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可愛い女の子を発見。

 

 水の日。


「ねぇ、ベラ」

「…何?」


「ステラさんは?」

「パンケーキを食べに行ったわ」


「自由だね。じゃあ後で一緒にパンパン行く?」

「…行く」


 毎週水の日にやっているベラとの訓練を終えて、詰所に戻る。

 どうやら男三人はあの後も訓練していたらしい。体力あるなぁ…そっか、本当に訓練しに来たのか。だから私に用事が無かった訳ね。


 着替えてベラと詰所を出る。

 そういえばベラって緑髪の帝国美人という事以外…平均的というか、周りに比べて個性が少ないというか……


「ベラ、最近地味だよ」

「いきなり酷くない!?」


「という事で、買い物付き合って」

「地味の下りいらないでしょ…まぁ良いけど」


 よし行くか。手を繋いであげるよ。

 ベラの表情…フラムちゃんが好きなのに他の女と手を繋いでしまった自分を少し責めるけれどなんだかんだ嬉しいと思っている絶妙な表情が好き。


 騎士団を出て、大通りに出ると何やら目立つ人を発見。

 歳は同じくらいかな…緑色の髪、線の細い身体に長い耳。人間では無い…エルフか。帝国からかなり離れた所にエルフの国があるから、いつかは行ってみたい国。

 大きなリュックを背負って、大通りの真ん中でキョロキョロ辺りを見渡している。何か目的があって来たのかな?


「ベラ、可愛い女の子を発見した」

「ん? あらエルフじゃないの。アスティ、考え方とか価値観とか違うから関わっちゃ駄目よ」


「でも何か探しているよ」

「国際問題に発展すると面倒よ。って言ってもどうせ関わるんでしょ?」


「もちろん」


 ベラのため息を背に受けて、キョロキョロしているエルフ女子の元へ行く。

 緑色の髪に翡翠の瞳…綺麗。それにあの長い耳を触りたい……これは是非とも仲良くなりたいな。


「こんにちは。何かお探しですか?」

「……」


 私をチラリと見て、俯きながらタタタッと走っていった。

 うーむ…急に話し掛けられたら怖いか。都会だし。


「ベラ、逃げられた…」

「まぁ仕方無いわよ。ああいう子を騙す奴も多いし…あれが普通ね」


「むぅ…仲良くなりたかったのに」

「追い掛けてみる? 中央区に向かったから、変な所に行くと大変よ?」


 それもそうか。気になってしまった以上は確認しないと気が済まない。


「私のわがままに付き合わせてすまんね」

「良いわよ。……友達じゃない」


「友…達…ベラぁ!」

「ちょっ、急に抱き付かないでよ」


 お友達だと思ってくれていたんだね。

 嬉しいよ。お礼にアクセサリー作るね。

 頭皮の匂いも嗅がせてあげるよ。

 ……あっ、ベラの息が荒くなってきたから離れよう。


「さっ、行こうか」

「あなたが切り替え早いお蔭で、私はお預けをくらった気持ちよ」


「ベラが好きなのはフラムちゃんでしょ? めっ、だよ」

「……ええ…そうね」


 でも、もうフラムちゃんに振られているから…めっ、っていう訳では無いか。新しい恋に移行した方がベラの為ではあるから、お友達として今度詳しく聞こう。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 来た道を戻り、中央区を歩いているエルフ女子に付いていく。

 大荷物だから、エルフの国…エルメシアから来たのかな。出稼ぎという訳では無いと思うけれど。


 大きなリュックを背負いながらキョロキョロしているのに、スルスルと正面から来る人を避けている。魔力感知に優れているのか…エルフって魔法が凄いって聞くから、あの子も凄いのかな?


 おっ、通りすがりの男性が話し掛けた。

 やっぱり無視して歩いている。言葉は通じる筈だけれど…


 男性はめげずに話し掛けている…

 エルフ女子が立ち止まって、指をパチンッと鳴らした。

 そして、また歩き出すと男性が何も無い所で喋っていた……幻術か。


 男性の所に行って話を聞いてみると、ナンパ…いやアレなお店の斡旋だ。昼間にもスカウトしているのか。

 帝都に来たばかりの女子を狙って夜の仕事をさせるのは珍しい事じゃない。裏社会の事は詳しくないけれど、良い結末にはならないとは聞く。


 エルフ女子が立ち止まった。

 …騎士団本部の前で。

 そして……しばらく動かない。

 ……話し掛けた方が良いかな。


「あの、騎士団に御用ですか? 私、ここで働いているんですよ」


 名刺を渡したら、受け取ってくれた。

 ……少しは信用してくれたかな。



「姉に…会いに来たです」

「お姉さん? ……あっ、付いて来て下さい」


 騎士団にエルフは一人しか居ない。

 エルフ女子を連れて、特事班の詰所へ到着。



「ミリアさーん」

「レティちゃん帰ったんじゃなかったの? あら?」


「この方がお姉さんに会いたいそうです」


 ミリアさんがエルフ女子を見て、ちょっと待ってて…と資料を探して、記入を始めた。


「フーの妹さんね。王女捜索が打ち切りになった後、そのままアクアシティで別の捜索チームに入っていてね…本部に来るのは…再来月かしら」

「…アクアシティだったですか」


「だからアクアシティの騎士団詰所に、この面会希望書類を提出して。私のサインをしておくから直ぐに会えると思うわ。あとこれは転移ゲートの簡易通行証…一週間は有効だから」

「あ、ありがとうです」


 フーメリアというエルフの女性は、特事班のメンバー。まだ会った事は無い…

 因みに王女捜索チームは最近解体された。

 帝国はフーツー王国の義理立てとして、半年間捜索した。

 そして王女の遺体は見付からず、もう絶望的だろうという判断で解体。正直少し安心した。


 フーメリアさんは優秀で引く手数多らしく、かなり忙しいらしい。現在アクアシティという事だろうけれど…


「ミリアさん、私が案内しますよ」

「良いの?」


「はい、フーメリアさんに挨拶したいですし…ここまで来たら一人に出来ませんよ」

「ありがとう、お願いね。それとフーにこの書類を渡しておいて」

「了解です」


「あっ、私は家の許可が無いと転移ゲートを潜れないから行けないわ。ごめんなさい」

「うん、ありがとうねベラ」


 ベラとはここでお別れ。

 ベラが鈴を取り出し、チリンと鳴らす。

 …少し経つと、紙袋を持ったステラさんが現れた。

 それテイクアウトのパンケーキだね。紙袋に隙間無くステラステラステラって書いてある…自分用か。

 ばいばーい。



「じゃあ、行きましょうか。改めて私はレティと申します」

「……クーメリア」


 クーちゃんって呼びたいけれど、我慢しよう。

 アクアシティかぁ……あっ、案内するとか言ったくせに…行った事無いや……

今日は直ぐ帰るから良いとして、今度ミーレイちゃんに案内してもらお。


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