表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/375

先祖の記憶・邪族戦

 

 それから、勇者は話し掛けて来たけれど、キリエは関わらないようにしていた。

 女神に気を付けて…という世界樹の言葉が引っ掛かっていたから。


 それでも勇者は話し掛けて来る…キリエはうざがっている。

 そんなキリエを見て、勇者の取り巻き達の中から聖女を疑う声も出始めていた。



 だから、面倒になったキリエは黙らせる事にした。

「流星」

 星を降らせ、クレーターだらけの荒れ果てた大地を作りあげた。


「「「……」」」

「文句があるのなら、殺し合おう。無いのなら、一人にして」


「キリエ、すまなかった! 俺達が協力すれば、必ず世界は平和になる! みんな見ただろう! 彼女は真の聖女だ! 力を合わせるぞ!」


 は? なんだこいつ。

 話聞いていたのか?

 ……取り巻き達が顔を見合せ、勇者の言葉に反応し出した。

 真の聖女…勇者の愛…信じよう…などなどよく解らない事を言って…


「「「おぉぉおお!」」」


 見事な手の平返し。

 私だったら凄く怒っているだろうな…

 キリエもイライラしているし…

 …人々を導く存在としての勇者の役目は全うしているけれど、キリエから見たらこの上なく邪魔な存在だな。


 それは良いとして、なんか、黒い霞がモンモン噴き上がっている。

 始まったのかな?


 キリエは真っ先に先頭に立って魔力を練る。

 勇者達は盛り上がってまだ準備していない…おいおい…


「…星体観測」


 白と黒の星々が舞い上がり、周囲一体に星空を形成。

 星に乗り、上空へと上がる。

 初撃の準備に入った。


 …黒い霞が形を成していく。

 これは…円柱…

 高さは…五十メートくらい。


 黒い円柱から、ぬぅっと手が出てきた。

 そこでやっと勇者が気付き、戦いの準備に入る。


 なるほど、この円柱は扉か。

 手の主が出て来た。

 黒い霞を纏った巨体…ギガンテス?

 また出てきた…黒い、ゴブリン。黒いオーク。黒いオーガ。わらわら出てくる。


「うーん…やっぱり強いなぁ。白の流星」


 白い星を肥大させて邪族の中心に墜とす。

 グチャッとギガンテスが潰れた。

 強さはSランクくらいだけれど、キリエは簡単に倒している。


 それから次々と邪族が出てきては倒していくけれど、まだまだ出てくる。後方の勇者達はキリエの戦いに圧倒されている様子…


「…このままじゃ不味いなぁ。ちょっと休もう」


 あっ、休んじゃうの?

 勇者達大丈夫かな?

 ……キリエが攻撃を止めると、邪族がわらわら勇者達の方へ向かっていく。

「なんだこいつら!」「攻撃が効かない!」「ぐぁー!」


 うん。やられてんな。

 まず物理攻撃が効いていない。

 白い人達…たぶん騎士がゴブリンを斬り付けても直ぐに治る。腕を落としても直ぐに治る……魔法や魔法剣は効いているかな。


「えー…弱いなら来なきゃ良かったのに…」


 勇者は…なんか光る剣で奮闘している。自慢していた聖剣か。

 キリエの方をチラチラ見ている…休まず戦えって事かな…

 でも乱戦になると戦いにくい。


「はぁ…プリズム・アロー…」


 ため息と共に光の球を出現させて、大量の矢を作成していく。上空に作成した矢を停滞させ、手を振り下ろした。

「…レイン」

 雨のように次々と矢が射出。生きているかのように邪族だけを貫いていく。

 …凄いな…キリエが居なかったら、どうなっていたんだろう。


 キリエの援護に勇者達は安堵の表情で湧いている。……もう少しこうサポートしてくれる人が居るなら良いんだけれどな……キリエはもう興味無さそうに、星を墜として一人で戦い始めた。



 ……潰しても潰しても、黒い円柱から邪族が出てくる……一度円柱に星を放ったけれど、吸い込まれるように消えて…出てくる邪族の数が増えてしまった。厄介だな…

 円柱の力が無くなるまで、戦う事になりそう…

 もう星で潰した邪族がペチャンコになって、大地に歪な黒い絨毯が広がっているみたい。


「まだ出てくる…不味いなぁ…世界樹の葉が効かなくなってきた…」


 世界樹の葉は魔力を満タン近く回復出来る。でも使いすぎると効果が薄くなるから、長期戦は難しいな。


「……あれ?」


 ……なんだ? 邪族が止まった。

 ……円柱が縮んでいく。

 うわ……

 これは、無くなるというより…凝縮…


 五十メートルから、三十メートルくらいに縮んで…

 黒い顔が出てきた。

 次いで身体も出てくる。

 十メートルくらいの、黒い全身鎧。

 大きな盾と、大きな剣を持つ…騎士?


「うわ…強い奴だ…」


 うん。強い奴だ。

 近くに居るだけで、意識が持っていかれそう…

 黒い騎士は、周囲を見渡し…潰れた邪族を眺めた後…


 こっちを見た。

 ――っ…ゾクッて来た。

 キリエも感じたみたいで、一応勇者達に逃げろと伝える為に後方を見る。


 ……えっ? 居ない?

 全滅? いや…違う…

 遥か後方に集団が見える……まじかよ…逃げやがった。


「…くふっ、見捨てられちゃったなぁ」


 無いわー勇者。まぁ足手まといだから良いんだけれど。

 私が手伝う事が出来るなら…キリエと一緒に戦いたい。


『邪悪なる力を得る為に、お主を滅しよう。深魔貴族インガラ…参る』


「こっちの台詞だよ。私は死ぬ訳にはいかない! 月よ!」


 悔しいな…

 見ているだけというのは。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ