ツバメが低く飛ぶ日
今朝は外から吹き付けた風が階段を駆け上がり、扉の隙間を通り抜ける音で目覚めました。
窓から見える空は微かな青みを帯びた朝焼け、上空も風が強いのか、雲達は忙しなく形を変えながら、窓枠の外へ流されて行きます。
どうやら今日は晴れそうだなと思いながら、脇に体温計を挟み、胡乱だ頭をゆっくりと覚醒させベッドから降りて、身体の具合を確かめる。
今日は身体は痛くはない、だけどいまいち感覚が動きは鈍いな、転けない様に気を付けないと、などと歯磨きしながら一日の過ごし方をぼんやり考えます。
何時も通り暖かい麦茶と、美味しい朝食を頂いてから回診まで牽引を行い、日課になっている散歩へ。
外の空気と朝の日差しを浴びに出ると、未だに羽虫達は飛び立てないのか、ツバメ達は低く鋭い角度でもって飛んでゆき、昨日は車の影もなかった駐車場は既に満杯になり、昨日の静けさは嘘のように騒がしくなってきました。
そうして騒がしい院内を歩いていると、別部屋の同い年の方が退院を告げてきたので、彼の部屋で暫く立ち話をしました。
彼は出た後は直ぐに仕事らしく、明日から心配だと言ってましたので、また帰ってこないように気を付けないとねと、笑って握手をしました。
彼と話をしていると、隣のベッドの不良中年は近所のお店で買ったであろう焼きそばを食べてましたから、先生に言うよと告げたら、勘弁してくれと返事をしたので、少しは我慢してくれるといいなぁなんて思いながら、散歩を終えて部屋に戻ると、栄養士さんが部屋にこられていました。
昨日の昼食で魚に寄生虫が入っていたのと、お昼に赤飯が出た事を謝りに来たらしいです。
まあ赤飯に関しては、小豆が駄目としっかり伝えてなかった私が悪いし、魚も生物だから寄生虫がいるのだって自然で、加熱調理もしているからあまり気にしてなかったのですが、女性患者の方だとかなり気にするから、教えてくださいねと言われました。
病院食も色々大変なんだなぁと感じながら、栄養士さんの御苦労を労い、改めてアレルギーや苦手なモノを考えてお伝えし直しました。
私のような年に一度位しか出ない赤飯などの、特殊な例はともかくとしても、皆さん案外きちんと伝えて無いらしく、後で解って怒る人も居て大変だと、仰っていましたね。
苦労の絶えない栄養士さんの話が終わると、今度は理学療法士さんがお迎えに来たのでリハビリへ。
ここに来た当初よりは大分筋肉の緊張は取れて、動きも良くなって来たらしく、どうやら今週の退院も視野に入って来たのでは無いかなと、今日のリハビリで言われ、少しは安心出来る要素が出来ましたね。
そんな安心をしていた私の部屋に、今度は救急搬送されて来た若い人がきました。
彼は初めての入院らしく、色々と解らない事だらけな様でしたので、余計なお世話かもしれないけれど、足りないモノを伝えて、必要な情報などを教える様にしました。
特に別の整形で貰った薬を飲むべきかを悩まれて居たので、勝手に飲まず看護師さんに相談するする様にとお伝えして、看護師さんにも彼に教えて欲しいと伝えておき、また車椅子に乗るとかなり痛いとの事でしたから、一度歩行器の方が良いのでは無いかと、アドバイスをしてみました。
本来はこうした連絡はご本人さんがした方が良いのですが、慣れたり解らないと難しいし、入院生活で結構困る部分だったりしますね。
先生も沢山の患者の状態を全て分かる訳はないので、自分から聞いたり発信しないと、辛いまま我慢する事も多いです。
他にも、自販機やテレビカード販売機、トイレ、冷蔵庫など、生活に必要な情報を聞かれましたので細かいところを説明したりもしました。
こうした今回の私がしたお節介は、全体的に良い方になった様で、後で看護師さんと先生にも感謝されたから、変な事にならなくて良かったと安心しました。
流石に夜中に同じ病室で悲鳴を上げられたり、呻かれたりするのはかなり精神的にもきますから、彼が無事に今晩眠れる事を祈るばかりですね。