雨模様と読書の日
さて本日は病院の休日、日曜日の病院の風景を描いてみようと思います。
今朝は少しばかり体が痛く、微かに指先先の痺れを感じながらの目覚めを迎え、念願だった窓からの景色は暗い雲を切り取って、私に空を見せました。
ベッドから注意しながら立ち上がり、階下に視線をやってみると、普段のこの時間なら朝早い御老人が、車で集まり賑わってる病院の駐車場。
そのアスファルトは、未明から降り出した大粒の雨に、ただ寂しく打たれるがままになっていました。
「今日の体調は余り良くはないだろう」お隣さんと、そんな事を話ながら朝食を待っていると、いつものおばあちゃんが元気のない私達を気遣う言葉と温かい麦茶を入れてくれてました。
痛みで血行が悪くなり、寝起きで冷めた身体には有難い一杯を頂き、朝食を何時もよりもゆっくりと時間をかけて頂きます。
途中、互いに気圧差に影響を受ける身の上、あちらもかなり微妙らしい、彼の口からも痛みからか弱音が漏れる。
今日は互いに余りベッドから出るのは避けようと、情け無くも真剣な話をしました。
まあ、雨雲が運んで来たのは悪い話だけではなく、昨日の不良中年の引っ越し話は立ち消えとなり、我々の病室は平穏は変わらないと、看護師さんから伝えられます。
どうやら彼は仕事の関係者に下の階に居ると伝えた後なので、下手に移動が出来ないと駄々を捏ねた様子でした。
ですが暇なのか朝食を食べた後に、コロッケを追加で四つも食べたなんて話を聞いたので、大丈夫なのかと他人事ながら気になる所です。
そうして、理学療法士さんや看護師さんが慌ただしく廊下動き回る事もない、普段と違う回診も無い午前中を過ごしていると、看護師さんがお風呂を告げて来ました。
本日の私達はお風呂の日、少し硬くなって居た身体がお湯で温まると軽くなったのは助かりました。
私が風呂から上がると、お隣さんの奥様がいらして、立ち代わりで、旦那さんがお風呂に入られる間はお相手を務める事に。
病院での旦那さんの様子や、チョットした奥様の愚痴やお悩みに相槌を打ち、薬の種類別のお話や効果についての質問などにお答えし、時間を繋ぎます。
お隣さんの奥様はどうやらキッパリハッキリ物を仰るタイプらしく、温和な旦那さんとの相性が良さそうに感じました。
そこから暫くして昼になり、祭りがあるから今日は赤飯が出ました、まさか病院で祝い事の赤飯が出るとは思わず、小豆が苦手というか、食べると体調が微妙に悪くなる私は小豆を注意して避けながら、なんとか完食しました。
下の人は相変わらず暴食したらしく、昼食後に祭り屋台たこ焼きを8個食べたと自慢気に語る姿に、彼は本当に入院患者なの?なんて気分になりました。
夕方は私の方の見舞いがやってきて、以前から気になっていた本を持ってきてくれました。
題名は「死にゆく妻との旅路」
この作品は実際に起きた保護者責任遺棄致死の話でして、作者が罪に問われた後に書いた手記になります。
最後まで妻の気持ちを尊重し、世の中から加害者にされてしまった夫と、死ぬまで夫と離れたく無いと病院に行くのを拒んだ妻。
そんな彼らが車内で寄り添いながら続けた、最後の逃避の旅路を語るお話。
以前映画にもなっていたので、前から原作を読んでみたいと思っていたので、この際に手に取りました。
夕食後、軽く読む積もりが二人の旅に引き込まれ、気が付けば一気に読んで、非常に良い読了感を覚えた頃には、朝からの雨は止んで静かな就寝時間を迎えました。
今晩で痛みで止めの注射も終わりとの事、これで先ずは一週間、明日の回診で来週の予定を聞けると思いからますから、不安と期待と一緒に眠りにつきました。