も違う…参考になるな。


「大地を照らす優しい光よ…悪しき力を跳ね返す衣となりて…私の力となれ…魔装・月光の女神(ルナ)


 輝く羽衣をキリエが纏う。本気でいくのか。

 魔装・月光の女神(ルナ)…おっさんをボコボコにしていた時に使っていた力で、リックの炎雷を纏う技よりも、何段階も上の魔法…超魔法特化になれる。


 魔装…おっさんがキリエに教えていたな。己の目指す強さ、信念を魔力に乗せて具現化する魔法剣の最上位。キリエの目指す強さは…月光のように美しく、女神のように優しい、そしてキリエの中で誰よりも強い最強の存在…ルル。


 私がもし魔装を使えるなら、キリエとは違うタイプになるだろうな。キリエは武器を使わない…いや、幼少期の影響で身体が弱くて使えないから。


『表の世界にも、強者は居るのだな。深魔剣技・剛炎黒牢』


 深魔貴族インガラ…貴族というからには、階級があったり? 解らないけれど、普通の邪族とは違う事は確か。

 今も黒い炎を大地に張り巡らせて、黒い火柱を出している。


 上位の戦いになると、自分の領域を作る事が多い。

 キリエは空に星を。インガラは大地に黒炎を。


「…流星群」


 キリエがインガラに向けて星を墜としていく。一点集中で星が墜ちる様は圧巻だなぁ。

 それ以上に…黒い剣で斬り、大きな盾で防いでいるインガラも凄い。あの巨体での高速斬撃。高速移動……私じゃ瞬殺だな……



「強すぎだよ…半月」


 月に光と闇が射し、混ざり合わない半月が出来上がる。

 白と黒。断罪の月か。


『深魔炎殺』


 インガラが剣を大地に突き刺さすと、黒い炎柱がキリエ目掛けて空高く噴き上がる。キリエは躱す事無く直撃。黒い炎が球体になってキリエを包んだ。

 でもキリエに炎は届いていない。

 手前で停滞し…魔装の力で跳ね返した。

 リフレクト・ミラーフォースの力かな。光と闇の属性も混ぜて反射しているから、ダメージはあると思うけれど…


 黒い炎がインガラに直撃。

 キリエが月を操作して、追撃していく。


「断罪の月」


 インガラが燃えている間に大質量の月を墜とす。

 衝突した瞬間に断罪の光が縦横無尽に駆け巡り、大地を壊していく。インガラはこれくらいじゃやられないと思うけれど、衝突後は反応が無いな。


 ――来るっ! 黒い斬撃!

 真っ黒い剣が目の前を通り過ぎ、追撃が来る前に後退。乗っていた星が破壊される。

 月を見ると、真っ二つに斬られていた。

 まじかよ…灼熱龍を倒す程の威力だぞ。

 斬れるもんなのか…


『深魔炎突』


 ――剣が伸び…刺さっ……てない?

 両手を伸ばしたキリエの手前で止まっている…魔装を貫けないのか。

 どれだけ強固なんだよ…

 でも遅れて衝撃は受けた。

 水平に飛ばされ、ビリビリと腕が痺れた。


「くっ…」


 態勢を立て直そうとした所で、影が射す。

 上!


『深魔奥義・煉獄』


 炎が黒から真っ赤に燃える。

 その真っ赤な炎がキリエ目掛けて放たれた。

 視界が深紅に染まる。

 それと同時に大地に叩き付けられる感覚…


「ぐぁあ! オート・エクスヒール!」


 魔装を貫通する炎…焼ける腕…叩き付けられた衝撃で骨も折れている…キリエが初めてダメージを受けた。

 回復魔法を施して、焼ける腕は治っていくけれど…

 回復に回す魔力なんて無いのに…

 劣勢だ。


『見事…これも防ぐか。ならば…黒炎の鎧よ、狭間の炎となれ。煉獄の鎧』


 うわ…黒い鎧が深紅に染まる。

 盾を捨て、両手に血のように赤く染まった剣を持った。


「はぁ…はぁ…満月」


 全ての星を白く染めて、集結させた。

 陰り一つ無い真っ白な月…

 駄目だ…それを使ったら…魔力が無くなる…


『全ての力を込めよう…深魔絶義・煉獄炎殺』


 深紅の炎が噴き上がり大地を、空を深紅に染める。

 灼熱龍の炎よりも強く、綺麗な血の色…

 あれが…インガラの本気か。

 キリエは…


「全てを裁く聖なる月…審判の月光!」


 神聖な光を放つ大質量の月…

 空に白い蓋をしたような…アホみたいな大きさ。

 一人だからこそ出来る超範囲を狙った…

 キリエの最大の攻撃魔法…


 炎が光に触れると…溶けるように浄化されていくけれど…少しずつ。

 このまま行けば倒せるけれど…早く倒さないと…どんどん魔力が減っていく。


「あぁ…どうしよう…仕方ない…目の前の敵!」


 両手を振り下ろして、審判の月光をインガラ目掛けて墜とす。

 よし炎が消えた…後はインガラだけ!

 インガラは血赤の剣で炎の技を繰り出しているけれど、浄化の光に書き消されていく。


『見事……また…一から出直しか』


 審判の月光がインガラを押し潰す。

 大地を浄化し、音をもかき消して、ゆっくり…ゆっくりと大地に沈んでいく。


「はぁ…はぁ…もぅ…駄目かも…」


 後に残るのは、インガラの残骸。砕けた鎧の中に、黒い球体が覗いている…魔石か核かな?


 うーん…勝った…

 でも…

 まだ、円柱は存在している。


 ――パチ、パチ、パチ、パチ。


 …拍手?

 円柱から聞こえる。


『これはこれは。インガラを倒すなんて、素晴らしい御方ですねぇ』

「…誰? っ! 何この強さ!」


 円柱から、黒いスーツを来たオールバックの男が出てきた。纏う空気は…インガラよりも格上。まじか…


『申し遅れました。わたくし、裏世界の王にお仕えするロンドと申します。邪神候補の深魔貴族が最速で敗れたので見に来たのですが…ふむ』


 じろじろとキリエを眺めるロンドと名乗った男。

 裏世界に王なんているんだな。

 それに邪神候補? インガラは邪悪の力って言っていた…

 ロンドは眺めた後、ウンウンと頷いて笑い掛けてきた。


『聖女様でしたか。王が中々帰って来ないので、わたくしが奮闘した甲斐がありましたねぇ…』

「…こんな事をして…何が目的?」


『今、千年程邪神が不在なのですよ。ですので、一番華々しく活躍した者にこの邪悪の力を授けよう…そう裏世界に伝達したら盛り上がりまして…』

「邪悪の…力」


 ロンドが出した禍々しい黒い塊……あれは…懐かしい気分にさせられる。あれが…根源か?

 邪悪の力を貰う為に…邪族が進行してきたのか…だとしたら、こいつが元凶…


『今頃…他の世界にも我らが侵攻している事でしょう。さて…幾つの世界が我らを退けますかなぁ』

「……」


 楽しそうに笑うな…

 他の世界…正直それに意識を持っていくなんて余裕は無いね。

 いつ殺されてもおかしくない状況だから。


『聖女様、わたくしは少しこの世界の神と話をしてきます。それまで……え? はい、意外ですね…あなた様が来たいというのは』


 ロンドが楽しそうにパチンッと指を鳴らすと、黒い円柱が縮んでいく。

 三十メートルくらいから、五メートルくらいに……

 これは…

 インガラよりも強い奴が出てきそう…うわ…出てきた…


「何なんだよ…もう…」


 もう訳が解らないよね…ロンドより強いや…

 出てきた邪族は、黒髪黒目に白い肌…黒い衣を纏い、背中には漆黒の翼。天使のような美しさ…内包された強い力…それに邪族っぽくない。


『それではルゼル様、よろしくお願い致します。殺しても良いですが、魂は消さないで下さいね』

『…ふん、早く行け』


『では、また』


 ロンドは笑いながら、スーッと消えていった。

 残されたルゼルと呼ばれた女性は、こちらをじっと見詰めて…バサッと翼を広げた。堕天使のよう…あれ? この人、星属性持ちだ…


『我は、核星使ルゼルという者だ。名を訊こう』

「…キリエ」


『そうか。ではキリエ、足掻いてみせよ』

「…はぁ…困ったな。勝てる気がしない」


 ルゼルから溢れ出す黒と銀のオーラ…

 ちょっとこれは…

 魔力があっても勝てないぞ…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 恐らくですが、侵攻だと思われる単語が進行となっていました。。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ