お花畑。
荒野に到着。
途中に居たオーガ達は無視した。
ここからはヘルちゃんを抱っこしながら走る。
ライトを前に展開して、シャイニングロードで繋げば光速移動装置の出来上がり。
この方がスピードが出るからね。
その気になれば空も走れるし、応用すればソルレーザーを前や横に撃てる。ライトとライトの間にソルレーザーを出せば良いからだけれど、危ないから一人の時に練習しよう。
ライトを矢の形にして速く飛ぶイメージを付ける。
シャイニングロードを繋いだ矢に引っ張って貰う形かな。
これ凄く速い…三十分で荒野を抜けられるよ! これなら日帰りでバラスに会っても余裕のよっちゃんだね!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
例の黒い木をスルーして草原に到着。
予定よりもかなり早い。
でもヘルちゃんが馬車酔いならぬアスティ酔いを起こしているから休憩中。
前後にぐわんぐわん揺れるからそりゃ酔うか。帰りも頑張ってね。
とりあえずバラスを呼ぼうかな。
「ばーらーすー!」
……おっ、遠くに白い影。おいでおいで。
やっほー。
ヘルちゃんをチラリと見て、誰だこいつっていう視線を向けてくる。ヘルちゃんは少し恐がっているけれど、私の友達って言ってあるから気丈に振る舞っている。
『アスティ、それは土産か?』
「本気で言っていたらぶっ飛ばしますよ」
お土産はちゃんとあるよ。
高級お肉五キロ。
ここで食べないでね、ヘルちゃんが恐がるから。
『……冗談だ。礼を言うぞ』
「怪しいですね…まぁ、良いです。私達はお花畑を探しに来たんですけれど、良い場所に案内して下さい」
『近くにある。付いて来い』
乗せてよー。けちー。
きっと認めた者しか乗せないとか言い出しそう。
どうせ背中に可愛い女の子の尻が二つ乗るから恥ずかしいんだよ。
シャイ獅子め。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『ここだ』
「うわっ、凄いですね。貴重な花ばかり。ありがとうございます。ヘルちゃん、探そう」
「え、ええ…金貨一枚の花とか群生しているわね…」
流石手付かずの自然。
見た事の無い花もある…
……バラスが何か持ってきた。本?
『植物図鑑だ。参考にして良いぞ』
「発行が五百年前……一級資料じゃないですか……」
城の禁書庫に入るレベルの代物……本当にありがとうございます。
まだ本があったら欲しいなぁ……私のおねだりにバラスは小高い丘の方へ歩いていった。ありがとうございます!
よしっ、じゃあ採取開始。
鉢とシャベルを取り出して、ヘルちゃんと一緒に良さそうなお花を探す。
色取り取りのお花が広がっているから、時間が掛かりそうだけれどワクワクが止まらない。
見た事の無い花も植物図鑑に載っていた。
栽培されたお花とは香りが全然違うなぁ…凄い。
ちょっと家に帰ったら全部暗記しないと気が済まないな……読み終わったら店長にもみせよう。
「このお花可愛い…」
「あっ、それは駄目」
カプリ。ヘルちゃんの指が噛まれた。敵が来ると攻撃する花もあるから気を付けてね。ヒールっと。
「これ素敵」
「それも駄目」
シュー。ヘルちゃんに毒霧が散布された。毒にも気を付けてね。キュアっと。
まぁその後はヘルちゃんばかり危険な花が当たるというか、引きが強いね。
結局ヘルちゃんはムスッとしながら、私の選んだ花を採取していく。
このお花畑を全部売ったら一生遊んで暮らせそう。流石にやらないけれど、お店に貢献したいから少しだけ。早く来られる手段があるからいつでも行けるし。
赤い花…クリムゾンをベースに紫のキュアパープルや白のバージンロード等々を組み合わせよう。花言葉を繋げると、『栄光への道を進む貴女へ、この美しさを捧げます』…で良いかな。少し嫌味な所が私らしい。ヘルちゃんにメモを渡しておこう。
花束にすると、白金貨五枚分かな。高過ぎだよ。
因みに最近お金の数え方変わりつつある。
金貨一枚銀貨二枚とか呼びにくいというのは、ずっと言われていた事。
教育水準が上がって来たからだけれど…使うお金は同じだから呼び方は両方使える。
単位はゴルド。
銭貨一枚、一ゴルド。
鉄貨一枚、百ゴルド。
銅貨一枚、千ゴルド。
銀貨一枚、一万ゴルド。
金貨一枚、十万ゴルド。
白金貨一枚、百万ゴルド。
光金貨一枚、一千万ゴルド。
黒金貨一枚、一億ゴルド。
だからこの花束は五百万ゴルド。
大体帝都の三十代男性の平均年収くらい……くそ高い事が解る。
ヘルちゃん、この場所は秘密だからね。
ここのお花でポプリも作りたいから多めに採取。
採り終わった頃には、お肉を食べ終わったバラスがやって来た。
咥えているのは本。
おっ、本がお肉臭くない。流石紳士。
内容は……地形図と、地図。
……これは、表に出せない代物だね。
地形図なんて鉱脈とか書かれているし…地図とかこれ、世界地図じゃん…なんでバラスが持っているのさ……
著者は…エライザ。エライザって事はキリエ? いや、筆跡が違うから多分初代皇帝かな?
でも、ヘルちゃんの名前にエライザが無いし…まぁ良いか。
「ヘルちゃん、そろそろ帰る?」
「ええ、そうね。バラスさん、受け入れてくれてありがとうございました」
『あぁ…』
「じゃあ最後に、この剣直して貰ったんですよ」
白銀獅子の剣を出して、バラスの前で抜いてみる。
しばらく見詰めた後、少し笑ったような気がした。
『…アスティ、似合っているぞ』
「へへっ、ありがとうございます。この剣の名前を付けて欲しいんですけれど…」
『…雪華。弟は雪という意味の名前だった…そして、アスティはこれから大きく咲く華…で、どうだ』
「…最高の名前をありがとうございます」
センス良いな。じゃあ雪華、よろしくね。
雪華に見合う人間にならなくちゃ。
『じゃあな』
「あっ、あのお願いがあります!」
『……なんだ』
「私達を送って行って下さい!」
『……』
「今日は日帰りなんです! ヘルちゃんもお願いしよしよ」
「えっ? あっ、お、お願いします!」
『……乗れ』
よっしゃー!
ヘルちゃん、乗ろうぜ!
いざ! モフモフの旅へ!




